1. TOP
  2. ブログ
  3. 個人情報を抜かれないために必要な「トラッキング防止機能」とは

個人情報を抜かれないために必要な「トラッキング防止機能」とは

 モバイル端末とインターネット環境の普及によって、私たちの生活やビジネスはかつてないほど便利で快適なものへと進化してきました。
 しかしそれと同時に、ネット上での個人の行動が意図しないうちに第三者に渡り、利用されているという問題も生じています。今回は自分の個人情報を守りながら、インターネットと適切に付き合う方法を考えてみましょう。

この記事でわかること
 ・個人情報を無断で抜き取るトラッキングについて
 ・AppleのiPhoneに搭載された「トラッキング防止機能」とは何か
 ・トラッキングを防止した時のデメリットについて

個人情報を無断で抜き取るトラッキングとは

インターネットサービスを便利にしてきたCookie

 私たちがPCやスマホを使ってインターネットサービスを利用するとき、その多くはブラウザを使って閲覧しています。スマホならApple標準のSafariやGoogleのChromeが代表例であり、PCだとIEやEdgeなどがよく利用されています。

 ブラウザの機能として、「インターネット上での個人の行動などの情報を、利用している端末に保存する」というものがあります。この保存されたデータを「Cookie」といい、アクセスしたサイトにCookieを渡すことで、さまざまなインターネット上の便利なサービスが使えるようになっています。

 例えばあなたがあるECサイトを訪問し、そこで購入しようと思った家電商品、加湿器をショッピングカートに入れたとしましょう。まだ他の商品も検討したいので購入・決済はせずに、とりあえずそのままにしておきます。
 この時、商品をカートに残したというサイト内での行動履歴は、Cookieという形であなたの端末上に記録されます。

 後日、再度そのECサイトを訪問した時に、サイト側はあなたの端末上に残されたCookieを参照してその時の状況を再現します。
 カート上に先日入れておいた加湿器がそのまま残っていて、後は決済するだけの状態になっているのは、このCookieという機能をうまく活用しているからです。

Cookieを利用した広告表示が普及

 このような便利な機能を実現してきたCookieですが、一方ではユーザーが意図しないうちにCookie上の情報が第三者に売り渡され、広告表示などに利用されているという問題が生じています。
 例えば、ネットのECサイトで加湿器をあれこれ検索していたら、全然関係ないページを閲覧している時でも、あちこちの加湿器が広告として表示されるようになった。こんな経験をした方も多いのではないでしょうか。

 これは、あなたが訪問したECサイトが持つ個人の行動履歴という情報が第三者にわたり、広告表示のために利用されているからです。確かに、加湿器を探している時にいろいろなサイトでお勧めの商品を選んで表示してくれるのは、ある意味便利なのかもしれません。
 しかし、自分の行動履歴が全く知らない第三者に瞬時に伝わり、それが利用されているというのはあまり良い気分はしないものです。

「1st Party Cookie」と「3rd Party Cookie」の違い

 あなたが加湿器を購入する目的で訪問したECショップから発行されるCookieを「1st Party Cookie」と呼びます。これは、ショッピングカートを機能させるために必要なCookieであり、あなたもその機能を利用する目的がある以上、個人情報の提供に同意していることになります。
 リアルショップで会員カードを作成し、商品購入の履歴がショップ側に記録として残ることと大差ありません。

 問題は訪問したECショップや他のサイトなどへ広告を出稿している第三者が、あなたの端末に書き込むCookieです。これを「3rd Party Cookie」と呼びます。
 あなたの知らないうちに、あなたの知らない誰かが、個人の行動履歴をあなたの端末に書き込み、それをさらに別の第三者に受け渡したり、広告表示に利用しているのです。

 今回、Cookieの利用例として「ECショップを訪問した際に」という前提で記述してきましたが、このようなCookieの書き込みは何もECショップに限定したことではありません。
 気軽に訪れた普通のインターネット上のページであっても、あなたがCoookieの利用を許可しているのであれば、端末上にその記録を残すことができます。それを広告業者が閲覧して、あなたの訪問した別のページ上に広告を表示することができます。

 単純に1st Party Cookieが良くて、3rd Party Cookieが悪いというものではありません。
 問題は3rd Party Cookieの多くが、利用者がそれと意図しないうちに書き込まれ、閲覧され、利用されていることです。
 自分が必要としている広告などの表示であれば、それほど悪くはありません。無関係な広告が山ほど表示されるのに比べれば良いと言えるでしょう。
 しかし、どこの誰かも知らない相手に個人情報がわたり、利用されているという部分が問題だと言えます。

