ファクトリーオートメーションやスマートファクトリーの課題とは?
ファクトリーオートメーションとスマートファクトリーは言葉が似ているので何を指しているかわかりづらいことがあります。
この記事では、ファクトリーオートメーションと、工場のIoT化に伴い実現が期待されているスマートファクトリーの概要や違い、スマートファクトリーにおける課題を解説します。
製造業のファクトリーオートメーションは歴史が古い
ファクトリーオートメーションは「工場の自動化」のことであり、製造業では設計の効率化と生産性向上に欠かせない身近なものです。
製造業では産業ロボットの活用など古くからファクトリーオートメーションが導入されていましたが、CADやIoTなど新しいシステムが加わり従来のファクトリーオートメーションから進化を遂げています。
製造業におけるファクトリーオートメーションの概要
従来製造業で行われているファクトリーオートメーションとは、産業用ロボットやRFID、センサー、ソフトウェアなどを組み合わせて工場の製造工程を自動化することです。
例えば、ある量産工程を人間が行った場合は、適度に休憩をはさんだり人の手による作業のばらつきなどを考慮したりする必要があります。
一方、同じ工程を機械が担当した場合は、長期間一定の挙動で同じ作業ができます。
機械が人間と同じような作業をするためには、立ち上げに一定の投資と時間がかかります。
しかし、長期的にみると「コストの削減」「生産スピード向上」「品質安定」が図れます。
また、危険な工程だとしても作業をするのは機械なので、作業者の安全を確保する効果もあるのです。
ファクトリーオートメーションでは、以下のような分野などで活かされています。
・加工:プリント基板へのリフロー(はんだ付け)
・組み立て:製品の配置固定
・マテリアルハンドリング:部品供給、運搬管理
・管理:不良品の検出
CADやBIMを使ったファクトリーオートメーションもある
ファクトリーオートメーションは、システムで実現する余地があります。
例えば、CADやBIMを用いて3Dモデルを作成したとしても、設計者が自分で設計検討を行うためだけや、作図に活用するだけでは効率が良くありません。
そこでCADやBIMのデータを作成してPLM(Product Lifecycle Management)やBOM(Bill Of Materials:部品表)に登録すると、ファクトリーオートメーションに活かせます。
一度作った3Dモデルは、以下にある例のように営業や企画、設計、製造、量産などの各工程で活用可能です。
・CAEで解析を実施
・CAMでNCの加工用ティーチングデータを作成
・BOM(部品表)から3D形状を抽出
ものづくりのスマート化でファクトリーオートメーションの内容も変化している
ものづくりのスマート化とは、IoTやAIなどを活用した生産性向上施策のひとつです。
国内では、少子高齢化によりモノづくり現場の先進化・効率化が急務です。
国際競争力を高めるためには、QCDの向上が期待できるファクトリーオートメーションの活用が欠かせないでしょう。
「ものづくりのスマート化」により、ファクトリーオートメーションで行われる内容も変わりつつあります。
センサーなどの情報を用いると、稼働状況や人間が作業を行う際のノウハウ取得、作業ミス不具合の検出などが分析可能です。
また、生産計画に基づく機器の制御、工場やサプライチェーン全体での情報共有に活かせます。
ファクトリーオートメーション導入のメリットや市場規模や効果については、以下の記事も参考にしてください。
産業用制御およびファクトリーオートメーションの世界市場予測から見える次世代テクノロジーの重要性とは
スマートファクトリーとは
スマートファクトリーは、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえでも重要な要素です。
ファクトリーオートメーションにDX技術が導入されることで、より高次のスマートファクトリーが実現しています。
ファクトリーオートメーションとスマートファクトリーの違い
ファクトリーオートメーションは、IoTなどを活⽤して「ものづくりのスマート化」の段階を高めていくことができます。
スマートファクトリーは、ファクトリーオートメーションのうちスマート化のレベルが上がっている状態です。(*1)
・レベル0(従来の工場):情報がまだ活用されていない
・レベル1(データの収集・蓄積):有益な情報を⾒極めて収集して状態を⾒える化し、得られた気付きを知⾒・ノウハウとして蓄積できる
・レベル2(データによる分析・予測):膨大な情報を分析・学習し、目的に寄与する因子の抽出や、事象のモデル化・将来予測ができる
