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BIMとは?CADとは違う?建築の未来を担うBIMについて徹底解説

日本におけるBIM元年といわれる2009年以来、建築設計に革新をもたらすともてはやされてきたBIMですが、BIMについて詳しく知りたくても関連書籍も多くはなく、身近なところでBIMによって設計されたという建物を見かけることも少ないというのが実情かもしれません。

BIMとはそもそもどんなもので、有用なものであるならなぜ普及していないのでしょうか?

この記事を読むと以下の3つのことがわかります。
1.BIMとは何なのか
2.BIMのメリットとデメリット
3.BIMの将来性

 

建築を大きく変える可能性をもつBIM

 

BIM(Building Information Modeling)とは、建築設計に必要な詳細かつ多岐にわたる属性データを持つ3次元モデルによる建物の統合データベースです。
コンピューター上にバーチャルな建築物を構築しながら設計するというBIMの手法により、施工から維持管理、また避難計画なども詳細にシミュレーションする新しい設計方法が可能になります。

BIMによって「膨大な量の図面や表などのデータを統合して一つの建物を作る」という従来の設計方法から「一つの統合データベースから一つの建物を作る」という設計方法に変化します。
現在でも実際の施工現場では2次元の図面が必要なことに変わりはありませんが、BIMで作成される「膨大な情報を持つ1つのデータベース」を活用すれば、構造設計者であれ設備設計者であれ「1つのBIMデータ」から必要に応じて常に相互に整合性の取れた図面や数量表を出力することが可能です。

また仔細なデータに基づくシミュレーションを可能にするBIMによって「設計」の意味も広がり、建物の形状や構造といった「完成までの設計」だけではなく、完成後の税金・光熱費・解体などの費用も視野に入れた長期的なファシリティ・マネジメントの計画を「設計」に含められるようになります。

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BIMとCADとの関係

 

BIMとは3次元モデルの形状情報に室面積、素材の種類・性能、コストといった情報を加えたものであり、基本的にBIMのベースとなる3次元の建造物の形状情報は3DCADで作成されます。
ごく簡単に言えば「3DCAD+属性データ=BIM」とも説明できるでしょう。

「BIM」は建物の統合データベースを指す言葉であり「CAD」のようにソフトウェアを指す名称ではありません。
しかしながらBIMは3DCADの設計手法を土台としており、現在BIMに広く使用されているソフトウェアの多くはCADのベンダーにより開発されています。
そのため、ほとんどの場合「BIMソフト」とは実際には「BIM対応CAD」であり、3DCADに精通した設計者やオペレーターであれば新たにBIMに取り組む際にも対応しやすいでしょう。

世界的に高いシェアを誇っているBIMソフトウェアにはグラフィソフト社の「ArchiCAD」やオートデスク社の「Revit」などがあります。

BIMツールの代表格Revit AutoDesk ソフトウエアとの親和性も大きな魅力

 

BIM導入で実現する「可視化」のメリット

 

建築設計へBIMを導入することによって得られるメリットは枚挙にいとまがありませんが、今回は特に「可視化」というキーワードで説明できる特筆すべき下記のような特長について説明します。

 

1.完成像を可視化

 

大規模な建築プロジェクトであれば、設計段階からクライアント・デザイン監修者・設計業者・施工業者、さらに各分野の下請け業者まで非常に多くの企業や作業者が関係するようになります。

そのような場合、関係者が相互に情報を共有するのは容易ではありませんが、BIMによる設計で作成されるのはあくまで「膨大な情報を持つ1つのデータ」であり、3次元モデルをベースとしているため視認性も高く各担当者の伝達力・理解力の巧拙にかかわりなく関係業者間で常に最新かつ同一の情報を共有することが可能です。

また、建築に関する専門知識をもたないクライアントに建築プロジェクトの詳細なデザイン・工法・工期や進捗状況について説明する際にも建築模型や複雑なプレゼン資料を必要としないため、コミュニケーションを取るのが容易になります。

 

2.法律上の制限を可視化

 

