建築・製造・土木で違う!業種別CAD資格の一覧とおすすめ資格
1. はじめに
CAD(キャド)とは、コンピューターを使って設計や製図を行う技術を指します。建築や製造、土木など多彩な業界で不可欠とされており、さまざまな場面で活用されています。
実際、建築業界 CADの現場では、建物の設計図や施工図を効率良く作成するためにCAD操作スキルが重視されます。また、製造業界 CADにおいては、3次元CADを使うことで複雑な部品の構造を視覚的に確認し、製造工程のミスを減らすメリットが期待されます。
さらに、土木業界 CADにおいては道路や橋梁など大規模インフラにも対応できる図面作成が求められ、2次元CAD・3次元CADなど複数のCADソフトウェアを扱う機会が増えています。
こうした背景から、CAD技術者として活躍するには資格取得が効果的です。本記事では、CAD資格取得のメリットや業種別CAD資格の具体例を示し、最適なキャリアパスやスキルアップの方法をわかりやすく解説します。CAD就職やCAD転職を考えている方はもちろん、初心者も中級者も自身のキャリアを見直す際のヒントとしてご活用ください。
2. CAD資格とは?その重要性と基本情報
CAD資格とは、設計図や3Dモデルを扱うために必要な知識と技術を証明するものです。実際に必要とされるCAD操作スキルやソフトウェアの機能理解だけでなく、図面の読み方や製造・建築・土木など各業界の基本知識も求められることが多いです。
なぜ資格が大切かというと、CAD資格試験によってスキルが客観的に示され、採用担当者や上司に対して“CADスキルをきちんと身につけている”とアピールしやすくなるからです。実務経験の浅い方や業界未経験の方でも、CAD資格があれば転職や就職で有利に働くケースは少なくありません。
さらに、CAD資格のメリットはキャリアアップにもつながる点です。資格をもつことで技術職昇進の候補に挙がりやすくなったり、CADプロジェクト管理のポジションを狙ったりと、挑戦できる職域が拡大します。
ここではまず、CAD資格が多くの人に支持されている理由や、基本的な制度の仕組みを整理し、2つのトピックに分けて解説していきます。

2.1. CAD資格の基本とは何か?
CAD資格は、受験者の操作スキルや知識を評価するために定められた試験制度です。例えば、CAD利用技術者試験では2次元CADと3次元CADの両方を対象とした級別試験があり、建築や製造業だけでなく、さまざまな分野で活かせる総合的な内容となっています。
また、建築CAD検定は建築業界に特化した内容で、建物の図面作成や意匠設計などの基本を学べます。一方のSolidWorks認定資格は、SolidWorksという特定ソフトの知識と機能活用力を測る試験です。つまり、資格によって目的や対象ソフトウェアの範囲が異なるので、自分が目指す業界のトレンドや必要とされるCADソフトウェアを調べた上で試験を選ぶと良いでしょう。
試験内容は、基本的なコマンド操作、図面のルール(寸法・尺度など)、立体モデルの作成方法、そして関連する材料力学や製図基準の基礎などにわたります。公式のCADトレーニング教材や学習用ソフトを用いることで、効率的に知識を習得できます。
2.2. なぜCAD資格が重要なのか?
