SolidWorksでパーツを1つのフィーチャーにする方法|初心者向け手順ガイド
1. はじめに
SolidWorksでパーツを作っていると、複数のフィーチャー(押し出しやカットなど)を重ねて形状を構築することが多くあります。ところが、作業を続けるうちにフィーチャーツリーが長くなり、モデルが重くなったり編集がしづらくなったりすることはありませんか?
そんなときに役立つのが、複数のフィーチャーを1つのフィーチャーにまとめる方法です。この操作を行うと、履歴がすっきりし、処理速度の改善やデータ軽量化が期待できます。また、外部にデータを渡すときも余計な履歴を隠せるため、互換性やセキュリティの面でもメリットがあります。
本記事では、初心者の方にも分かりやすく、SolidWorksでパーツを1つのフィーチャーにまとめる手順とその仕組み、そして実務で役立つ応用方法までを順を追って解説します。パフォーマンス向上やデータ整理を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
2. SolidWorksとは?
引用:https://www.solidworks.com/ja
SolidWorksは、機械設計や製品開発の分野で広く利用されている3D CADソフトウェアです。直感的に操作できるインターフェースを備えており、多くの企業で標準ツールとして採用されています。押し出しや切り取り、アセンブリなどの3D形状作成機能が充実しており、複雑なモデルでも効率的に設計できます。
作業画面の左側には「フィーチャーツリー」と呼ばれる履歴リストが表示され、ここにスケッチや押し出し、フィレットなどの操作履歴が順番に並びます。フィーチャーツリーを見ることで、どのような工程を経て現在の形状が作られたのかを一目で確認できます。この履歴管理機能は、モデル構造を把握しやすくし、後からの修正や改良を容易にします。
さらに、SolidWorksは外部とのデータやり取りにも柔軟です。STEPやParasolidといった中立フォーマットに変換することで、他のCADソフトとの互換性を確保できます。特に大規模アセンブリや複雑モデルでは、この変換を活用することで、データ破損や互換性のトラブルを減らすことができます。
ここからは、SolidWorksを理解するうえで欠かせない「基本概念」と「フィーチャー」について詳しく見ていきましょう。
2.1. SolidWorksの基本概念
SolidWorksの設計は、パーツ(部品)とアセンブリ(組み立て)を組み合わせて進めます。パーツは、スケッチをもとに押し出しや回転といった操作を行い形状を作ります。そしてアセンブリは、作成した複数のパーツを配置して構成します。
ここで重要なのが、「フィーチャー」という概念です。フィーチャーとは、3D形状を作成・修正するための機能や操作のことを指します。押し出しやカット、フィレットなどが代表例で、これらの操作を積み重ねることで完成形が出来上がります。
SolidWorksでは、各フィーチャーはフィーチャーツリーに順番に記録され、視覚的に構造を把握できます。このため、初心者でもモデルの作り方を追いやすく、設計プロセスを学びやすい環境が整っています。誤った操作をしても、履歴を修正・削除すれば容易にやり直しができるため、試行錯誤を重ねながらモデリングスキルを磨けます。
2.2. フィーチャーとは何か?
SolidWorksにおける「フィーチャー」とは、形状作成や変更のために行う基本操作を指します。たとえば、スケッチを押し出して立体化する「押し出しボス/ベース」、不要部分を切り取る「押し出しカット」、エッジを丸める「フィレット」などが代表的です。
これらのフィーチャーを積み重ねていくことで、最終的な3Dモデルが完成します。フィーチャーツリーを見れば、どのような手順で形状を構築したのかが明確にわかり、設計の流れを追跡できます。
しかし、フィーチャーが増えるとツリーは複雑化し、モデルの処理速度が落ちたり管理が難しくなったりします。そのため、SolidWorksには必要に応じて複数のフィーチャーをまとめる方法や、履歴をシンプルにする機能が備わっています。こうした操作は、設計効率や編集性の向上に大きく貢献します。
3. なぜ1つのフィーチャーにまとめるのか
SolidWorksで複雑なパーツを作っていると、フィーチャーの数がどんどん増えていき、フィーチャーツリーが長く複雑になります。すると、編集作業がしにくくなるだけでなく、パフォーマンスの低下や予期せぬエラーの原因にもなります。
そこで有効なのが、複数のフィーチャーをまとめて1つのフィーチャーとして扱う方法です。こうすることで、データを軽量化し処理速度を上げられるほか、モデル構造をシンプルにして編集性や互換性を高めることができます。特に外部とのデータ交換や、CAM・CAEといった解析や加工の工程においては、この統合によるメリットが顕著です。
ここでは、その効果を2つの観点から詳しく見ていきます。
3.1. ファイルサイズの軽量化と処理速度の向上
