竹中工務店のBIM技術がすごい!Revitで“2800か所ノーミス”施工
この記事を読むと以下の3つの事がわかります。
①竹中工務店が施工でノーミスを達成した背景
②竹中工務店のBIM活用状況について
③BIMソフトでできることやメリットについて
大手ゼネコンである竹中工務店は、BIM先進国であるシンガポールで栄えある賞を受賞しました。
竹中工務店はBIMソフトをかなり活用しており、国内でも有数のBIM先進企業と言えます。竹中工務店が利用しているBIMソフト「Revit」を始め、BIMソフトのメリットや竹中工務店の快挙についてご紹介します。
竹中工務店がBIMソフトで大躍進
大阪に本社を持つ「竹中工務店」は、国内でも有数のゼネコンです。
シンガポールでBIMアワードを受賞
竹中工務店が手掛けたシンガポールビルが、2016年に「BIMアワード」で最優秀賞であるプラチナ賞を受賞しました。
竹中工務店はシンガポールと協力して、オフィスビルである「キャピタルグリーン」を設計したのですが、その施工においてBIMを活用したという点で評価されています。
キャピタルグリーンは、画像のように複雑なデザインが特徴で、シンガポールと東京を行き来しながら設計されました。
引用元:日経クロステック BIMアワード最優秀!竹中らが「キャピタグリーン」施工で
キャピタルグリーンの屋上部には外気を取り入れる部分がありますが、花びらのような形をしたとても複雑なものです。この複雑なデザインでBIMを活用していて、見た目もとてもインパクトがあるデザインに仕上がっています。
シンガポールはBIM先進国
竹中工務店の受賞がなぜすごいかというと、BIMアワードを開催しているシンガポールは日本よりずっとBIM化が進んでいて、すでに多くの建築現場で活用されているからです。
・2013年からはBIMの確認申請を義務化
日本ではまだ実例の少ないBIMによる確認申請ですが、シンガポールではすでに2013年からBIMでの申請が義務化されています。
シンガポールが確認申請のBIMを義務化したのは2013年で、その後以下のように広まっています。
・2013年:20,000㎡以上の意匠設計のみBIMで確認申請
・2014年:意匠設計に限らず、構造設計・設備設計もBIMで確認申請
・2015年:5,000㎡以上の意匠・構造・設備設計をBIMで確認申請
日本では、まだ義務化に至っていません。BIMの確認申請だけで見ると、シンガポールに比べてすでに7年以上遅れているという計算になります。
BIMソフト「Revit」で2800か所をノーミスで施行
竹中工務店はキャピタルグリーンのBIM設計だけではなく、BIMを活用して大量の干渉チェックも行いました。
干渉チェックはBIMソフトである「Revit」をメインとしています。
Revitの効果はすごいものです。部材の準備段階で鉄骨におよそ2800か所もの穴をあけたのですが、3Dモデリングのおかげでエラーが1つも発生していません。※1
さらにRevitを活用した干渉チェックの結果は、従来に比べると以下のように素晴らしいものとなりました。
・構造および設備チェックにかかった時間…17%減/1フロア
・干渉の防止…初期段階から90%以上を防止
手戻りが多く大きなロスを発生させる「干渉」を90%も防げることは、かなり大きなメリットです。
3Dモデリングで干渉チェックもできる
BIMモデルは3Dデータを使うためあらゆる角度からチェック可能で、紙よりもずっと干渉部分を見つけやすいのです。
3Dモデリングを行うと、ドアやサッシ、壁といったパーツ1つ1つが情報を持ちます。そしてパーツ同士でデータが連動しているので、1つのパーツを変えると他の部分も自動修正されるのです。
このBIM技術は、特に2DCADを使っている人に感動を与えることでしょう。
BIMデータは2Dデータを持たないため、修正が発生しても「2Dデータを修正→影響する他のパーツも修正」という手順を丸ごとカットでき、正確な修正作業を効率的に行えます。
竹中工務店はRevitを中心にBIMソフトを活用している
竹中工務店はRevitを使った干渉チェックで大きな成果を上げました。そのRevitは国内でも多く使われています。
BIMソフトの定番「Revit」とは
BIMソフトとして大きなシェアを誇っているRevitは、アメリカのオートデスク社が開発している3DCADソフトウェアです。
オートデスク社はCADで有名なAutoCADをはじめBIM/CIMソフトウェアを多く開発しており、国内のゼネコンも多数導入しています。