第一に、CAD資格試験によって得られる合格証や認定証は、スキルの見える化に直結します。実務では、ソフトウェアの操作ができるか否かは履歴書上では一見わかりづらいものですが、資格があれば客観的に証明できるわけです。
第二に、企業の採用現場では専門人材を求める一方、即戦力になる人材に絞って採用したいという動きがあります。CAD資格を有していると、たとえ未経験でも研修の手間が少なくて済むと判断されやすく、CAD就職やCAD転職のチャンスが広がります。
第三に、資格学習の過程でCADソフトウェア以外の知識(製造業の工程や設計理論、建築物の安全基準など)も得られます。CAD教育機関や独学の場合でも、資格の勉強を行うことで体系的に理解が深まり、資格取得後も現場で役立つ応用力につながります。
このように、CAD資格には業種を問わず多くの利点が存在します。実務の中で幅広く工程に関わるBIMエンジニアやCIMオペレーターを視野に入れている方にとっても、早い段階で資格を取得しておくことがキャリア形成上有効です。
3. 業種別のCAD資格一覧
建築CAD検定やCAD利用技術者試験など、代表的なCAD資格は共通してあっても、実際には業界ごとに重視される資格が異なります。ここでは、業界別にどんな資格が有用か、具体例を挙げてみていきましょう。
建築業界では、証明力を高めるために建築CAD検定と合わせて、BIMエンジニアに近づけるスキルを取得する例も増えています。逆に製造業界では3次元CAD利用技術者試験やSolidWorks認定資格が主流となり、製品開発で即戦力となる人材の証明として機能します。
土木・インフラ業界に関しても、2次元CADだけでなく3次元CADの技術が求められるシーンが多く、CIMオペレーターへのステップアップを目指す方にはCAD利用技術者試験(3次元部門)が評価される場合があります。
それぞれの業界がいまどんなCADスキルを必要としているのか。これらを押さえることで、キャリア形成の方向性をつかみやすくなるはずです。
3.1. 建築業界で求められるCAD資格
建築業界 CADでは、意匠設計や構造設計に合わせて図面作成スキルが求められます。代表的なのが建築CAD検定で、2次元図面の作図能力や3次元CADの基本操作などを学べます。
CAD利用技術者試験(建築分野)を合わせて取得しておくとさらに就職・転職で有利です。これらは建築計画や建築基準法の基本的な知識と併せて、寸法管理やパース作成などの実務で必要な技術を証明できます。
近年ではBIMエンジニアを目指す方も増えており、オートデスク認定資格(Revitなど)を取得しておくと3D空間の高度な建物モデルを扱えるアピールになります。Vectorworks操作技能認定試験など、建築だけでなく景観デザインにも対応するソフトの資格もあり、業務分野に応じて選択肢を広げることが重要です。
- 建築CAD検定試験(建築CAD検定)
- CAD利用技術者試験(2級・1級)
- オートデスク認定資格プログラム
- Vectorworks操作技能認定試験
3.2. 製造業界で役立つCAD資格

製造業界 CADでは、部品や製品のモデリングやアセンブリ(組立)など、3次元CADが重要視されます。特に3次元CAD利用技術者試験(準1級・1級)は、機械系のモデリング技術や製図の基礎を問われるため、多くの企業で評価が高いです。
SolidWorks認定資格(CSWA、 CSWP)は、SolidWorksを導入している工場・メーカーで即戦力として扱われやすく、転職活動でも注目されます。またCAD利用技術者試験の機械分野を取得しておくと、製造工程の流れや材料力学の基本的な理解を併せ持っていると判断されるので、キャリアチェンジ希望の技術者におすすめです。
製造業ではモノづくりの各工程を一貫して行う企業も多く、設計だけでなく試作・解析・量産まで対応できるCADスキルアップが求められます。資格があれば、プロジェクト管理やチームリーダーへ登用される素地もできやすいです。
- 3次元CAD利用技術者試験(準1級・1級)
- CAD利用技術者試験(機械分野)
- SolidWorks認定資格(CSWA, CSWP)
3.3. 土木・インフラ業界に必要なCAD資格
土木業界 CADは、道路や橋梁、下水道など大規模なインフラと深く関わります。現場での寸法が大きくなるため、正確な図面の構成や測量データとの整合が必要です。2次元CAD利用技術者試験も依然評価されますが、近年は3次元CADを活用して地形などを詳細にシミュレートする場面が増えました。
そのため、3次元CAD利用技術者試験(準1級・1級)を持っていると、橋や道路の立体的な形状を扱える人材として注目されやすいです。また、AutoCAD Civil 3Dなど土木向けのオートデスク認定資格も存在します。CIMオペレーターを目指す方にとっては、3Dモデルの活用力を問う資格が今後さらに重要になるでしょう。