最初の大きな利点は、ファイルを軽くし、処理速度を改善できる点です。フィーチャーの数が多いモデルは、その分だけ履歴再計算の負荷が高くなり、メモリ消費も増えます。結果として、モデルの表示や編集が遅くなったり、複雑な操作で固まってしまったりすることがあります。
このような場合、Combine(結合)コマンドなどを使って複数のボディを1つに統合すると、履歴を大幅に減らすことができます。履歴が少ないモデルは計算が速くなり、画面操作もスムーズです。また、Move/Copy Bodiesを活用して事前に位置合わせや不要なボディの整理を行うと、統合作業がよりスムーズになります。
結合後のモデルは、解析や大規模アセンブリの軽量化にも有効です。演算負荷が下がることで、作業効率が向上し、大規模プロジェクトでもストレスを軽減できます。
3.2. モデルの単純化と他のCADソフトとの互換性向上
もう一つの重要な利点は、モデルを単純化することで互換性を高められることです。フィーチャーの履歴をそのまま残したまま他のCADソフトや解析ソフトに渡すと、正しく読み込めなかったり、変換エラーが発生したりする場合があります。
これを回避するには、STEPやParasolidなどの中立フォーマットに変換してから再インポートし、単一のソリッドボディとして扱う方法が有効です。こうすると、不要な依存関係や複雑な履歴情報を削除でき、他のソフトでも安定して扱えるデータになります。
特に、CAMでの加工データ作成やCAEでの解析モデル作成では、形状が単純な方が処理や計算が安定します。統合によって不要な細部や複雑な形状を減らすことで、データの互換性と信頼性を高められるのです。
4. 準備作業と事前の確認
パーツを1つのフィーチャーにまとめる前に、いくつか確認しておきたいことがあります。これらを怠ると、作業中にエラーが出たり、統合後に思わぬ不具合が発生する可能性があります。特に履歴を削除したりフィーチャーの依存関係を解除する操作は、後から形状を細かく変更しづらくなるため、慎重さが必要です。
また、統合処理の途中でSolidWorksが応答しなくなることや、統合後に元データが失われるリスクもゼロではありません。安全に作業を進めるためには、事前の環境チェックとバックアップが不可欠です。ここでは、必要な環境やファイルの準備、そしてフィーチャーツリーの確認ポイントについて説明します。
4.1. 必要な環境とファイル
まずは、使用しているSolidWorksのバージョンが統合機能(CombineやMove/Copy Bodiesなど)に対応していることを確認してください。近年のバージョンであればほぼ問題ありませんが、古いバージョンでは一部の機能が制限されていることがあります。
統合作業はモデルの計算量が多くなるため、十分なメモリとストレージの空き容量も必要です。大きなモデルや複雑なフィーチャー構造を扱う場合、PCの性能が低いと処理が非常に遅くなるか、最悪の場合ソフトが落ちてしまうこともあります。作業前に、SolidWorksの推奨システム要件を満たしているかを確認しましょう。
さらに重要なのがバックアップです。統合によって履歴が消えたり、意図しない形状に変化することがあります。作業前にパーツファイルを必ず別名保存するか、バージョン管理システムを使って保護しておくことを強くおすすめします。これにより、必要になったときに元の状態へ簡単に戻すことができます。
4.2. フィーチャーツリーの状態確認
次に、フィーチャーツリーをよく観察して、モデルの構造やボディの状態を確認します。複数のソリッドボディが存在している場合や、サーフェスモデリングの工程が含まれている場合は特に注意が必要です。
もしボディ同士が接触していない、あるいはわずかな隙間(ギャップ)があると、Combineコマンドは正常に動作しません。こうした場合は、Move/Copy Bodiesで位置を微調整したり、Knit Surfaceでサーフェスを接合してから再度統合を試みると良いでしょう。
また、不要なボディや壊れた参照(エラー表示のフィーチャー)が残っていると、統合時にエラーが発生することがあります。事前に不要なフィーチャーを削除し、依存関係が途切れていないかを確認することで、統合作業が格段にスムーズになります。
統合前のこうした点検作業は、後々のトラブルを防ぐだけでなく、全体の作業時間を短縮する効果もあります。
5. パーツを1つのフィーチャーにする手順
ここからは、複数のフィーチャーやボディを1つのフィーチャーにまとめる具体的な方法を紹介します。代表的な方法は3種類あり、それぞれに適した用途と特徴があります。
- ボディの結合(Combine)を使う方法
- 外部形式に変換してインポートする方法
- Move/Copy Bodies機能を活用する方法
目的やモデルの状態によって最適な手法は異なります。例えば、最終形状をシンプルにしたい場合や、アセンブリ軽量化を目指す場合、あるいは加工や解析用のデータを作る場合など、状況に応じて選びましょう。それでは順に見ていきます。
5.1. ボディの結合(Combine)を使用する方法
