意匠図とは?種類や他の図面との違い、図面の描き方を解説
建築図面にはいくつかの種類があり、目的や用途に応じて複数の図面を使い分けることが一般的です。ただ、図面の中でも最も重要性が高く、意思決定にも大きな影響を及ぼすのが意匠図の存在です。
この記事では、そんな意匠図とはどのような役割を果たす図面なのか、具体的な種類や他の図面との違いに触れつつ解説します。
目次:
- 意匠図とは
- 構造図や設備図との違い
- 意匠図の主な種類
- その他の意匠図の種類
- 意匠図の効率的な描き方
- 意匠図作成にはなんのソフトを導入すべきか
意匠図とは
意匠図とは、建物の見た目やデザインなど、その名の通りその建物の意匠を把握するための図面です。
具体的な間取りはどうなっているのか、どのようなデザインを備えているのかを確認し、完成イメージを施主に伝えます。
建物はその種類にもよりますが、基本的にはまず大まかなゴールを設定し、それが確定したらディテールを詰めていく作業に入ります。
意匠図はそんな大まかなゴール、つまり完成予想図を伝え、確定させるために欠かせない図面というわけです。
構造図や設備図との違い
建物の設計で使用する図面には、意匠図に加え構造図と設備図と呼ばれるものも存在します。意匠図とはどのような違いがあるのか、ここで確認しましょう。
構造図の特徴
構造図は、柱や壁といった建物を支えている部分の構造を明らかにした図面です。主な種類としては
- 伏図
- 軸組図
- 標準図
が挙げられ、これらはいずれも構造図の一種です。
伏図は上から見下ろした形の図面で、建物の基礎部分の構造を平面的に表します。軸組図は垂直方向に建物の構造を捉えた図面で、柱や梁の断面の様子を知ることができます。
標準図は、構造部材同士がどのように納まっているのかを描いた図面です。これらの図面を使い分け、建物構造を深く理解することができます。
設備図の特徴
設備図は、建物の設備の仕様や配管などを詳細に記した図面です。主な設備図の種類として、
- 電気設備図
- 空調設備図
- ガス設備図
といった図面が挙げられます。
電気設備図は配線図と呼ばれることもある、ブレーカーの位置や配線経路を示すものです。空調設備図はエアコンや換気扇、室外機の配置を示し、ガス設備図はガスの配管経路を示します。
構造図も設備図も、質の高い建物を完成させる上では欠かせないものではありますが、これらはディテールを詰め込むための図面であるのも事実です。まずは意匠図を設計し、施工主に確認をとってから作成・共有するものである点を覚えておきましょう。
代表的な意匠図の種類
構造図や設備図に種類があるように、意匠図にも複数の種類があります。ここでは、意匠図の代表的な種類について解説します。
平面図
平面図は、建物の内部を水平に上から捉えた図面を指します。建物の間取りや建具の配置、壁の種類などを表現します。
また、建物が複数階層によって構築されている場合、平面図も1フロアごとに作成します。
断面図
断面図は、建物を垂直に切断した図面を指します。真横から建物の様子を伺えるので、具体的な空間の高さを知ることができます。
複数階層を有している建物の場合、上下階との高さの関係を知ることもできます。平面図同様、断面図も1フロアごとに図面を作成するのが特徴です。
立面図
立面図は、建物の外観を立体的に捉えた図面です。建物の、正面、両側面、背面を描き、そのビジュアルの確認に役立ちます。
屋根の形状や外壁の種類、開口部などの確認に役立つ意匠図です。
その他の意匠図の種類
この他にも、意匠図には複数の種類があります。それぞれの意匠図で表現している内容は異なるため、必要に応じて使い分けられると良いでしょう。
案内図
案内図は、建物が位置している住所や周辺環境などを示す図面です。複数の図面からなる設計図の、最初のページを飾ることが多い図面と言えます。
建物の図面を理解する上での基本情報が記されています。
展開図
展開図は、室内における壁面の形を知るために描かれる意匠図です。建物の中央部分から四面を捉え、ドアや窓の位置、天井の高さなどを詳細に知ることができます。
平面詳細図
平面詳細図は、平面図に描かれている情報をより噛み砕いたものです。窓の寸法や構造などを、数値情報も交えながら詳細に知ることができます。
建具図
建具図は建築物の開口部や内部の仕切りなどに用いる建具の種類や寸法、形状などを記した意匠図です。建具情報について詳しく知りたい場合、参照します。
外構図
外構図は、建築物本体を取り巻く通路や駐車場、門灯、植栽などの情報を記した意匠図です。建物がどのような環境の中に建てられることとなるのか、詳細に把握することができます。
意匠図の効率的な描き方
意匠図を描く場合、近年は便利なツールが複数登場しているため、それらを使って描くのが最も効率的です。ここでは、代表的な意匠図の描画方法について解説します。
CADソフト
CADソフトは、図面作成に特化した専用のコンピューターソフトです。
CADソフトには2D図面の作成に対応した2D CADと、3Dモデリングに対応している3D CADの2種類があります。近年は3Dモデリングの需要が大きいため、2D・3Dの両方の機能を備えているCADソフトも普及してきました。
また、CADソフトには特定の業務に特化した専用CADと、あらゆる領域に対応する汎用CADが存在します。
意匠図を作成したい場合、2D図面作成機能を備えたCADソフトを選びましょう。専用CADと汎用CADのどちらを選ぶべきかは、携わる業界を踏まえての選択をおすすめします。
代表的なCADソフトとして、AutodeskのAutoCADや、国産のオープンソースソフトであるJw_CADなどが挙げられます。
グラフィックソフト
グラフィックソフトとは、多様な図面作成やイラストレーションに対応している描画ソフトのことです。意匠図の作成に限らず、多様な描画作業に対応しているため、汎用性が高いのが特徴です。
CADのように建築分野に特化した描画機能は備わっていませんが、コンピューター制御で正確にグラフィックを描くことができます。
代表的なツールとして、AdobeのIllsutratorやセルシスのCLIP STUDIOなどが挙げられます
意匠図作成にはなんのソフトを導入すべきか
意匠図の作成を初めて手がける場合、まず考えるべきは現在手元にどのようなソフトがあるかです。すでにCADソフトやグラフィックソフトなどを所有している場合、まず使い慣れたそれらのソフトで実際に作成してみると良いでしょう。
その際、使い勝手が悪いと感じたら別のソフトの導入を検討すれば良いため、とりあえず手を動かしてみるのが有効です。
また、Jw_CADのようなオープンソースのCADソフトは無料で利用ができますし、グラフィックソフトにも図面作成向けのプラグインソフトが提供されている場合もあります*1。
現在の環境や使い勝手を踏まえた、試行錯誤がおすすめです。
まとめ
この記事では、意匠図とはどのような図面なのかについて、具体的な役割や種類に触れながら解説しました。
意匠図は建物の設計において重要性の高い図面であるため、その役割や作成方法についての理解を深めておくことが重要です。実際に手元のソフトで作成しながら、その仕組みへの理解を深めると良いでしょう。
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