土木分野は、災害対策や公共事業など社会性の高いプロジェクトに携わる機会も豊富で、CAD資格取得によって役割が拡大したり、高単価の案件に参画できる可能性があります。
- 2次元CAD利用技術者試験
- 3次元CAD利用技術者試験
4. 資格取得のメリットとキャリアへの影響
ここからは、CAD資格取得が実際にどのようなメリットを生み、キャリアに良い影響をもたらすのか、具体的な例を交えながら解説します。資格はゴールではなく、成長のための手段です。
CAD設計の知識や経験が乏しい人でも、資格を活用して転職や就職で有利になったケースは少なくありません。逆に、経験豊富なベテラン技術者でも資格を保有することで新しいプロジェクトを任されやすくなる利点があります。
資格は、あくまでスキルアップやキャリア形成のきっかけにすぎませんが、その“きっかけ”によって新たなチャンスが生まれることも事実です。では、具体的にどのようなメリットがあるのか、4つのポイントに分けて見ていきましょう。
自分の方向性を整理し、どの業界でどうスキルを磨くか考えるための参考にもぜひ役立ててください。
4.1. 資格がもたらすキャリア上の利点
一つ目の利点は、技術職昇進がしやすくなることです。多くの企業で「CAD操作スキルがある人に新規プロジェクトを任せたい」というニーズが高まっており、資格がその根拠となります。
二つ目は、CADフリーランスとして活動する際にも有利になる点です。スキルの証明として資格があれば、クライアントから職務レベルを確認される場合でも安心です。CAD設計や製図を請け負うフリーランス案件は増加傾向にあり、特に3次元CADを扱える人材は貴重とされています。
三つ目は、業界を横断して働けるということ。CADは建築・製造・土木だけでなく、インテリアやファッションなどのデザイン関連、さらには医療器具の設計などにも応用されます。資格を入り口として業界を超えたキャリアパスも夢ではありません。
まとめると、CAD資格がもたらすキャリア上の利点は非常に大きく、自身の働き方や将来設計を柔軟に考えるための手段になります。
4.2. 資格取得によるスキルの見える化
CADスキルアップを進める上で悩ましいのは、知識レベルを客観的に示す指標が少ないことです。そこで資格を取得すると、「このソフトウェアの操作がどの程度できるのか」「2次元CADと3次元CAD、どちらに強いのか」がはっきり説明できます。
例えば、CAD利用技術者試験の1級を持っていると、図面の読み書きとともに、3Dモデリングや材料の理解まで網羅していると認められます。これは企業が人材を判断する際の分かりやすい材料になり、求人応募時の書類選考でも注目されやすいです。
CAD資格試験に合格したという事実は、履歴書やLinkedInなどでアピールする際にも活用できます。募集要項に「CAD操作スキル必須」と書かれていたとしても、資格を提示すれば話が早いでしょう。
4.3. 昇進・昇給への影響
実務での成果とともに、CAD資格取得という形で努力が評価されることがあります。特に製造業界や建設会社などでは「資格手当」を支給する企業もあり、昇進や昇給の要素として加点されるケースがあります。
また、資格があることで社内異動の幅も広がります。CADプロジェクト管理の役割や、BIMエンジニア、CIMオペレーターなど新しい技術を取り入れた配属に移ることが可能です。特にラテラル移動(同じ階級内での部署移動)でも、CAD資格保有者の需要は一定数あるため、組織内で重宝される存在になりやすいです。
もちろん、実際にキャリアを伸ばすには日々の業務成績やコミュニケーション力も欠かせませんが、資格という客観的な“技術の証明書”があるかどうかで評価のされ方が変わるでしょう。
4.4. キャリアの選択肢が広がる
資格取得後、さらに専門性の高いスキルや上位資格に挑戦することで、将来のキャリアは大きく広がります。例えば、CAD教育機関で講師として活躍したり、社内で新人教育を担当する道も考えられます。
また、CADソフトウェア開発企業と連携し、新機能の検証や操作ガイド作成に関わるケースもあります。プロジェクトマネージャーへのステップアップを見据える場合には、CAD設計だけでなくスケジュール管理やマネジメントスキルも習得しやすくなります。
つまり、CAD設計の仕事は単なる図面作成に留まらず、幅広い業務や職種と結びつくのです。資格を足掛かりにして積極的にキャリアアップを図れば、思いがけない分野で力を発揮できる可能性もあります。
こうした将来展望を持つことは、資格取得の勉強に取り組むモチベーションとしても大いに役立つでしょう。
5. 業界別のキャリアパスと資格の活かし方
実際に資格を取得した後、その資格をどう活かしてキャリア形成を進めるのかをイメージできない方も多いです。そこで、建築業界・製造業界・土木・インフラ業界の3つに分け、具体的なキャリアパス例と資格の活かし方を示します。
