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デジタルツインは製造業でどう使われるか?事例をご紹介します。

現実の物体や設備、環境を仮想空間に忠実に再現するデジタルツイン技術。仮想空間で分析したり、シミュレーションしたりすることで現実世界をよりよくしてきました。この記事ではデジタルツインが製造業の分野でどう使われているかをご紹介します。
また、過去の製造業のデジタルツイン取り組み事例4選|IoTとDXのフル活用でもダイキン、サントリー、BMW、旭化成の事例を紹介していますのでそちらもご覧ください。

 この記事を読むと以下の5つのことがわかります。
(1)事例1:トヨタ自動車
(2)事例2: 川崎重工
(3)事例3: 富士通
(4)事例4: 横河電機
(5)事例5: 産業技術総合研究所

事例1:トヨタ自動車

トヨタ自動車はスマートシティ「Woven City」を静岡県の自社工場跡地に建設中です。ここでは自動運転やMaaS、ロボット物流、スマートホームなどの様々な技術・サービスの実証実験を行う予定です。

Woven Cityでの実証実験に「スマートシティプラットフォーム」とデジタルツインが活用されます。
スマートシティプラットフォームとは、街のいたるところに設置されたセンサーや自動車、デバイスなどから収集された膨大なデータを統合したデータ基盤のことです。
スマートシティプラットフォームに集積されたデータをもとに、仮想空間に「Woven City」を構築し、仮想空間上で都市設計やサービスなどのシミュレーションに活用します。デジタルツインは一度建設すると修正が困難な都市設計と相性が良いとされます。

事例2: 川崎重工

川崎重工は2つの事例をご紹介します。

Microsoft社と連携したインダストリアルメタバース

川崎重工はMicrosoft社と連携して、インダストリアルメタバースを進めています。
製造業全体でロボットの需要が増加し、ロボットによる製造プロセスの自動化や効率化などの恩恵を受けています。一方、いつもと異なるロボットの挙動やトラブルが、生産ライン全体を止めてしまう可能性があります。
製造プロセスのクラウド/IoT基盤にマイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」を導入しました。デジタルツインプラットフォーム「Azure Digital Twins」 のシミュレーションによる、仮想空間上での過去、現在、未来の動作状態の把握によって、物理的に離れた拠点でのトラブル原因特定と解決を可能にします。*1
これと同時にクラウド/IoT管理プラットフォーム「Azure IoT」やエッジAIプラットフォーム「Azure Percept」、MRヘッドセット「HoloLens」を製造現場に導入しました。これらの連携によってロボット故障時の迅速な復旧や予知保全、遠隔地にいる技術者へのリアルタイムでのアドバイス・支援などを実現しています。

ROBO CROSS

また、川崎重工はROBO CROSS(ロボクロス)というデジタルプラットフォームを作ろうとしています。*2
そこに集まってきたデータ、アプリケーションを自由に利用できるようにすることで、ロボットの社会実装を促進できます。さらに、出荷したロボットからデータを収集することで、消耗の程度に応じて点検のアラートを出すこともできます。
このプラットフォームの最も大きな特長がデジタルツインによるシミュレーションです。今までは事前に検討をしても、現場で再確認・微調整をする必要がありました。干渉のチェック、動作時間などをROBO CROSS上でシミュレーションすれば、そのまま現場で実装することができます。
このプラットフォームが広がっていけばロボット導入期間の短縮につながることでしょう。

事例3: 富士通

富士通は3つの事例をご紹介します。

工場横断の全体最適化

富士通は、デジタルツイン空間に世界中の自社工場を再現し、リアルタイムで詳細に把握・監視し、製造工程や装置を比較する仕組みを取っています。この結果工場の横断的な分析が可能になり、どの工場のどの部門が優れているかを可視化できるようになりました。*3
工場ごと、部門ごとの最善例を分析し、デジタルツイン空間で他工場に適用する取り組みもされています。工場ごとに切磋琢磨するようなイメージで工場をよりよく作り変えていけるのです。