BIMと外部のシミュレーションソフトを連携させれば、建築を行なう上で避けることのできない法律上の制限も可視化することができます。
たとえば建築設計は斜線規制や天空率などの目に見えないさまざまな法的制限に縛られていますが、BIMではそれらの制限を可視化し、建築基準法に適合しているかどうかを逐一確認しながら設計を進められます。

BIM設計で日本国内での建築基準法への対応を重視する場合は、福井コンピュータアーキテクト社の「GLOOBE」など国産のBIM対応ソフトを選択するとよいでしょう。

 

3.熱・人の動きなどの付加的な要素を可視化

 

さらなるBIMデータの応用として、CFD(数値流体力学)を活用した「熱流体解析」があります。
空気や水などの流体による熱の分布や建物の熱貫流などを解析し、空調設備の適切な設計や住環境の快適性の向上に役立てることができます。
BIMと連携してこのようなシミュレーションを行えるソフトウェアには、アドバンスナレッジ研究所の「FlowDsigner」や環境シミュレーション社の「WindPerfect」などがあります。

また、BIMデータを活用して商業施設や大型集客施設における災害時の人々の動線を再現し、避難経路や避難にかかる所要時間のシミュレーションを行なうことも可能になっています。

 

設計上のエラーを可視化

 

設計上のエラーは発見が遅れれば遅れるほど修正に手間がかかりコストも跳ね上がるというリスクがあるため、生産性を向上させるためにはエラーを可能な限り早く発見して修正することが必要です。

早期発見すべき設計上の重大なエラーの一つに「干渉」があります。
施工段階で干渉が見つかった場合には無駄な手戻りや大きなコストが発生してしまうため、施工前にモックアップ(模型)を作成することもありますが、モックアップ作成にも費用や時間がかかってしまいます。

BIMでは干渉を早期に、そして簡単に発見することが可能になり、時間やコストをムダにすることが少なくなります。

 

BIMの問題点

 

BIM導入のハードルの高さ

 

BIMという膨大な容量のデータをリアルタイムで複数のオペレーターが編集するためには、ソフトウェアの導入だけでなくハードウェアも刷新したり、新たに高速なネットワークを構築したりすることが必要になる可能性もあります。

またBIMに習熟した責任者やオペレーターを育成したり新たに雇用したりするコストも併せて考えれば、BIM導入のハードルは決して低くないのが現状です。

 

著作権・ミスの責任の所在が曖昧

 

BIMが持つデータの総量は膨大であり、ほとんどの場合にかなりの人数で分業化してBIMデータの設計・編集を行うことになりますが、作成されたBIMデータの著作権は誰に帰属するのかは現在のところ曖昧と言わざるを得ません。

また複数人でデータを編集する際に発生したミスが施工段階まで見過ごされ、後々に多額の損害が発生するといった場合には誰が責任を追うのか、仮に一人のオペレーターのミスで大規模な損害が発生した場合にはオペレーターが責任を追うのか、ミスのあるデータを承認したBIMマネージャーが負うのか、などが不明瞭であるという問題もあります。

 

BIMと建築のこれから

 

2000年からBIMの実証プロジェクトが動いていたフィンランド、2007年にはBIMのガイドラインを制定していた米国、2013年からBIMを主眼に置いて建築確認申請に関する法律の改正に着手していたシンガポールなどの例と比較しても、日本におけるBIMへの対応はさほど進んでいません。
中小企業が大半を占める日本の建築業界ではBIM導入に多額のコストと時間をかけるメリットが見えにくいため、業界全体の“BIM化”は民間からの自発的な発生を期待することは難しいのが現状です。

とはいえ、日本では国土交通省による「BIMガイドライン」が制定された2015年以降、まずは公共事業から政府主導でBIM化を目指すという動きも見られますし、2018年には1件のRC造戸建住宅がBIMデータを利用して確認済証の交付を受けることに成功しています。

日本でのBIM普及への道のりはまだまだ長いかもしれませが、大いに注目に値する分野であることに変わりはないでしょう。

 

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