最もよく使われるのがCombine(結合)コマンドです。これは複数のソリッドボディを1つにまとめるための機能で、パーツの統合作業に非常に便利です。
- フィーチャーツリーを確認し、結合対象となる複数のソリッドボディが存在するか確認します。不要なボディがある場合は削除するか、位置をMove/Copy Bodiesで調整しておきます。
- メニューから [挿入] → [フィーチャー] → [結合(Combine)] を選択します。
- 「結合タイプ」を選びます。形状を足し合わせる Add、共通部分だけを抽出する Common、指定部分を切り取る Subtract の3種類があり、統合目的に合わせて選択します。
- CombineのPropertyManagerで対象ボディを選択し、必要なオプションを設定します。
- OKをクリックすると、選択したボディが1つのフィーチャーとしてまとめられ、フィーチャーツリーに追加されます。
この方法はシンプルで多くの場面で使えますが、結合後は個別のフィーチャー編集が難しくなるため、必要に応じて元データを残しておくことが重要です。
5.2. インポート機能を使用する方法
外部形式に変換してインポートする方法は、履歴を完全に消して単一ボディ化したいときに有効です。特に、外部CADソフトとのデータ共有や、履歴を不要にした軽量モデルを作成したい場合に適しています。
- まず、パーツを STEP(.stp) や Parasolid(.x_t) などの中立フォーマットでエクスポートします。
- 次に、そのエクスポートしたファイルをSolidWorksで新規に開きます。
- インポートオプションで「フィーチャー認識を行わない」設定を選びます。これにより、履歴なしの単一ソリッドボディとして読み込まれます。
- 読み込まれたモデルは非常にシンプルな構造になっており、軽量化や互換性の向上に役立ちます。編集が必要な場合は、ダイレクト編集ツールを使って形状変更を行います。
この方法は履歴を完全に削除するため、元データを残しておかないと後からの修正が難しくなります。作業前に必ずバックアップを取りましょう。
5.3. Move/Copy Bodies機能の活用
Move/Copy Bodiesは、複数ボディの位置を調整したり複製したりするための機能です。単独では統合は行えませんが、Combineや外部形式変換と組み合わせることで、統合作業をスムーズに進められます。
- 複数のボディを1つにまとめる前に、位置が正しく合っているかを確認します。
- 位置のずれや隙間がある場合は、Move/Copy Bodiesを使って正しい位置に合わせます。必要に応じてボディを複製することも可能です。
- 位置が整ったら、Combineを実行して1つのボディにまとめるか、外部形式にエクスポートして再インポートします。
Move/Copy Bodiesは統合前の準備やモデル配置の調整に非常に有効で、統合エラーを防ぎやすくなります。複雑な形状や複数ボディを扱う場合は、この工程を省略しないことをおすすめします。
6. よくある問題と解決方法
パーツを1つのフィーチャーにまとめる作業は便利ですが、実際には思わぬトラブルが発生することがあります。結合ができなかったり、処理が極端に遅くなったり、統合後に修正が難しくなったりといった問題です。
こうしたトラブルは、あらかじめ原因を理解しておけば、作業中のストレスを大幅に減らせます。ここでは、特によくある3つのケースと、その解決方法を紹介します。
6.1. 結合エラーが発生する場合
CombineやKnit Surfaceを実行した際に結合が失敗する場合、もっとも多い原因は「ボディ同士が正しく接触していない」ことです。わずかな隙間(ギャップ)や、形状同士の干渉があると、SolidWorksは正常に結合できません。
対策としては、まずMove/Copy Bodiesを使って位置を再調整し、ボディ同士を正しく接触させます。サーフェス間のギャップがある場合は、Knit Surfaceでエッジを接合してから結合を試みると成功率が上がります。
また、複雑な形状の場合は、一度外部形式(STEPやParasolid)にエクスポートし、再度読み込むことで不要な参照関係をリセットできることがあります。こうすることで、内部的なジオメトリ不整合が解消され、結合可能になるケースもあります。
6.2. パフォーマンスの問題
統合処理はモデルの構造や大きさによっては非常に重くなり、SolidWorksの応答が遅くなることがあります。特に、大規模モデルや複雑なフィーチャー構造を統合する場合は、計算に時間がかかるだけでなく、フリーズやクラッシュが発生することもあります。
こうした場合は、統合前に不要なボディやサーフェスを削除して形状を簡略化しましょう。さらに、フィーチャーフリーズバーを使って計算不要な上位フィーチャーを一時的に無効化すると、処理負荷を抑えられます。
また、PCのスペックが原因であることも多いため、メモリ増設やSSD化などハードウェア面の強化も効果的です。アセンブリ軽量化や、部分モデルを分割して統合する方法も検討すると良いでしょう。
