Revit2021から搭載された「ジェネレーティブデザイン」とは?
この記事を読むと、以下の3つのことが分かります。
1.Revitにおけるジェネレーティブデザインの概要
2.Revitでジェネレーティブデザインが使える条件
3.Revitのジェネレーティブデザインの事例
Revitに搭載されているジェネレーティブデザインは、機械学習によってアイデアを自動生成してくれる機能です。人間のデザイナーのサポーターとしてさまざまな提案をしてくれることで、より設計やデザインの幅を効率化してくれます。
この記事ではRevitのジェネレーティブデザインについて、使用できる条件や使い方を解説します。国内企業の事例もご紹介しますので、自動生成やジェネレーティブデザインについて興味がある方はぜひ最後までお読みください。
Revit2021から搭載された「ジェネレーティブデザイン」とは
Revit2021から搭載されているジェネレーティブデザイン。ジェネレーティブとはコンピューターによるデザインの自動生成のことであり、昨今話題の自動生成系ツールの1つです。
ジェネレーティブデザインでは、入力したパラメータに基づき自動で複数のアイデアを生成してくれます。機械学習技術が搭載されているため無数のデザインからパターンなどを学習した上でデザインを提案することができ、よりデザインの最適化に貢献してくれる点が大きなメリットです。
Revitのジェネレーティブデザインでは、質量や強度、柔軟性に関する制約も適用されます。コスト面も配慮した生成を行えるので、コスト削減の面からも大変有益です。
Revitに搭載されているようなジェネレーティブデザインを活用できれば、今まで人間にしかできなかったアイデアの生成まで自動化することができます。
Revitでジェネレーティブデザインを使う条件
Revitに搭載されているジェネレーションデザインは、すべてのライセンスで使えるわけではありません。具体的には以下のライセンスを持ったユーザーのみが、ジェネレーティブデザインを利用できます。(※1)
- Autodesk ArchitectureおよびEngineering, & Construction (AEC) Collectionライセンスのサブスクリプションメンバー
- Enterprise契約(EBA)を結んでいるユーザー
- 教育ライセンスの保持者
- オートデスクデベロッパーネットワーク(ADN)のメンバーシップ保持者
- Dynamoユーザー
4番目のANDについては、組織のADNサイト管理者が申請することで取得できます。またDynamo(ダイナモ)とはRevitの操作を自動化できる、ビジュアルプログラミングツールです。
Dynamoについては図解!DynamoとRevitの連携でできることの3事例を紹介 で解説しておりますので、ぜひご参照ください。
Revitにおけるジェネレーティブデザインの使い方
Revitにおけるジェネレーティブデザインの使い方は、以下の通りです。
Revitの[管理]タブから[ジェネレーティブデザイン]パネルをクリックする
[スタディを作成]を選択してスタディタイプを選択して、目標とスタディ基準を定義する。定義できたらスタディを開始して、設計の代替案を生成する
代替案を生成したら[成果を検討]ダイアログを開き、設計の代替案を検討する。特定の基準があれば各フィルタを適用して選択肢を絞り込む
最適なアイデアが見つかったら、選択してモデルに統合する
Revitでジェネレーティブデザインを使うメリット
Revitは公式サイトにて、ジェネレーティブデザインを使うメリットについて以下の通り解説しています。(※2)
- コスト削減
- パフォーマンスの強化
- 人間のデザイナーを支援する
- 部品の統合ができる
- サステナブルな製造活動ができる
ジェネレーティブデザインはさまざまな分野で導入が進んでいますが、どの業界でもメリットとなるのがコスト削減です。例えば金属やプラスチックの部品でデザインする場合、ジェネレーティブデザインであれば、構造的な強度や完全性を保ったまま、より少ない材料で設計を行うことができます。
さらにジェネレーティブデザインなら、形状やサイズを保持したまま性能を向上させる提案が可能です。そのため余剰部分の除去に限らず、新しい形の提案や並べ替えをしてみたり、全く違う材料を使ったりといったパフォーマンス強化に直結します。
ジェネレーティブデザインなどAIが搭載された技術は、「人間の仕事を奪う」といわれがちです。しかしRevitのジェネレーティブデザインは人間の代わりではなく、あくまでも支援やサポートといった立場にすぎません。オートデスクは公式ブログで“腕の立つ実習生のようにデザインを新たな方向へ導く”と表現しており、忙しさで参っているデザイナーを支援するものと明言しています。
