CADとBIMの違いは?導入のメリットや使い分けのポイントを解説
質の高い設計業務において、欠かせないソフトがCADです。CADは建築や製造など、様々な業界で今でも最前線で活躍しているツールですが、近年CADに代わり導入が進んでいるのがBIMです。
この記事では、CADとBIMではどのような違いがあるのかを紹介しながら、新たにBIMを導入することでどんなメリットが期待できるのか、CADとBIMの併用を効果的に進めるにはどうすべきかについて、解説します。
目次:
- CADとは
- BIMについて
- CADとBIMの違い
- BIM導入のメリット
- CADとBIMを使い分けるポイント
CADとは
CADはComputer Aided Designの略称で、日本語では「コンピューター支援設計」とも訳される図面作成ツールです。
CADは主に平面図作成に特化した2DCADと、3Dモデリングに強い3DCAD、そして両方の機能を備えた2D・3DCADの3種類があり、いずれも第一線の現場で活躍しています。
手動での図面作成よりも遥かに効率的で、かつ精度にも優れることから、建築や製造の現場では瞬く間に普及し、今や業務遂行には欠かせない存在として重宝されています。
CADが広く普及してから数十年が経過しましたが、現在でもアップデートや機能の追加などを加えながら、最新環境に適した製品が登場しています。
あらゆる業務に対応できる汎用CAD、特定領域に特化した専用CADなど、CADごとの特性も多様になっており、現場のニーズに合わせた導入がしやすいのが特徴です。
BIMについて
BIMはBuilding Information Modelingの略称で、BIM(ビム)の通称で親しまれている技術です。BIMはCADの後継技術として登場し、3Dモデリングに特化していることで知られていますが、特徴的なのが3Dモデルの中に2D情報も内包できる点にあります。
従来のCAD技術の場合、2Dと3Dの両方を作成することはできても、別個にデータを管理する必要がありました。
例えば平面図の方で修正が発生した場合、修正前のデータを元に作成した3Dモデルも、再度修正後のデータを参考にモデルを作り直す必要があったわけです。
一方でBIMモデルの場合、一度3Dモデルを作ってしまえば、以後はそのデータを編集するだけで自由に2D・3Dモデルを編集できます。
データをそれぞれで別個に管理する必要がなく、寸法の変更なども自動でモデルに反映され、修正の負担を大幅に削減できるのが強みです。
CADとBIMの違い
このように、CADとBIMではモデリング業務に対応できるという点では共通していても、その仕様については大きな違いがあることがわかります。
CADとBIMの大きな違いは、データの扱い方にあるでしょう。CADを使った業務の特徴は、プロジェクトが複雑化するほど、データを扱う際の負担も大きくなる点にあります。管理するデータが増え、データベースが煩雑化するリスクを抱えている問題です。
一方のBIMの場合、このようなデータベース煩雑化のリスクを回避することができます。CADのようにデータを別個に管理する必要がなく3Dモデルのなかにひとまとめにできるからです。
ただ、BIM運用に際してはCADとは異なるノウハウを身につける必要があるため、運用を開始するための負担はCADよりは大きくなるのが注意点です。
事実、BIMの普及率はCADと比べても低く、一級建築士でさえもBIMを使っていないと回答するケースが7割を超えるというデータもあります*1。
BIM運用に際しては、このような普及率の低さを踏まえることも必要になるでしょう。
BIM導入のメリット
CADソフト単体でもこれまで通り業務を遂行できますが、それでもBIM導入企業は少しずつ増えています。BIMの活用が軌道に乗ることで、以下のようなメリットが期待できるからです。
高度な生産性向上が期待できる
BIMを使いこなせるようになれば、従来のCADソフトでは得られない生産性の向上が期待できます。
設計データをBIMモデルに一元化し、データ管理の効率化を進めることで、情報共有の円滑化に貢献します。また設計図を何度も作成する手間から解放され、設計から施工、維持管理に至るまで、一つのデータを使って完結できる点も強みです。
品質向上に貢献する
BIMを使った業務の遂行は、品質向上においても重要な役割を果たします。モデリングにおけるケアレスミスや設計の修正・手戻りを減らし、最終的なクオリティの改善が実現するでしょう。
修正作業などに追われることがなくなった結果、円滑な設計情報の共有や内容の理解促進に時間を割けるようになり、他の部門の業務にも良い影響を与えます。
規模の大きなプロジェクトに関われる
BIM導入が積極的に進められているのは、インフラ開発や大型ビル開発といった大きなプロジェクトを扱う企業です。BIMを導入することで、こういった大規模な開発に携われる機会も生まれてくるでしょう。
BIMは普及率が低い分、BIMありきで業務を遂行できる企業はまだ数が限られています。また、BIMは互換性が担保されたユーザー同士での連携が実現することで、高い効果を発揮します。
競合との差別化において、BIMの導入がアドバンテージ獲得の良いきっかけになることもあるかもしれません。
CADとBIMを使い分けるポイント
BIMはCADの次世代製品として扱われることもありますが、現在は両ソフトを併用するケースが一般的です。CADとBIMをうまく使い分けるには、それぞれの特性を生かすことが重要です。
CADはBIMに比べてデータ運用能力に劣る一方、最大の魅力は普及率の高さにあります。各企業にCADソフトは導入されている上、CADを扱える人材もBIMに比べると豊富です。図面作成や3Dモデリングの業務負担が大きくなっている場合、ひとまずCADを用いて業務を分散し、効率的に納品を実現するのが良いでしょう。
一方のBIMは、CADほどの普及は進んでいない一方、データ管理能力や運用性に優れているのが特徴です。CADで作成したデータを取り込み、BIM化するような運用アプローチもあるので、BIM運用が可能な場合はデータ連携機能を最大限活用することをおすすめします。
まとめ
この記事では、CADとBIMの違いや使い分けのポイントについて、解説しました。CADは普及率が高く、BIMは高度なデータ活用能力があるという強みの違いがあります。
今後はBIMが業界のスタンダードになるという予想もありますが、現状ではコストなどの課題もあるため、併用の可能性を探るのが良いでしょう。
BIMのメリットにも注目し、適宜活用機会を探ってみることが大切です。
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出典:
*1 日経X Tech「「BIMを使っていない」が7割超、笛吹けど踊らぬ建築士」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00216/080100008/