 この問題を解決するために利用者側としては、訪問したサイトごとにCookieの利用を許可するかどうか判断し、適切に個人情報の管理をする必要があります。
 しかし、それをいちいち個別のページを訪問する度に切り替えるのは非常に面倒ですし、実際不可能でしょう。ではどうしたら良いのでしょうか。

 ※ブラウザの設定でCookieの利用を制限する具体的な方法についてはこちらを参考にしされてください。

「AppleのSafariでトラッキング防止機能を設定し行動追跡をブロックしよう」

iPhoneに搭載された「トラッキング防止機能」

ユーザーの行動追跡はCookieだけとは限らない

 ここまでは、ブラウザを使った場合に問題となるCookieについて注目してきました。しかし、ユーザーの行動を追跡する手段は何もCookieだけに限ったことではありません。 
 サービスを利用するための専用アプリにも、ユーザーの行動を記録・追跡・収集する機能がつけられていることがあります。そうなるとブラウザの設定だけでは、うまく追跡を防止することができないことになります。
 そこでAppleは、iPhone14から「トラッキング防止機能」を実装することによって、より強力にユーザーを守ることができるようになりました。

iPhone14からサイトを横断したトラッキングを防止する機能が搭載

 ユーザーの行動がインターネット上で監視され、全く知らない第三者が常時付きまとっているというイメージを擬人化したCMがこちらです。

****************************************

https://www.youtube.com/embed/EeO6qzmYBhY

“アプリのトラッキングの透明性。それは、あなたのデータを、あなた自身がコントロールできる新しい機能です。アプリが他社のアプリやウェブサイトを横断して、あなたの行動を追跡する場合に、確認のメッセージを表示。許可するかどうかは、あなたが決められます。”
****************************************

 一般に「トラッキング防止機能」となっていますが、その意図することとしては、トラッキングを許可するかどうかをユーザーが選択でき、その権利を保証するための機能という位置付けです。

 Appleのプライバシーに関するページを確認してみると、前述したCookie以外にも非常に多くの個人情報に関する脅威が存在することがわかります。
 高度で複雑な技術が投入され、ありとあらゆる手段であなたの個人情報を抜き取り、利用しようとする第三者がインターネット上ではうごめいています。*注1

 このような手段や防護策を全て理解し、個別に最適な設定をすることは、個人レベルではもはや不可能と言ってもいいかもしれません。だからこそ、セキュリティ面で信頼できる端末を利用し、一括でその保護機能を有効にするというのがiPhoneに搭載された「トラッキング防止機能」です。

 iPhoneのアプリは、Appleが運営するApp Storeからしかダウンロードやインストールを行うことができません。
 そのためアプリのデベロッパーに対して、トラッキング防止機能に対応することを厳格に求めることができます。この要請に従わないアプリはApp Storeから排除し、ユーザーへの脅威を取り除くことができるのです。

 Androidにも、このようなトラッキングを防止する機能自体は存在します。しかし、Android端末の場合、Googleが管理していない第三者のサイトからでも自由にアプリのインストールができる仕様になっています。
 そのため、トラッキング防止機能をくぐり抜けるアプリの存在を否定できません。

AppleとGoogleのビジネスモデルの違いも関係

 インターネット・IT分野における巨大企業の代名詞として「GAFA」が取り上げられることが多くなっています。「GAFA」とは、Google・Apple・Facebook・Amazonの4社のことを指しますが、そのビジネスモデルについては大きな違いがあります。

 AppleはMac・iPhoen・iPadといったプロダクトの販売をベースとし、それに付随するサービスやアプリ販売などの手数料収入が収益となっています。
 Amazonは、ECショップでの商品販売手数料が本来の事業です。現在では、巨大なサーバーを使ったクラウドサービスなども重要なビジネスとして成長していますが、基本的には「商品やサービスの販売」で収益をあげています。

 Googleの検索サービスやFacebookが運営するSNSについては、一般ユーザーは無料で利用することができます。その代わり、サービスを利用するユーザーに関するさまざまな情報を活用し、効果的な広告を表示することで広告収入を得ています。
 さらに各社が持つ膨大な情報を、必要とする業者へ販売するなど、メインとなるのは「個人情報の利用と売買」となっています。

 実はAmazonも、自社のECサイト上でのユーザーの行動履歴を活用していますので、「個人情報の収集と分析」についてはGoogleやFacebookに負けないぐらい熱心に取り組んでいます。
 Amazonが同時期に存在した数多くのライバルを駆逐して、世界最大のECブランドとして君臨している理由も、このような行動履歴の分析と活用を重視し取り組んできたことが大きな要因となっています。

