SolidWorksでフィレットを一括作成する方法|作業効率がアップする基本テクニック
1. はじめに
SolidWorksで製品を設計していると、「角の処理」に悩むことはありませんか?
特に、多くの部品を扱う設計では、角の丸め処理(フィレット)の指定が大量に発生し、手作業ではかなりの時間がかかってしまいます。
フィレットは、部品の角を滑らかに丸めることで、応力集中の軽減、加工性の向上、そして見た目の美しさにもつながる大切な処理です。しかし、複数のエッジや面に一つずつ適用していくのは手間もかかり、ミスの原因にもなりがちです。
そこで本記事では、「SolidWorksでフィレットを一括作成する方法」を中心に、作業時間の短縮とミスの防止につながる効率化テクニックを紹介します。初心者の方にもわかりやすいよう、専門用語はできるだけ平易に、操作ステップも丁寧に解説していきます。
この記事を読むことで、フィレット処理の基本と一括適用のメリットを理解し、実務にすぐ活かせるスキルを身につけられるはずです。設計業務のスピードアップを目指したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
2. フィレットとは?基本のおさらい
引用:https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/c_fillet_overview.htm
SolidWorksにおける「フィレット」とは、部品のエッジや角を滑らかに丸める処理のことを指します。一般には「R加工」や「面取り」とも呼ばれますが、面取りが直線的に角をカットするのに対して、フィレットはなめらかな曲線で処理されるのが特徴です。
フィレットの目的は多岐にわたります。たとえば、角の尖りをなくして安全性を高めたり、力が一点に集中する「応力集中」を緩和して破損を防止したり、さらには加工のしやすさや見た目の美しさを向上させたりと、設計におけるさまざまな面で効果を発揮します。
身近な例でいうと、コンクリートの角を斜めに削って丸みを持たせる処理がありますが、SolidWorksのフィレットもそれと同じように、形状の角をやさしく整える働きを担っています。
SolidWorksでは、用途や目的に応じて複数の種類のフィレットが用意されています。代表的なものとして、一定の半径で滑らかに処理する「一定半径フィレット」、始点と終点で異なる値を指定して変化を持たせる「可変半径フィレット」があります。さらに、2つの面の間を滑らかにつなぐ「面フィレット」や、3つの面の交点すべてに丸みをもたせる「フルラウンドフィレット」など、設計内容に応じて使い分けることが可能です。
とくに形状が複雑な部品を設計する場合には、どの種類のフィレットをどの順序で適用するかが、仕上がりの品質や作業の効率に大きく影響します。設計者の経験や判断力が問われる場面でもあります。
ただし、フィレットを手動で一つずつ適用していくと、指定ミスや時間のロスが発生しやすくなります。設計の初期段階では、試行錯誤しながら形状を変更する場面も多いため、そのたびにフィレットを追加・削除する作業が煩雑になり、結果的にエラーが発生するリスクも高まってしまいます。
こうした問題を解決する方法として有効なのが、「フィレットの一括適用」です。複数のエッジや面に対して、まとめて同じ設定でフィレットをかけることで、作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、指定ミスの防止にもつながります。
次のセクションでは、SolidWorksでフィレットを一括作成するための具体的な操作方法を、ステップごとにわかりやすく紹介していきます。基本操作はすでに身についているけれど、さらに効率的に作業を進めたいという方は、ぜひ続きをご覧ください。
フィレットの適切な活用によって、強度や美観の向上はもちろん、加工や組み立てのしやすさ、安全性の向上といった面でも大きな効果が期待できます。特に樹脂部品や金属パーツなどで角の破損を防ぎたい場合には、設計初期の段階からフィレットを意識的に取り入れることが重要です。ここでその基礎をしっかりと押さえておきましょう。
3. フィレットの一括作成の手順【ステップガイド】
SolidWorksでは、複数のエッジや面に対して同じ半径値のフィレットを一括で適用することができます。この方法は、フィレットの数が多いパーツの設計時に特に有効で、作業時間の短縮や設定ミスの防止に大きな効果があります。
ここでは、初心者の方でもイメージしやすいように、SolidWorksの標準的なインターフェースを前提とした一括作成の流れを、ステップごとに詳しくご紹介します。
作業を進める際には、複数選択をスムーズに行うための「Ctrlキーの活用」、連続したエッジを選ぶ「ループ選択」、仕上がりを確認するための「プレビュー表示」など、SolidWorksならではの便利な機能を積極的に活用することがポイントです。
また、フィレットコマンドのプロパティマネージャ内では、「接線伝播」オプションを有効にすることで、選択したエッジに連なる部分にも自動的にフィレットを広げることが可能になります。こうした機能を上手に使えば、手動での選択漏れを減らし、効率的な一括処理が実現できます。
それでは、実際の操作ステップを見ていきましょう。
