無料で使える機械学習の開発環境「Google Colab」とは
今からプログラマーを目指そうという方におすすめの開発言語は?と聞かれた場合、ちょっと前なら「JAVA」と答えたでしょう。
iPhoneのアプリ開発のように目的がはっきりしているのであれば、iPhoneアプリ開発に適した言語である「SWIFT」も選択肢になりそうです。
他にも、初心者でも習得しやすく比較的記述が簡単で、機械学習などの最先端分野でも利用ができる「Python」が人気のようです。
今回はそんな「Python」を使った機械学習の開発環境が無料で利用できる「Google Colab」についてまとめてみましょう。
この記事でわかること
・Google Colabについて
・Google Colabのデメリットについて
・Pythonの学習を始めるなら「Google Colab」が最適と言える理由
Google Colabとはなにか
「Google Colab」は、Googleが無料で提供する機械学習プログラミングのための統合開発環境です。正式名称は「Google Colaboratory」と言います。
オンライン上で提供されておりブラウザから操作可能なため、PCへのインストールも不要です。Googleアカウントさえあれば誰でもすぐに利用ができます。
機械学習やPythonに興味がある方なら、おそらくGoogleアカウントはすでに持っているでしょうから、文字通り「すぐに」利用することができます。
面倒な環境の構築は不要であり、しかも無料。なんと、GPUまでついてくるとなれば、もはやこれは最強のツールと言えるのではないでしょうか?
■アクセスは以下のリンクから
Google Colab
Googleアカウントでログインをし、上記のリンクにアクセスした時に表示されるダイアログにある「ノートブックを新規作成」をクリックすることで、すぐにコードを記述する画面が表示されます。
これは「Jupyter Notebook」という、機械学習のエンジニアに人気がある開発環境を、最小限の労力で利用できるようにしたものです。*注1
◯Jupyter Notebookとは
「Jupyter Notebook」は、Jupyterプロジェクトというオープンソース型の対話型コンピューティング開発を行うプロジェクトから生まれました。プラウザ上で利用できることから、チームでの共有開発が容易であり、その利便性の高さにより多くの開発者に人気のある開発環境となっています。
特徴としては、記述するコードがセルごとに分割されていて、計算結果がその都度表示されているため視認性が高く、他人の書いたコードでも理解しやすくなっています。
実は、多くの人数が参加する開発では、他人の書いた部分を判読するのが困難で「もう出力さえちゃんとしてれば中身はいいや」なんてことも多々あります。
それでもなんとかなる作業現場も多いのでしょうが、思わぬエラーが出て原因究明が必要となった時などは、大変なことになりかねません。その意味では、コードの判読性が高くコードごとの出力結果がすぐに視認できるという仕様は、開発者にとって非常に便利な部分でしょう。
◯Google Colabの開発言語
「Google Colab」で利用できる開発言語はPythonです。Pythonは、WEBアプリ開発でも使われている言語であり、最近では機械学習に利用されることから人気が高まっています。
少ないコードで効率的な開発ができるため、初学者にも習得しやすいという特徴もプラスポイントです。また、充実したライブラリがあることも、開発者には利点となっています。
◯Pythonで開発されたサービスやアプリ
YoutubeやDropboxは、Pythonで開発されています。世界中で何百万人もの利用者がアクセスするサービスのバックエンドを支えている言語と言えます。
アプリでいうと、オープンソースの3DCGソフトウエア「Blender」が代表例としてあげられます。
Googleも積極的にPythonの利用をしており、Googleが開発に用いる三大言語の一つと位置付けられています。*注2
◯開発環境とは
「開発環境」とは、一般的には開発に必要な言語とエディターに加え、デバッガーやコンパイラなどの言語処理系の仕組み、さらにプログラミングの実行環境を統合したものを言います。
時にはハードウエアまで含めることもありますが、通常はプログラマーが開発を進めるために必要なソフトウエア一式と考えれば良いでしょう。
このような開発環境には、よく利用されるプログラムをパッケージにしたライブラリが付属されているのが普通です。ライブラリがあることによって、開発者はゼロからコーディングする必要がなく、スピーディな開発が可能となります。
また、エディタやコンパイラ、デバッガなどのツールを一まとめにし、同じ操作画面から利用できるようにした開発環境のことを特に、「IDE(Integrated Development Environment)=統合開発環境」と言う場合もあります。*注3
Google Colabのメリット
では「Google Colab」を使うメリットを挙げてみましょう。
1)手軽で簡単にすぐ始められる
なんといっても手軽にすぐ利用できる点でしょう。
必要なのはGoogleアカウントとインターネットへの接続環境だけです。この記事を読んでいる方であれば、おそらく全員がすでに「有資格者」でしょう。
今、この瞬間から機械学習のプログラミングをスタートすることが可能です。
2)なんといっても無料で使える
「ただほど怖いものはない」とよく言いますが、プログラミングの世界では無料であっても使えるものが沢山あります。
世界中のプログラマーやエンジニアがオープンソースで優れた開発を進めたり、コードを公開することによって世界最高水準のシステムやソフトウエアが次々に生み出されています。
Googleが無料で提供している「Google Colab」もその一つであり、機械学習の普及とエンジニアの育成を目的としています。
3)高性能GPUが無料で使える
機械学習のような、単純な処理を高速で繰り返し実施するようなケースでは、CPUよりもGPUの方が能力を発揮します。
仮想通貨のマイニングも同じであり、高性能GPUをどれだけ投入できるかが勝負の分かれ目となっています。しかし、GPUを自前で準備し、ハードウエアを組み上げてから開発をスタートさせるのは、手間とお金がかかり過ぎてしまいます。
しかし「Google Colab」を使えば、なんと無料で高性能GPUまで割り当ててくれるというのですから、まさに至れり尽くせりといったところでしょう。
ローカルPCはインターネットへ接続できるだけの性能を持っていれば十分です。軽量なノートPCを使い、移動しながらでも高性能GPUを使った本格的なシステムの開発が可能です。
◯GPUとは?
