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建築工事の中間検査をリモートで行う?BIMやARを活用した事例について

新型コロナウイルスの感染拡大が契機となって、社会の様相が大きく変化しました。そんな中、働き方の選択肢の1つとしてリモートが急速に普及するとともに、リモートの長所も広く認知されていきました。それは対面で行うのが当然だと考えられてきた建築工事の現場においても例外ではありません。
この記事では建築工事における中間検査のリモート化についてご紹介します。
 
この記事を読むと以下の3つのことがわかります。

  1. 中間検査とは
  2. BIMデータとARを活用した中間検査におけるリモート化システム
  3. 確認検査支援システム

中間検査とは

中間検査とは、建築確認と完了検査とともに、建設中の建物が建築基準法などの法令に適合しているかを確認するための審査の1つとなっています。

中間検査は特定工程が終了した時点での審査であり、検査の対象は敷地や接道、建築物の配置などの、検査の段階で確認申請書との整合と建築基準法への適合が判断できる部分となっています。
中間検査について詳しくは建築基準法第7条の3に規定されています。

リモート中間検査システム

2022年4月、清水建設は、積木製作の協力により、建築確認で利用したBIMデータ(確認申請BIM)やAR(拡張現実)技術、リアルタイムでの映像伝送技術を活用したリモート中間検査システムを開発し、一般財団法人日本建築センター(BCJ)とシステムの有効性を検証しました。
建築確認に利用した「確認申請BIM」を、AR技術とリアルタイムでの映像伝送を使ってそのまま中間検査に活用する仕組みとなります。
このシステム開発は、BCJと推進しているBIMデータを活用した一連の建築確認申請業務の効率化の一環であり、建築基準法が定める現場での目視検査と工事監理状況等の書類検査の効率化と確実化が期待されます。*1

リモート中間検査システムの概要

このリモート中間検査システムは、BIMデータをリアルタイムで3D可視化する「Unity Reflect」、AR技術を活用して新たに開発した確認検査システム、AR画像を遠隔地に伝送する「クラウド映像転送システム」からなります。
このシステムは構造部材の検査をターゲットにしています。

機能としては、以下の4つを支援するための機能があります。

  1. 部材の形状情報の整合確認
  2. 部材の性能情報の整合確認
  3. 施工状況の確認
  4. 書類検査

これらを支援する機能は具体的には次の写真のようなものです。

(引用:https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022008.html

タブレットの画面に検査に必要な画像データ(BIMデータ、2次元の写真群データからフォトグラメトリーによって生成した3Dモデル)、書類データ(BIMデータのパーツにひもづけた写真、帳票)を表示し、それを検査員が目視で確認・検査することと、タブレットの画面情報をリアルタイムに遠隔地と共有できることが特徴となっています。

リモート中間検査システムの活用・展望

それでは、このシステムを用いてどのように実際の中間検査が行われていくのか説明します。

  1. 部材の形状情報の整合確認では、構造部材のリアルタイム画像の上に該当箇所のBIMの三次元画像を重ねたAR画像をタブレット上に表示します。
  2. 部材の性能情報の整合確認では、AR画像に写っている特定の部材をタップすることで、その部材の性能に関するBIMデータ及び検査報告書データを表示します。
  3. 施工状況の確認では、フォトグラメトリー(被写体をさまざまなアングルで撮影し、その写真を分析・統合することで3DCGモデルを生成する技術)により生成した3Dモデルをリアルタイム映像に重ねて表示します。
  4. 書類検査では検査対象の部材パーツにひもづけた写真や検査帳票などの書類データを表示します。

このようにタブレット端末の画面に中間検査に必要なすべてのデータが表示されるので、検査員による検査の確実性が増し、設計者の検査対応業務も効率的になります。

タブレット画面を共有することでリモートでの検査が可能となるので、将来的には現場に来る工事管理者・施工管理者や検査員の人員削減が期待できます。実用化されれば、建築基準法に規定されている現場での目視検査や工事監理に対する書類検査の効率化に役立つでしょう。
今後は完了検査のリモート化に向けて、建築仕上げや建築設備に対応したシステムを開発することを目指しているそうです。

確認検査支援システムとは

2022年10月、清水建設は日本建築センター(BCJ)の指導の下、指定確認検査機関が行う建築確認の中間検査や完了検査のリモート化を支援する確認検査支援システムを開発し、BCJとその有効性を検証しました。このシステムは、リアル・リモートを問わず、中間・完了検査や通常の施工管理、設計者が行う工事監理業務にも展開できるので、確認検査業務の大幅な効率化が期待されます。*2

清水建設は2020年から確認申請に用いるBIMデータを活用した建築確認業務の効率化に取り組んでおり、第一弾がBIMデータを活用した建築確認システムの開発、第二弾が先ほどご紹介したBIMデータとARを活用した中間検査におけるリモート化システムの開発で、この章でご紹介する確認検査支援システムが第三弾になります。
 

確認検査支援システムの概要

この確認検査支援システムは、3次元レーザースキャナー「LiDARスキャナー」とUnity製のゲームエンジン「Unity Reflect」を搭載しています。

BIMデータと建物をレーザースキャンした3次元点群データの2つを検査対象部分の画像上に取り込み、タブレットに表示されるAR画像の視認性を向上させたことにより、躯体を対象とする中間検査だけでなく、仕上げや設備機器までもをターゲットとした完了検査もすることが可能になりました。BIMデータと3次元データを組み合わせたのは、奥行き方向の前後関係をAR画像に反映させるためです。
さらに、一連の確認検査に使うAR画像はテレビ会議システムや5G映像伝送システムによってリアルタイムで情報共有できるので、遠隔地からでも現場で行う中間検査・完了検査に参加できます。

確認検査支援システムの活用・展望

高度なAR画像の実現によって3次元点群データとBIMの形状で生じるズレのうち、許容値から外れた部分の可視化や、現実では見えない道路斜線や隣地斜線、避雷保護範囲などの携帯制限空間を見える化した整合確認、視点を自由に置いた検査などが可能になりました。

清水建設ではこの確認検査支援システムの活用を指定確認検査機関に提案することで建築確認検査のDX化を一足早く達成し、建設現場で収集した360度画像とこのシステムの連携により、設計の工事管理や施工管理業務までもDX化を進めていく予定です。
 

まとめ

2022年5月、国土交通省は各指定確認検査機関に「デジタル技術を活用した建築基準法に基づく完了検査の立ち会い遠隔実施について」を通知しました。*3
これによると、リモートでの完了検査はまだ小規模建築物しか対象としておらず、工事管理者・施工管理者である受験側の少なくとも一人が現場参加する必要があるものの、国土交通省がリモート作業の奨励をしたことで、より一層検査業務のDX化が加速することが予想されます。

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参考文献
*1 清水建設「指定確認検査機関による建築工事の中間検査をリモート化」
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022008.html

*2 清水建設「建築確認にともなう中間・完了検査のリモート化を支援」
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2022/2022048.html

*3 国土交通省「デジタル技術を活用した建築基準法に基づく完了検査の立ち会い遠隔実施について」
https://tokyokenchikushikai.or.jp/jigyo_event/20220510kokosyo.pdf

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