複数コンポーネントを単体部品へと統合することもでき、組み立てコストの削減ができ、製造途中の廃棄物を減らせることからサステナブルな製造にも貢献してくれるのです。
ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違い
CADソフトのユーザーなら、トポロジー最適化をご存じの方が多いでしょう。ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化は似ているようですが、それぞれの働きは違うものです。
トポロジー最適化とはCAD上の3Dモデルに対して最適化計算を行うものです。トポロジー最適化では主に引き算的なアプローチとなり、3D設計の中で可能な限り材料をそぎ落とすことで最適化へと導きます。その結果、無駄のない効率的な形状を実現してくれる技術です。
ジェネレーティブデザインとは形状をコンピューターが自動生成できる技術です。システム要件やユーザーが指定した制限の中で、より要件に近いデザインを複数提案してくれます。より解決策に近いものを提示するため、引き算的なアプローチに限らず、時にはユーザーが思いもよらなかったデザインを出してくることもあります。
どちらもコンピューターが3Dモデルについて考えてくれる点は共通ですが、上記のように大きな違いがあります。ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化については、注目を集めるコンピューターによるデザイン ジェネレーティブデザインとトポロジー最適化の違いとは でも解説しておりますのでぜひご参照ください。
【製造・建築業】ジェネレーティブデザインの事例
最後に、国内におけるRevitのジェネレーティブデザインの事例を2つご紹介します。
トヨタはシートの軽量化でジェネレーティブデザインを採用
トヨタはRevitのジェネレーティブデザインを活用して、シートの軽量化と薄型化を行いました。(※2)
一般ユーザーが目にすることはない部分ですが、成人を支える強度を保ちながらデザインを大幅に変更しなければならず、想像よりも大変な作業です。さらに新しいシートでは電子制御やヒーターといった機能が搭載されており、従来よりも大型で重さもあり、デザインは複雑性を増していました。
Revitのジェネレーティブデザインを採用したところ、非常に有望な結果が出ています。シートフレームの軽量・薄型化だけでなく、同社では他のコンポーネントを見直すロードマップにもなっています。
大和ハウス工業は集合住宅計画にジェネレーティブデザインを活用
大和ハウスはジェネレーティブデザインを活用し、都市化が進行する日本の状況にマッチする、狭い土地での最高の小規模開発を判断できる支援を行っています。(※3)
大和ハウスの場合、ジェネレーティブデザインを最初に使っているのはデザイナーではなく、営業スタッフです。営業スタッフがジェネレーティブデザインで顧客にプロジェクトを提案し、顧客が提案を受け入れた場合、設計チームへ渡します。この営業チームから設計チームへの受け渡しの際に、大幅な変更がないことが重要な課題です。
大和ハウスはRevitのジェネレーティブデザインで営業・設計の両方をサポートすることを目指しています。ジェネレーティブデザインによるツールを営業スタッフが操作できることで、必要な時に結果を出してお客様へすぐにプレゼンできます。
現在大和ハウスでは特に若手の営業スタッフの育成トレーニングでの活用を目指しており、トレーニングに係る大幅なコストの削減に有効として開発が進んでいる段階です。
Revitのジェネレーティブデザインについて、使い方や使える条件、事例をご紹介しました。機械学習を取り入れたジェネレーティブデザインは、人間が指定した条件下でさまざまなアイデアを提案してくれます。
時には人間側が予想しなかったアイデアを提案することもあり、設計やデザインの幅を大きく広げてくれる点がジェネレーティブデザインの大きな魅力です。幅広い提案ができるジェネレーティブデザインですが人間に置き換わるものではなく、あくまでもサポートツールの1つとして、ユーザー側が上手く自分たちの業務に取り入れることがポイントとなります。
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参照サイト
※1 https://help.autodesk.com/view/RVT/2024/JPN/?guid=GUID-A2EC3302-CB0E-4648-A3A5-6EE0119119CD
※2 https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/generative-manufacturing-jp
※3 https://www.autodesk.com/jp/design-make/articles/daiwa-house-generative-design-jp