全国道路施設点検データベースの使い方とは?道路DXを支える技術を解説
道路整備をデジタル技術で効率化したり、より安全な点検や補修作業を実現することは、全国に張り巡らされた交通網を有する日本にとって重要な課題と言えます。そんな課題解決において注目されているのが道路DXの達成ですが、大切なのは信頼に足るデータベースの拡充です。
この記事では、そんな道路DXの実現において欠かせない存在とも言える、全国道路施設点検データベースの概要や、具体的な使い方について、解説します。
目次:
- 全国道路施設点検データベースとは
- 注目の背景にあるxROADについて
- 全国道路施設点検データベースの使い方
- 無料公開のデータベース
- 有料公開のデータベース
- 道路DXの今後
全国道路施設点検データベースとは
全国道路施設点検データベースとは、全国の道路施設の諸元、および点検結果などを一覧で表示する、国土交通省が作成したシステムです*1。2022年5月より一般向けの公開がスタートしており、無料の「基礎DB」がはじめに公開され、2023年からはそれ以外のデータが有料で公開されています*2。
日本国内には北から南に至るまで、広く交通網が張り巡らされていますが、その点検や補修工事はこれまで有人で一つずつ行われてきました。
近年は少子高齢化や人口の都市部への集中もあり、地方都市や山間部における交通網の整備に十分な時間や費用をかけることが難しくなっています。また、高度経済成長期に建てられた橋梁やトンネルといった、大規模な構造物についても耐用年数をオーバーしているケースが散見され、早急な対処が必要とされていますが、その全容を把握できていない問題も抱えています。
そんな中新たに公開されたのが、全国道路施設点検データベースです。全国の道路交通に関する点検記録や点検の判定結果などをまとめてデータベースに記録することにより、交通インフラの全容を効率よく把握し、効率的な点検や補修工事を可能にすることが可能です。
全国の道路交通網はデータ化されてきたものの、これまでは保有者やデータを管理している場所が異なってきたために、その全てをまとめて把握することは困難でした。全国道路施設点検データベースの確立により、これらの情報を一元化し、データとしての有用性を高める狙いがあります。
注目の背景にあるxROADについて
全国道路施設点検データベースが注目を集めることとなった背景には、xROAD(クロスロード)と呼ばれる道路交通プラットフォームの登場があります。xROADは日本の道路関連の構造物や、リアルタイムの交通量および施設の点検情報などを、まとめて管理することができるデジタルプラットフォームです。
xROADは膨大な交通関連のデータベースを集約するとともに、常に更新を続けることで高い有用性を発揮します。全国道路施設点検データベースはもちろん、国土地理院地図やモービルマッピングシステム(MMS)、航空レーザー測量(LP)などから取得したデータをとりこみ、3次元的でリアルタイムの情報共有を実現可能です。
xROADの特徴は、APIを経由してさまざまなアプリケーションの開発に役立てることができることにあります。道路管理を効率化するためのアプリや、災害時のルートを検討するための防災アプリ、全国の交通事故多発エリアを自動で分析し、ドライバーや交通局に呼びかけるためのアプリなど、多くの可能性を秘めています。
全国道路施設点検データベースは、そんなxROADのデータベース拡充において重要な役割を果たしており、近年は民間向けにも公開が進み、オープンイノベーションのきっかけにもなっています。
全国道路施設点検データベースの使い方
全国道路施設点検データベースは、公式サイトから所定の手続きを実行することで、利用可能になります。
主に道路管理者向けのデータ管理・共有効率化を目的としており、独自にデータベースを整備しなくとも、データの登録や検索を自由に行うことができます。他の組織の道路管理情報についてもシームレスに閲覧できるため、類似の事例に接した際の判定の参考にすることが可能です。
研究機関や民間企業における運用も想定されており、各種データを直接ダウンロード、あるいはAPIで取得し、サービス開発や分析などに役立てられます。
またデータベースの利用には、あらかじめ利用登録を行う必要があります。申請フォームに必要事項を記入し、データベース管理団体へメールを送り、ユーザ登録を完了しなければなりません*3。
無料公開のデータベース
全国道路施設点検データベース上で公開されている一部のデータについては、無料で利用することもできます。全国道路施設点検データベースの「損傷マップ」は、無料公開のデータベースであり、道路橋やトンネルなどの道路構造物の舗装や点検によって判明した現状や、対策状況を把握可能です*4。
公式サイトにて利用規約に同意すれば、すぐにデータへアクセスできるので、手間のかかる手続きなどは必要ありません。
有料公開のデータベース
2023年より公開されている有料のデータベースは、無料分の基礎データベースを含めた全てのデータにアクセスすることができます。道路橋の構造形式や横断歩道橋の昇降形式、トンネルの施工法や等級、道路舗装の種別・構成など、無料公開分では得られなかった詳細データが閲覧・利用可能です。
これら有料のデータベースについての具体的な金額は、登録申請を行う際に管理者から送られてくるため、それを参考にしましょう。有料・無料の線引きについては、道路管理者が自身で登録したデータの利用は無料、それ以外は有料です。データの登録も基本は有料ですが、道路法第77条に基づき全道路管理者に対し、毎年行っている調査結果の登録は無料とされています*5。
道路DXの今後
道路DXを実現する上で現在求められているのが、全国的なデータの一元化と、データを活用するためのプラットフォームの構築です。これはxROADの登場や全国道路施設点検データベースの拡充により、少しずつ改善が進められています。
このようなプラットフォームの普及が進めば、それに付随してアプリ開発やデータ活用の可能性もひらけてきます。今はまだ十分なサービスが登場しているとは言えませんが、今後10年ほどで、道路関連のサービス品質やバリエーションは驚くほどに向上していくことが予想できるでしょう。
まとめ
この記事では、一般公開が進む全国道路施設点検データベースの役割や可能性について、解説しました。道路DXはまだスタートしたばかりであり、そのための土壌を耕す段階にすぎません。
しかし確実にデータの拡充や運用体制の構築は進められており、データ活用に向けた動きは確実に増えつつあります。近い将来、日本の交通インフラはより安全かつ利便性に優れた状態で運用されるようになるでしょう。
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参考:
*1 日経XTECH「道路のDX「xROAD」が本格化、まずは点検データを公開」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02080/060900006/
*2 空間情報クラブ「道路DX|国土交通省、xROADで道路点検データ公開」
*3 一般財団法人日本みち研究所「データ登録の流れ」
http://rirs.or.jp/tenken-db/pdf/touroku/touroku_flow_tenken.pdf p.1
*4 国土交通省「全国道路施設点検データベース〜損傷マップ〜」
https://road-structures-map.mlit.go.jp/Index.aspx?ReturnUrl=%2f
*5 国土交通省「全国道路施設点検データベースの整備」