スマート工場 INESA

カラーフィルターメーカーである中国のINESAでは、富士通のデジタルツイン技術を使って工場の建屋や設備・機器をすべてデータ化し、現実世界の工場をデジタルツインで構築しました。*3
仮想空間を移動しながら、それぞれの機械のステータスを細かく可視化したり、様々な視点で製造ラインの状況をチェックできます。デジタルツインによって、リモートであっても設備の細かなメンテナンス指示を出すことが可能です。機械に異常が発生したら、それが工場のどこなのかを特定し、迅速に対処することができるようになりました。さらに専門性の高い技能を有する熟練工の視点を利用して、デジタルツインによって知識・技能を記録し、彼らが持つノウハウの継承にも役立てています。

行動分析技術Actlyzer

富士通は設置済みのカメラを含む任意のカメラで撮影した映像から作業者の行動や装置との関係性を3次元で検出し、シミュレータ上で再現した仮想生産ラインとの対応付けを行う新技術を開発しました。*4
この技術により、人の実際の作業状況の検出を高速・高精度に行い、シミュレーションとの対応付けを自動化するデジタルツインを実現することができるようになりました。シミュレーション結果と実績との乖離の把握や予知保全に役立ちます。

事例4: 横河電機

横河電機の甲府工場で、フォトグラメトリー技術を活用し工場の3Dモデルを作成しました。そして、その3Dデータ上に運転に関する時系列データ、機器情報、過去の保守履歴、取扱説明書などを紐付け、デジタルツインを構築しました。*5
その結果、現場の作業員は同じデータを遠隔地の専門家と共有し、アドバイスを得ることができるようになりました。また、遠隔地から作業計画などの策定が可能となり、リモートワークの実現に貢献しています。
ポンプの流量、振動などの大量の過去のデータを使用すると、これまで診断できなかった異常や障害状態を検出できるようになります。
 

事例5: 産業技術総合研究所

生産ラインをロボットだけにして自動化したくても、ロボットが苦手な柔軟物を扱う作業は自動化できません。一方で人とロボットが混在する「半自動化」を進めようとすると、ロボットの動作が遅く、生産性が上がらなかったり、センサーが必要でコストがかかったりするという問題があります。

産業技術総合研究所はこうした問題を解決するためのデジタルツインを活用したシステムを開発しました。まず仮想空間に現実世界で観測した人とロボットが同じ環境で作業をする状態を反映します。そして作業者の動きや身体負荷、人とロボットの安全状態をリアルタイムで分析することで、各人の作業負荷をロボットが理解します。その結果、ロボットは作業者それぞれのスキルや身体的な違いを考慮しながら、作業負担を代替して人をサポートすることができるようになります。*6
実証試験では生産性を10〜15%向上させ、人の負担を10%軽減することができました。

まとめ

今回はデジタルツインが製造業で使われている事例についてご紹介しました。人手不足、業務の効率化のために今後ますますデジタルツインの導入が進んでいくことでしょう。

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*1 Microsoft「産業での活用が進むメタバース: 設計、開発から試験まですべての工程を仮想空間上で実行できるコラボレーション環境を目指す、川崎重工の取り組み」
https://news.microsoft.com/ja-jp/2022/05/25/220525-metaverse-increasingly-used-in-industry/

*2 川崎重工 「ロボットディビジョンの未来像」
https://kawasakirobotics.com/jp/company/robotvision2030/

*3 富士通ジャーナル「製造業の最新活用事例にみる「デジタルツイン」とは?」
https://www.fujitsu.com/downloads/blog/jp/journal/2020-02-25-01.pdf

*4 富士通「「行動分析技術Actlyzer」で製造分野のデジタルツインを実現する新技術を開発し、「第7回スマート工場EXPO」に出展」
https://pr.fujitsu.com/jp/news/updatesfj/2023/01/18-1.html

*5 cognite「横河電機」
https://www.cognite.com/ja-jp/customer-stories/dataops-manufacturing-maintenance

*6 産業技術総合研究所 「生産性の持続的向上と人の負担軽減を両立するデジタルツインを開発」
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2023/pr20230131/pr20230131.html

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