3.1 Step 1: フィレットコマンドの起動
まずはSolidWorksの画面上部にある[フィーチャー]タブを開き、[フィレット]コマンドをクリックします。この時点で「一定半径フィレット」や「可変半径フィレット」のいずれかを選ぶことになりますが、一括処理を行う際には、操作の安定性と作業効率を考えて「一定半径フィレット」を使用するのが一般的です。
コマンドを実行すると、画面左側に「プロパティマネージャ(PropertyManager)」と呼ばれる設定パネルが表示されます。ここではフィレット半径の数値指定、エッジや面の選択、適用範囲の調整など、すべての設定を集中して操作することができます。
なお、ツールバーにフィレットのアイコンが表示されていない場合は、メニューバーの[挿入]→[フィーチャー]→[フィレット/面取り]からもコマンドを呼び出すことができます。必要に応じて、ツールバーのカスタマイズからフィレットを表示しておくと今後の作業がスムーズです。
3.2 Step 2: 複数エッジ・面の一括選択
フィレットコマンドを起動したら、次は対象となるエッジや面をまとめて選択します。基本的な方法は、Ctrlキーを押しながら各エッジをクリックしていくというシンプルなものです。ただし、処理対象が多いときには、効率的な選択ができる「ループ選択」や「部分ループ選択(Partial Loop)」といった機能を活用すると便利です。
ループ選択は、エッジが輪のように連続している形状に対して、一気にぐるりとまとめて選択できる操作です。逆に、部分的にだけフィレットをかけたい場合は、Partial Loopを使うことで、ループの一部を指定することも可能です。
また、エッジ単体ではなく「面」を選択することで、その面に接しているすべてのエッジを一括で対象にできる方法もあります。特定の面を基準にフィレット処理を進めたいときに効果的な手法です。
ただし注意点もあります。形状が複雑すぎる場合、一括で多数のエッジを選択するとフィレット処理が正しく実行されず、エラーが出ることがあります。こうした場合には、エッジのグループを小分けにし、段階的に処理していくことでトラブルを回避しやすくなります。
3.3 Step 3: 半径値の設定と適用
対象のエッジや面を選択し終えたら、プロパティマネージャの[半径]欄に数値を入力して、フィレットの大きさを指定します。このとき入力する半径値は、選択したすべてのエッジに一括で適用されるため、仕上がりに統一感をもたせることができます。
どのくらいの半径にするかは、部品の用途やデザイン、応力の分散具合などに応じて判断する必要があります。たとえば、力のかかる部分ではRを大きく、軽い角取り程度なら小さめの値にするのが一般的です。設計意図に沿った半径設定が、機能性と美観を両立させるポイントです。
また、適用前には「プレビュー表示」を有効にして、実際のフィレットの仕上がりを画面上で確認することができます。意図しない処理や干渉がないかを事前にチェックすることで、ミスの防止につながります。プレビューで問題がなければ、[OK]ボタンをクリックしてフィレットを確定しましょう。
このように、たとえば10か所以上にわたるフィレット処理でも、1回の設定で一括処理が可能となります。特に同じ半径を指定したい場面では、SolidWorksのフィレット一括作成機能は非常に有効です。作業の負担を減らし、スピーディに設計を進めるための大きな助けとなるでしょう。
4. 一括作成がうまくいかないときの原因と対処法
SolidWorksでフィレットを一括適用しようとしたとき、「うまくフィレットがかからない」「エラーが出て適用できない」といった状況に直面することがあります。とくに複雑な形状や多数のエッジを対象にしている場合には、処理が失敗することも少なくありません。
こうしたトラブルには、いくつかの代表的な原因があります。まず考えられるのは、エッジの接合部分が複雑すぎるケースです。たとえば、隣接するエッジ同士の角度が鋭角だったり、複数のフィーチャーが干渉しているような形状では、フィレットの計算がうまくいかずエラーになることがあります。
このような場合には、一括処理の対象を小さなグループに分けて、段階的にフィレットを適用していくのが有効です。つまり、一度にすべてのエッジを処理しようとせず、処理のしやすい箇所から順番にフィレットをかけていくことで、エラーの発生を抑えることができます。
また、フィレットをかけようとするエッジの「カーブの連続性」がうまく整っていないことも、エラーの大きな原因になります。微妙な角度のズレや、滑らかに接続されていないエッジでは、SolidWorksがフィレット処理をうまく認識できないことがあります。加えて、指定した半径が大きすぎると、角のスペースが足りずにフィレットが作成できないこともあるため、半径の見直しも必要です。
さらに注意すべきなのが、すでに作成されているフィレット同士が互いに干渉しているケースです。たとえば、先に適用した大きなフィレットと、あとから追加しようとした別のフィレットが重なり合ってしまうと、処理に失敗する可能性が高くなります。このような場合は、フィーチャーツリー内で既存のフィレットを編集し、まとめて対象エッジを追加するか、処理の順番そのものを見直すことで改善できることがあります。