Revitは3Dモデリングの他に施工管理や意匠向けツール、データ共有などBIMに必要な機能が揃っています。だから設計~施工までワンストップで使えるという点が高く評価されたソフトウェアなんです。※2
竹中工務店はBIMソフトを組み合わせて使っている
BIMに必要な機能がそろったRevitですが、竹中工務店はそんなRevitを中心として、様々なソフトウェアを活用しています。
以下は、竹中工務店がBIM目的で導入しているソフトウェアです。
l Sim Trend:火災時の避難シミュレーション
l Unity:シミュレーション状況をリアルに可視化
l Navisworkd:監視カメラの画角や映り具合をシミュレーション
l VICO Office:BIMモデルで施工管理を行えるソフト
BIMソフトを使えば、設計だけではなく建物のシミュレーションまで行えます。だから建築前に設計ミスに気づきやすく、効率的に、そして安全な建築作業が行えるのです。
竹中工務店の作業では、建築現場にBIMソフトがインストールされてiPadを持ちこむこともあります。iPad内でシミュレーションされたモデルと実際の建物を見比べ、進捗管理を行うことでより効率化を目指しているのです。
BIMソフトでできること
Revit以外にもBIMソフトはありますが、できることをまとめると以下のようになります。※3
・3Dモデリングを設計できる
・パーツ1つ1つに情報を与えるので、後からの修正が容易になる
・3Dモデリングを活用して干渉チェックが行える
・より精巧なシミュレーションモデルを使い、関係者や住民にプレゼンできる
・関係者と必要なデータを共有しながら作業を進められる
上記全ての機能を持つBIMソフトもありますし、一部だけのものもあります。自社の運用方法に合うものを見極め、最適なものを選ぶようにしましょう。
竹中工務店のBIMソフト活用は止まらない
竹中工務店はBIMソフトの導入にかなり力を入れています。BIMソフトの導入に限らず、BIMソフトを改良して世界中で推進しようとしています。
GRAPHISOFTとの連携も発表
竹中工務店は2018年、GRAPHISOFT社と戦略的パートナーシップを結んだことを発表しました。※4
GRAPHISOFTといえば、BIMソフトとしてRevitと同じく“人気どころ”のArchiCADを開発している会社です。Macでも使えるArchiCADはMacユーザーに支持されていて、CADでいう「レイヤー」の概念を色濃く残しています。
RevitとArchiCADの違いについては、こちらで詳しく解説しています。
「1級建築士が語る!「ArchiCAD」と「Revit」の違いを徹底解説」
竹中工務店はGRAPHISOFTとの戦略的パートナーシップによって、世界中にBIMを推進する取り組みまで始めるのです。
“戦略的パートナーシップ”で共同作業を実施
竹中工務店はGRAPHISOFTとの契約で、GRAPHISOFT製品群すべてで「BIMソフトの改善」を行います。
GRAPHISOFTが開発ロードマップを竹中工務店に見せ、竹中工務店のノウハウや実践知識をGRAPHISOFTに反映させます。
つまり世界的にメジャーなGRAPHISOFT製品が、“竹中仕様”となっていくのです。これはかなり前衛的な取り組みであり、BIM導入に対する竹中工務店の本気度が窺えますね。
建築のIT化ともいえるBIM/CIMの導入状況では、日本は遅れています。しかし竹中工務店のような大手ゼネコンが主体的に動けば、もっと現場にもBIM化が浸透するかもしれませんね。
参照
※1:日経クロステック「BIMアワード最優秀!竹中らが「キャピタグリーン」施工で」
https://xtech.nikkei.com/kn/atcl/knpcolumn/14/546679/031100021/?P=3
※2:Revit公式サイト
https://www.autodesk.co.jp/products/revit/overview
※3:BIMナビ「BIMと3D CADとの違い」
https://www.cadjapan.com/special/bim-navi/know/difference.html
※4:GRAPHISOFT公式サイト「竹中工務店とGRAPHISOFT SE / GRAPHISOFTジャパン 戦略的パートナーシップを締結」
https://www.graphisoft.co.jp/info/press/2018/20181122_takenakacorporation_agreement.html
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