 そのためApple以外の3社は、ユーザーの意図しない形での個人情報の利用に対する非難の声に対しても、やや消極的に見える対応やアナウンスに終始していることが多いようです。
 個人の行動履歴の活用は大きな収益の柱であり、ビジネスモデルの根幹にあたる部分ですから、簡単にその利用を断念する訳にもいきません。

 それに対してApppleの場合は、「商品とサービス」をエンドユーザーに販売することが収益の柱となっています。Apple Watchで収集した個人の健康やアクティビティに関する情報は、ユーザーに対するサービスの充実や利便性の向上のために活用されますが、第三者に対して広告収益を目的として販売されることはありません。

 このような背景からAppleだけが他の3社に比べて、より積極的にプライバシーの保護を基本方針としてアナウンスすることが可能となります。
 実際、iPhone14に搭載されたトラッキング防止機能によって、Facebookの広告収入が大打撃を受ける可能性があるという分析もあります。*注2

トラッキングを防止した時のデメリット

 iPhoneでトラッキングを防止するのは、非常に簡単な設定で完了します。
 iOS 14.5以降を搭載するiPhoneでアプリを開くと「アプリがサイトを横断してあなたをトラッキングすることを許可しますか」と聞いてきますので、「トラッキングを許可しない」にチェックを入れるだけです。

 一部のサービスでは、この設定をするとうまく機能が動作しなくなるなどの不具合が発生します。Yahoo !では「サイト超えトラッキングを防ぐ」「全てのCookieをブロック」「トラッキングの停止を要求」などの項目について、OFFにして利用することを求めています。*注3
 しかし残念ながら、Yahoo!ではトラッキングを許可した時に起こりうるデメリットについては、なんの説明も記述されていません。

 また、Yahoo! 以外にも「トラッキング防止機能」を使うことによって、何かのサービスを利用した際に付与されるポイントや、一部の旅行予約サイトなどで機能が使えなくなるなどの問題が発生することがあります。
 しかしAppleがトラッキング防止を強化したことによって、このようなサービスについても速やかに対応し、ユーザーに無断でトラッキングする手法を使わない形で利用できるよう修正されていくはずです。現時点で一部便利な機能が使えないのは、過渡的な状況と言えるでしょう。
 他にも、自分にとってあまり興味がない広告が表示されるようになるなど、デメリットとしてはそれくらいではないでしょうか。
 
 ある記事によると、iOS14.5をインストールした米国のユーザーは、96%が「トラッキングを拒否」に設定したとのことです。
 基本は「拒否」に設定し、必要に応じて「許可」というスタンスで良いのではないでしょうか。*注4

【まとめ】
 セキュアな機能を持つチップを自社で開発し、第三者が提供するアプリを一元管理することができるAppleは、セキュリティ面に関してはAndoroidよりも優位性があります。
 その分、Androidは自由度が高く選択の幅が広いというメリットがあり、世界全体ではiPhoneよりもはるかに普及しています。
 どちらを選択し、どのように判断して利用するかはユーザーのスキル、予算や目的によって異なるでしょう。それぞれの特性を見極めて、正しく利用するようにしたいものです。

建設・土木業界向け 5分でわかるCAD・BIM・CIMの ホワイトペーパー配布中!

CAD・BIM・CIMの
❶データ活用方法
❷主要ソフトウェア
❸カスタマイズ
❹プログラミング
についてまとめたホワイトペーパーを配布中


▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

■参考文献
注1
Apple 「プライバシー」
https://www.apple.com/jp/privacy/features/
注2
iPhone Mania 「iOS14のトラッキング防止機能はアプリ広告に脅威をもたらす」
https://iphone-mania.jp/news-309331/
Mac Rummors ”Facebook Says Apple’s iOS 14 Anti-Tracking Features Will Cut 50% of its Audience Network Ad Revenue”
https://www.macrumors.com/2020/08/26/facebook-ios-14-anti-tracking-ad-revenue-drop/
注3 
Yahoo ! Japanサービス全般ヘルプ
https://support.yahoo-net.jp/SccYjcommon/s/article/H000012099
注4
GIZMODO 「アップルのトラッキング防止機能はユーザーが「選択」できる新しいもの」
https://www.gizmodo.jp/2021/06/apple-aims-to-enhance-privacy.html

    ホワイトペーパーフォームバナー

    【DL可能な資料タイトル】

    • ・プログラムによる建築/土木設計のQCD(品質/コスト/期間)向上
    • ・BIM/CIMの導入から活用までの手引書
    • ・大手ゼネコンBIM活用事例と建設業界のDXについて
    • ・デジタルツイン白書
    • ・建設業/製造業におけるデジタルツインの実現性と施設管理への応用

    詳細はこちら>>>

    PAGE TOP