エラーが発生したときの対処法としては、以下のような対応が効果的です:
- 一括適用の対象を数回に分けて処理する(段階的適用)
- 干渉や計算エラーを起こしそうな部分の形状を事前に修正する
- フィレットの半径を目的に合わせて調整し、適切な数値に見直す
また、SolidWorksではエラーが起きた際にその原因がメッセージとして表示されるため、表示された内容を確認することで、どこに問題があるかを把握しやすくなります。慣れてくると、どういった形状でどのようなフィレットが通りにくいかが予測できるようになり、よりスムーズに作業を進められるようになります。
一括処理は非常に便利ですが、すべての形状に対して万能というわけではありません。フィレットが正しく適用されないときは、形状や操作の流れを一度立ち止まって見直すことが、ミスや無駄な時間を減らす近道になります。
5. 一括フィレット処理で作業時間が短縮できる理由
設計作業の中で、フィレットの指定が多いモデルを扱う場合、一つひとつのエッジを手作業で処理していると、作業時間がどんどん膨れ上がってしまいます。そんなときに有効なのが、SolidWorksの「フィレット一括処理」機能です。この機能をうまく使うことで、設計スピードは大きく向上し、全体の作業効率も飛躍的に高まります。
たとえば、10か所の角にフィレットを適用するとしましょう。個別に1か所ずつ処理していく場合、各エッジの選択や半径の入力、結果の確認などで、1か所あたり1分程度かかってしまうこともあります。結果として、合計で10分以上を要する可能性もあります。
一方、一括処理では、エッジをまとめて選択し、半径値を一度だけ設定するだけで済むため、操作にかかる時間は大幅に短縮されます。場合によっては、同じ10か所の処理が1〜2分ほどで完了することもあり、その差は積み重なると非常に大きなものになります。
さらに、一括処理には時間短縮だけでなく、作業の正確性を高める効果もあります。個別にフィレットを設定していると、うっかり異なる半径を入力してしまったり、処理場所を間違えたりといったヒューマンエラーが発生しやすくなります。その結果、後から修正や確認作業が必要になり、かえって手間が増えてしまうこともあります。
一括で処理することで、同じ設定条件を一貫して適用できるため、フィレットの大きさや形状にばらつきが出にくくなります。結果として、見た目の統一感が保たれ、製品としての仕上がりも整いやすくなるのです。
また、設計段階でフィレットが適切に整っていると、応力集中の緩和や強度向上といった機能的なメリットに加えて、視覚的な美しさも向上します。とくにプロダクトデザインの一貫性を求める場合には、すべてのフィレットが統一された半径で整っていることが、信頼感のある製品づくりに直結します。
このように、フィレットの一括処理は単なる「時短テクニック」ではなく、設計全体の品質や信頼性にも寄与する重要な手法です。SolidWorksを使ううえで、早い段階からこの操作に慣れておくことで、設計者としての生産性と完成度を大きく向上させることができるでしょう。
6. まとめ
本記事では、SolidWorksでフィレットを一括作成する方法について、基本的な手順からエラー時の対処法、そして効率化のメリットまでを詳しく解説してきました。
フィレットは、設計の中で見落とされがちな処理のひとつですが、正しく活用することで部品の強度や加工性、美観の向上に大きく寄与します。とくに複数のエッジや面に対して繰り返し適用する必要がある場合、一括処理の手法を取り入れることで作業時間を大幅に削減でき、入力ミスや処理のばらつきを防ぐことにもつながります。
記事内で紹介したように、「Ctrlキーを使った複数選択」や「ループ選択」、「プレビュー表示による確認」など、SolidWorksに備わっている機能を上手に活用すれば、初心者でも手間なく一括フィレット処理が行えるようになります。これにより、設計の初期段階から統一感のある形状を素早く構築できるため、設計全体の品質とスピードの両方を高めることが可能です。
また、エラーが発生しやすいケースにおいても、原因を理解し、対処方法を押さえておくことで、作業の停滞を最小限に抑えることができます。一括処理は万能ではないものの、フィレット処理に関する基本的な知識と操作スキルを身につけておけば、より複雑な形状にも柔軟に対応できるようになるでしょう。
SolidWorksの操作に慣れはじめた設計者にとって、こうした一括処理のテクニックは、単なる効率化にとどまらず、設計の精度や完成度を高めるための基礎的なスキルとなります。ぜひ今回紹介した内容を日々の業務に取り入れ、作業の質とスピードの両立を目指してください。それが、より良い設計成果を生み出す第一歩となるはずです。
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<参考文献>
FilletXpert – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/c_FilletXpert_Folder.htm
複数のフィレットの作成 – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/t_Creating_Multiple_Fillets.htm