・レベル3(データによる制御・最適化):蓄積した知見・ノウハウや、構築したモデルによる将来予測を基に最適な判断・実行ができる
さらに、まだ実現されてはいないものの、レベル4として「製品のライフサイクルを通じて価値連鎖全体の組織と制御が新たなる段階」も想定されています。
スマートファクトリーデータの活用目的
スマートファクトリーでは、データを以下のような目的と使われ方で活用しています。
また、適切にスマートファクトリーの運営を行うためには、今までの工場運営では使われていなかった多くの情報の取得と管理が欠かせません。(*2)
データ活用する目的 | データの使われ方 | 利用されるデータの分類 |
---|---|---|
・品質改善 | ・可視化 ・異常検出 |
・センサーデータ ・静止画データ ・動画データ ・制御コマンド ・エンジニアリング設定 ・機器状態値 ・生産計画値 ・集計分析データ |
・機械化 ・自動化 ・最適配置 |
・デジタル化 |
・保守・保全の効率化 | ・可視化 ・予知保全 |
|
・生産計画改善 | ・可視化 ・計画最適化 ・機器制御 |
|
・工場街との情報連携 | ・外部連携 |
スマートファクトリーの導入はサイバーセキュリティ対策が課題
情報処理推進機構(IPA)が発表した情報セキュリティ10大脅威 2022によると、組織におけるセキュリティ上の脅威上位3項目は以下のとおりです。(*3)
・ランサムウェアによる被害
・標的型攻撃による機密情報の窃取
・サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃
スマートファクトリーの環境構築の際には、情報セキュリティ対策も必須要件となります。
ランサムウェアとは
身代金要求型不正プログラムとも言われています。パソコンがランサムウェアに感染すると、ファイルにアクセスできなくなったり暗号化されたりして使えなくなります。
元に戻すために金銭を要求するのが一般的ですが、必ず元に戻してもらえるとは限りません。
標的型攻撃とは
ウイルスが添付されたメールを、業務に関わるメールを装い担当者に送信して機密情報を盗み取る方法です。
サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃とは
踏み台攻撃とも言われます。
サイバー攻撃を受けるのは大手企業だけではありません。
攻撃者が企業Aをターゲットにサイバー攻撃をしたい場合、まず企業Aの取引先からセキュリティ対策があまり行われていない企業Bを探し出して、企業Bのパソコンを乗っ取ることがあります。
攻撃者は企業Bの担当者を装い企業Aのネットワークに侵入するため、どこから攻撃を受けているのかがわかりにくくなります。
スマートファクトリーへのセキュリティ対策事例
従来工場では産業ロボットが単体で駆動されていることが多くみられます。
つまり、セキュリティに関する対策が他の部門よりも弱くなっている可能性があります。
しかし前述のとおり、スマートファクトリーの維持管理には多くの情報やネットワークが必要です。
スマートファクトリーを運営するには、今まで工場では対策がやや弱いケースもあるウイルスへの感染対策や不正プログラムのアクセス制限、電子メールのウイルス検出やスパム予防などが求められます。
経済産業省では、産業サイバーセキュリティ対策として、以下の脅威とセキュリティ対策例を公開しています。
自社の生産改革の際には考慮しておくことが重要です。
まとめ
ファクトリーオートメーションとスマートファクトリーはどちらもQCD向上のための取り組みですが、内容は各々異なります。
ファクトリーオートメーションとは製造工場の自動化のことです。
また、スマートファクトリーとはAIやIoTなどの活用で工場内のある工程を自動化することです。
スマートファクトリーの維持管理にはセキュリティ面の課題があります。
導入検討時には欠かさず考慮することが重要です。
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参考URL
*1 https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/roadmap.pdf
*2 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sangyo_cyber/wg_seido/wg_kojo/pdf/001_05_00.pdf
*3 https://www.ipa.go.jp/security/vuln/10threats2022.html