どの業界に転職したいのか、あるいは今いる業界でさらに成長したいのかによって、選ぶべき資格や学習の優先度は変わってきます。今回ご紹介するのはあくまで一例ですが、キャリアを描くうえで参考になる点があるはずです。
また、現在異業種で働いている方にとっても、CAD資格は非常に心強いステップとなるでしょう。CAD転職や未経験ポジションへのチャレンジを希望する場合には、資格と関連するポートフォリオを作成してアピールするのが効果的です。
それでは、各業界の特性を踏まえ、CAD資格の活かし方を見ていきましょう。
5.1. 建築業界のキャリアパス
建築業界では、設計事務所やハウスメーカー、ゼネコンなど多様な就職先があります。建築CAD検定やCAD利用技術者試験を取得した人は、CADオペレーターや設計アシスタントとしてスタートするのが一般的です。
そこからキャリアを積むと、意匠設計者としての役割や施工図作成のスペシャリストへ道が開けます。さらにBIMエンジニアとして3Dモデルを扱えるようになれば、大きなプロジェクトの中核を担うことも期待されます。
建築の図面作成は、住宅やビルだけでなく、店舗や公共施設など扱う規模や構造物が多岐にわたります。CAD資格を通じて基本をマスターしたら、実務経験で応用を身につけ、関連資格(建築士・インテリアプランナーなど)を組み合わせると、専門領域を深めることができます。
5.2. 製造業界のキャリアパス
製造業界でのCADキャリアパスは主に機械設計者、CADモデラー、CAEエンジニアなどが挙げられます。3次元CAD利用技術者試験やSolidWorks認定資格(CSWA/CSWP)を取得しておけば、製品開発や試作モデルの作成を任される確率が高まります。
キャリアを積むと、プロジェクト全体を統括するプロジェクトリーダーやマネジメント層を目指すことも可能です。CAD設計だけでなく、強度計算や材料特性の知識を深めるとより高度な製品開発に関わりやすくなり、昇進・昇給にも影響してきます。
また、外部のCAD教育機関やセミナーに参加し、常に最新のCADソフトウェア動向をキャッチアップする姿勢が必要です。製造業界ではスピードやコスト面での競争が激化しているため、優れたCAD操作スキルは高い評価につながります。
5.3. 土木・インフラ業界のキャリアパス
土木・インフラ業界では、道路や橋の施工計画から、下水道や河川堤防、トンネルなどのインフラ整備まで幅広いプロジェクトが動いています。CIMオペレーターとして3Dモデルを扱う人材が求められる場面も多く、2次元CAD利用技術者試験に加えて3次元CADのスキルを磨くと有利です。
この業界でCAD資格を活かす道としては、施工図の作成を担当するCADオペレーターからスタートし、プロジェクト全体の設計や工期管理を行う立場へ進むという流れが一般的です。土木施工管理技士などと資格を組み合わせると、より幅広い業務を担当しやすくなります。
また、自治体や建設コンサルタント会社、ゼネコンなど、多様な就職先があるのも土木分野の特徴です。資格取得と実務経験の蓄積によって、高度な設計案件に巡り合う機会が増え、公共事業の安定した需要も相まってキャリアを長期的に築きやすいと言えるでしょう。
6. まとめ:業界にマッチした資格選びのポイント
以上を踏まえ、CAD資格を活かしてキャリアを築くにはまず自分が目指す業界を明確にすることが重要です。建築、製造、土木など各業界で求められるCADスキルやソフトウェア、そして評価される資格の種類は異なります。
建築業界であれば建築CAD検定やオートデスク認定資格、またはVectorworks操作技能認定試験などを組み合わせると効果的です。製造業界を志すなら、3次元CAD利用技術者試験やSolidWorks認定資格を取得することで開発・設計職への扉が開きます。土木業界では、2次元CADと3次元CADの両方を網羅できるCAD利用技術者試験が有用で、CIMオペレーターとしてキャリアを積むことも視野に入ります。
CAD資格取得によって得られるメリットは、就職・転職に役立つだけではありません。社内での評価や昇進・昇給のチャンスを高め、プロジェクト管理者としての道や、いつかはCADフリーランスとして独立する選択肢を拡大してくれます。
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<参考文献>
・(社)全国建築CAD連盟「【建築CAD検定試験】AACL」
・一般社団法人コンピュータ教育振興協会「CAD利用技術者試験 – ACSP」
・SOLIDWORKS「SOLIDWORKS 認定試験」
https://www.solidworks.com/ja/solution/edu_JPN/SW_Certification
・株式会社マルハン「オートデスク認定資格プログラム」
https://www.myautodesk.jp/certification/
・VectorWorks Japan「Vectorworks操作技能認定試験」