GPUは、グラフィック関係の処理を専門としているチップのことを指しています。CPUがあらゆる種類の処理をするように設計されているのに比べて、GPUは限定的な処理ではありますが、高速に実行できるようになっています。
CPUがマルチに働くオールラウンダーなら、GPUは特定の作業に特化したスペシャリストといった感じでしょうか。
CPUに比べて多くのコアを持っているため、並列処理を必要とする演算などを得意としています。機械学習がまさにその例となっており、GPUをつかうことでCPU演算よりも高速に処理をすることが可能となっています。
Googleが提供する高性能GPUを無料で利用できるというのが、「Google Colab」の大きな特徴の一つとなっています。*注4
4)共同開発が簡単
「Google Colab」は、オンラインサービスのため複数人での共同開発が容易です。
また、Google Driveを使ったデータの共有が可能であることから、難しいことを新たに覚えたり設定したりする必要が皆無となります。
企業内のチームだけでなく、フリーのプログラマーが集結してプロジェクトを進めるような場面でも、共同作業環境の構築に時間と費用をかける必要がありません。
Google Colabのデメリット
さて、ここまで手放しに賞賛してきた「Google Colab」ですが、デメリットとしては何かあるのでしょうか?
「インターネット環境じゃないと使えない?」これはあらゆるオンラインサービスに共通していることであり、現代社会でなんらかの開発をする際にネット環境なしというのはまず考えられませんので、デメリットうちには入らないでしょう。
デメリットというよりは、注意点が一つあります。
それは、定期的に「ランタイムリセット」処理が行われてしまう点です。「ランタイムリセット」が実行されると開発環境は初期状態にリセットされてしまうため、それまで作成したデータが全て飛んでしまいます。
しかし無料で利用できる以上、「ランタイムリセット」は仕方のない部分でもあります。
ランタイムリセットは90分ルールと12時間ルールの2つが存在します。
・90分ルール セッション切断から90分経過でランタイムリセット実行
・12時間ルール ノートブック起動から12時間経過でランタイムリセット実行
とは言え、ランタイムリセットを回避する方法がちゃんとありますので、対策をとっていれば問題はありません。
90分ルールは、PCの自動スリープ機能をオフにし、GoogleChromeのアドオン機能である「AutoRefresh」をインストールして、自動リロードを行えば大丈夫です。
この方法であればセッションが切れることがないため、90分ルールに抵触しなくなります。
12時間ルールについては、手動で回避する必要があります。
まず学習結果やコードなど、必要な情報を定期的にGoogle Driveに保存しておきます。その後、12時間ルールが適用され、開発環境が初期状態に戻ったら、「Google Drive」に保存したデータを読み込んで、再実行することで解決可能となります。
やや面倒ではありますが、無料ですのでこれぐらいは我慢してもいいのではないでしょうか。*注5
今、Pythonの学習を始めるなら「Google Colab」が最適
これから開発言語を学ぼうという方にとって、Pythonはおすすめの言語の一つです。
広い範囲で応用が効き、さらにWEBシステムからソフトウエア開発、機械学習までをカバーしています。
前述しましたが、Youtubeなどの有名なサービスもPythonで構築されています。
次に、エンジニアの希少性が高く市場価値があることも理由の1つになります。これは、Pythonの技術を持っていることによって、自分自身のスキルが高く売れるということです。
実際Pythonエンジニア、特に機械学習分野のスキルを持っている方であれば、引く手あまたと入れるでしょう。
現時点であれば、就職先として比較的雇用条件の良い職場を選択することができそうです。
さらに、「GoogleColaboratory」のような優れた開発環境と豊富なライブラリが充実していることから、学習しやすく短期間で有用な開発をすることができる点も重要です。
希少性が高い開発言語であっても、情報が少ないと学習したり開発する際に苦労することになります。この点、Pythonはこれから始める人にとっては非常に良い環境が揃っています。
今や世界のIT分野をリードする存在として活躍しているGoogle。
Youtubeや検索サービス、Google Mapなど一般に広く利用されているものから、GmailやGoogle Driveなどビジネスユースのサービスまで、Googleの製品に全く触れることなく1日を過ごすことは出来ないと言っても過言ではありません。
そんなGoogleが提供する「GoogleColabo」について今回ご紹介しました。開発言語の習得や環境整備に興味がある方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
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▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!
注1
codEva 「Google Colabの知っておくべき使い方 ? Google Colaboratoryのメリット・デメリットや基本操作のまとめ」
https://www.codexa.net/how-to-use-google-colaboratory/
AI Academy 「Google Colab入門」
https://aiacademy.jp/texts/show/?id=857
Google 「Colaboratory へようこそ」
https://colab.research.google.com/notebooks/welcome.ipynb?hl=ja
注2
PASONA THCH 「【入門】Javaとは?言語の特徴やプログラミングの流れをわかりやすく解説!」
https://www.pasonatech.co.jp/workstyle/column/detail.html?p=2610
TECH CAMPブログ 「Pythonで作られたアプリ・Webサービス7選!YoutubeもPythonで作られている」
https://tech-camp.in/note/technology/45702/
注3
IT用語辞典 「開発環境」
https://e-words.jp/w/%E9%96%8B%E7%99%BA%E7%92%B0%E5%A2%83.html
注4
大塚商会 「GPU」
https://www.otsuka-shokai.co.jp/words/gpu.html
注5
SeLife365 「GoogleColaboratoryとは?4つのメリット・デメリット」
https://kenko-keep.com/google-colab/