6.3. 元に戻したい場合の対処法
統合後に形状を修正したくなることは珍しくありません。もしCombineコマンドで統合した場合は、フィーチャーツリーから結合フィーチャーを削除することで、元の複数ボディ構成に戻せることがあります。
ただし、外部形式変換で統合した場合は履歴そのものが失われているため、元に戻すことはできません。この場合はダイレクト編集ツールで形状を直接修正するしかありません。
このリスクを回避するためには、統合前に必ず別名で保存しておくか、リビジョン管理を活用することが重要です。そうすれば、万が一の際にも以前の状態へすぐに戻すことができます。
7. 応用テクニックと注意点
フィーチャー統合は単なるデータ軽量化や履歴簡略化にとどまらず、設計効率や品質向上にもつながります。しかし、やり方を誤ると統合後の修正が難しくなったり、予期せぬ不具合が生じたりすることもあります。
ここでは、統合をより効果的に活用するための効率化のコツと、モデル品質を保つための注意点を紹介します。
7.1. 効率化のコツ
まず、統合作業に入る前にフィーチャーツリーを整理することをおすすめします。不要なスケッチや使われていないボディが残っていると、Combineや外部形式変換の際に混乱やエラーの原因となります。
また、外部CADとのデータ交換を予定している場合は、統合前に形状の整合性を必ず確認しましょう。エッジに隙間がないか、スケッチ参照が切れていないかなどをチェックしておくと、統合時や変換後のトラブルを未然に防げます。
統合後の用途も意識することが重要です。例えばCAMでの加工やCAEでの解析を想定している場合、統合時に不要な細部を簡略化することで後工程の処理がスムーズになります。こうした事前準備を行うことで、統合作業全体が効率的になり、後戻りの手間も減らせます。
7.2. 品質向上のポイント
モデル品質を高めるには、統合前に形状精度をしっかり整えておくことが不可欠です。特にサーフェスを含む場合は、位置関係を正確に合わせ、ギャップや重複を最小限に抑えましょう。Knit SurfaceやThickenを使用する場合は、境界条件の設定を丁寧に行うことで仕上がりの精度が向上します。
また、解析やシミュレーションを行う場合は、フィレットや面取りといった細部の処理にも注意が必要です。雑な仕上げは統合後の形状崩れや計算エラーの原因になるため、統合前に適切な寸法や形状で整えておきましょう。
さらに、統合後のモデルは必ず表示と寸法を確認し、不要な形状変化が発生していないかチェックします。こうした工程を踏むことで、統合によるメリットを最大限引き出しつつ、品質の高いモデルを維持できます。
8. まとめ
SolidWorksで複数のフィーチャーを1つにまとめることには、多くのメリットがあります。履歴を簡略化してファイルを軽量化できるだけでなく、処理速度の向上や作業の安定化、さらに他のCADソフトや解析ツールとの互換性向上にもつながります。特に大規模なアセンブリや複雑なモデルでは、その効果を実感しやすいでしょう。
統合の方法も一つではありません。Combine(結合)コマンドを使った直接的な統合、外部形式への変換と再インポートによる履歴削除、Move/Copy Bodiesを活用した事前の位置調整など、状況や目的に応じて使い分けることができます。また、場合によってはフィーチャーフリーズやダイレクト編集といった機能を組み合わせることで、さらに柔軟な作業が可能になります。
ただし、統合後は個別フィーチャーの編集が難しくなったり、履歴が完全に失われたりすることもあります。作業前には必ずバックアップを取り、必要に応じてリビジョン管理を活用しましょう。こうした準備を怠らなければ、統合作業によるリスクを最小限に抑えられます。
今回紹介した手順や注意点を押さえておけば、SolidWorksでのパーツ設計やデータ管理がより効率的になり、加工・解析・データ共有など幅広い場面での活用がスムーズになります。ぜひ日々の設計業務に取り入れ、統合のメリットを最大限に活かしてください。
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<参考文献>
ボディの組み合わせ(Combine Bodies) – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/c_combine_bodies.htm
ボディの移動/コピー (Move/Copy Body) PropertyManager – 2025 – SOLIDWORKS ヘルプ
https://help.solidworks.com/2025/japanese/SolidWorks/sldworks/HIDD_DVE_FEAT_MOVE_SURF.htm
インポートしたジオメトリの修復 | MySolidWorks Training
https://my.solidworks.com/training/master/283/repairing-imported-geometry
3次元設計と製品開発ソリューション