AReXの導入はBIMのワークフローにどんな変化を与えるのか?
BIM運用の普及は、建設業界の発展に大いに貢献するとして、近年注目度が高まっています。ただ、BIMの導入にはいくつかの考慮すべき課題もあり、必ずしもスムーズな導入が進んでいるとは言えません。
そんなBIMの導入課題や運用におけるトラブルを解消するために誕生したのが、ビム・アーキテクツが提供しているAReXです。今回は、そんなAReXがどのようにBIMの運用を変化させていくのかについて、ご紹介していきます。
①AReXとは
②基本的なBIM運用のパターン
③現在のBIMが抱える課題
④AReXの導入でBIMのワークフローはどう変化する?
AReXとは
そもそもAReXとは、建築・建築コンサルタントを担うビム・アーキテクツが開発した、BIMソフトであるRevit向けのプラグインです。BIMの設計段階におけるサポート機能を搭載しており、操作の自動化や簡素化によって、オペレーターのBIM設計作業を支援してくれます。
BIMソフトは高機能である一方、十分に扱いに長けている人間でなければ、その運用方法に悩んでしまうこともあります。AReXはそんなBIM導入初期における問題を解消し、業務効率化に貢献します。
基本的なBIM運用のパターン
国土交通省は、現在普及しているBIM運用のパターンで代表的なものとして、以下の4つの手法を挙げています*1。ここで一度、BIM運用の一般的なアプローチについて確認しておきましょう。
設計・施工段階で連携する
一つ目のパターンが、設計・施工段階でのBIM連携です。従来の建設業務においてポピュラーだったのが、設計段階と施工段階を別個のプロセスとして業務にあたるというものです。設計段階で作られた図面をもとに施工を進めていくというワークフローはあるものの、図面の互換性の問題などから、設計と施工で別個に図面が用意されたり、施工段階で新たに修正が入るということもありました。
BIMを導入することによって、このような二重の設計作業の発生を抑えることが可能です。設計段階で用いられたBIMデータを、そのまま施工段階にも活用することで、設計段階から一気通貫でデータ活用を行えます。
設計・施工・維持管理で連携する
二つ目のパターンが、設計と施工での活用はもちろん、維持管理の段階においても設計時のBIMデータを扱うというものです。建物のライフサイクル管理において、正確な図面を使った点検保守は欠かせない業務です。これまでの場合、維持管理の段階においても新たに設計図面が作成されるケースが珍しくなく、設計業務の二度手間が発生していたり、老朽化した建築物の部材を正確に特定するのが難しくなり、点検管理のコスト増大につながることもありました。
BIMデータを設計段階から維持管理段階まで運用できることで、こういった無駄の発生を抑え、スムーズで精度の高い維持管理を実現します。
施工の技術検討をフロントローディングで実施する
三つ目のパターンが、施工の技術検討をフロントローディングで実施するというものです。フロントローディングとは、従来のようにリソース配分を各プロセスへ均等に分けるのではなく、初期の設計段階に多くのリソースを投入することで、下流工程の負荷を軽減するというものです。
BIMデータを活用すれば、そんなフロントローディングの実践も容易に達成できます。本来は施工段階で発生していた技術検討を、設計段階で実施します。
施工の技術検討と施工図の作成をフロントローディングで実施する
四つ目の取り組みが、施工の技術検討と施工図の作成をフロントローディングで実施するというものです。上述のような技術検討に加え、施工図の作成までも設計段階で完了しておくことで、施工段階での負荷を大幅に検討できるようになります。
現在のBIMが抱える課題
BIMデータを活用することで、上記のように様々なアプローチでデータ活用を進められるようになります。しかし一方で、BIMデータの運用には新しい課題が発生することも事実です。
BIMデータのワンストップ活用が行き届いていない
一つ目の課題が、BIMデータを関係者間でうまく連携できていない問題です。BIMデータとは一言で言っても、導入ソフトによってデータの形式が異なるなどの問題もあり、結局情報共有の際にデータを作り直している、あるいは変換作業が発生しているというケースがあります。
本来はデータをそのまま受け渡しできるのがBIMの強みですが、そんなBIMデータの流動性が失われているという問題です。
関係者全員が同一環境を整備するのが難しい
また、上記のような問題を解決するためには同一の環境を整備するのが良いかもしれませんが、それも難しいのが現状です。というのも、BIM導入には多くの費用や時間が発生するため、特定のプロジェクトのためにBIM環境を変更したり、新たにBIMソフトをインストールするといったことは割に合わないためです。
また、中小企業のように、BIM環境整備のための予算が限られている組織の場合、大企業のようなハイエンド環境を整備できないケースもあります。BIM導入のためには、環境だけでなくそれらを扱える人材確保の必要性もあり、そのためのリソースも求められます。
AReXの導入でBIMのワークフローはどう変化する?
こういった課題を解消するため、登場したのがAReXです。AReXの導入によって、いくつもの導入メリットが期待できます。
関係者間のコミュニケーション速度を高める
例えば、関係者の間で発生するBIMデータの互換性の問題を解消し、コミュニケーション速度を高めることができます。AReXはRevit運用で発生するテンプレート管理を迅速に行えるようサポートし、社内仕様の環境整備を迅速に行えるよう促します。
Revitを迅速に扱えるようになるため、プロジェクトに合わせられる柔軟な運用を実現します。
モデル作成のスピードを高め、フロントローディング推進に活躍する
AReXの導入は、モデル作成のスピードにも影響を与えます。様々なバリエーションで用意されている自動モデル化などのコマンドを利用することで、誰でも簡単に、尚且つ高速に作業を進められるようになります。
フロントローディングの実践は負荷が大きいとして敬遠されることもありましたが、AReXの導入によって、設計負担を大幅に軽減し、業務効率化とフロントローディングの実現に貢献します。
おわりに
AReXはRevit運用を大いに手助けしてくれるサービスで、BIM運用に伴う課題解消に役立ちます。BIM活用の効果を最大限高めてくれるため、これまでBIMを敬遠していた人にこそ、活用して欲しいサービスです。
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*1 国土交通省「BIM の標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン」p.16
https://www.mlit.go.jp/common/001329306.pdf