AutoCAD初心者向け|図面でグラスウールを表現する基本と描き方
1. はじめに
建築図面を描くとき、断熱材の表現は欠かせない要素のひとつです。施工者や関係者に設計意図を正しく伝えるためには、図面上で「どの部分にどの断熱材を使っているのか」を明確に示す必要があります。なかでもグラスウールは、多くの建物で採用される代表的な断熱材であり、その正しい描き方を理解しておくことが重要です。
AutoCADは建築設計や製図に広く活用されているソフトウェアですが、初心者にとっては「どの記号やハッチングを使えばいいのか」「どこまで細かく描けばいいのか」と迷う場面も少なくありません。線種やレイヤーの設定といった基本操作をきちんと身につけていないと、思い通りの図面表現ができないこともあります。
本記事では、グラスウールを図面に分かりやすく表すための基礎知識と、AutoCADを使った具体的な描き方を初心者にも理解しやすい表現で解説します。作図の手順だけでなく、注意点やトラブル対処法まで丁寧にまとめているので、初めて取り組む方でも安心です。
建築学生や若手設計者はもちろん、これから図面作成に慣れていきたい方にとって、プロが見ても理解しやすい図面づくりの第一歩となるはずです。断熱材の表現は単なる模様ではなく、建物性能を伝える大切な情報です。ぜひ最後まで読み進めて、実務や学習に役立ててください。
2. グラスウールとは?

グラスウールは、ガラスを細かく繊維状に加工して作られた代表的な断熱材です。繊維の隙間にたくさんの空気を含ませることで熱の伝わりを抑え、冬の寒さや夏の暑さを和らげる効果を発揮します。その結果、建物の室内環境を快適に保つうえで大きな役割を果たしています。また、他の断熱材に比べて軽量で扱いやすく、さらに優れた吸音性能を持っているため、防音材としても幅広く利用されています。
図面での表現方法にはジグザグ模様や細かい斜線などいくつかのバリエーションがありますが、いずれも「線を密に重ねることで充填された質感を表す」という点が共通しています。会社のルールや作図者ごとに微妙な違いはあるものの、一度パターンを理解すれば応用が効きやすく、初心者でも習得しやすい素材です。
実際の建築現場では、グラスウールだけでなくロックウールや発泡樹脂系の断熱材が使われることも少なくありません。それでも図面上で断熱材の存在を明示する重要性は変わらないため、グラスウールの特性とあわせて他の断熱材との違いを理解しておく必要があります。正しく材料を選び、図面に分かりやすく表記できれば、施工者や設計チームとの連携がよりスムーズに進むでしょう。ここからは小見出しごとに、その詳細をさらに掘り下げて解説します。
2.1. グラスウールの特性と利点
グラスウールは、ガラスを高温で溶かし、繊維状に引き伸ばして空気を多く含ませることで高い断熱性能を実現しています。寒冷地では室内から外部への熱損失を防ぎ、暑い地域では外気の熱が入りにくくなるため、一年を通じて快適な室内環境を維持できます。
さらに、ガラスを原料としているため燃えにくい性質があり、火災時の延焼を抑える点も大きな強みです。また、繊維の隙間が音を吸収するため、防音効果にも優れています。軽量で施工しやすく、大面積を一度に敷設できるため、工期の短縮にもつながります。こうした特性が総合的に評価され、住宅から大規模施設まで幅広い建物で採用されているのです。
ただし、施工時に繊維が肌に触れるとチクチクした刺激を感じることがあります。そのため、防護手袋やマスクなどを着用し、安全に配慮して扱うことが推奨されます。
2.2. 他の断熱材との比較
建築で使われる断熱材には、グラスウール以外にもロックウールや発泡プラスチック系断熱材(ビーズ法ポリスチレンフォームなど)が挙げられます。ロックウールは鉱物繊維を原料としており、吸水や湿気に比較的強い特徴がありますが、比重が増して施工が重くなる場合もあります。
一方、発泡プラスチック系断熱材は非常に軽量で断熱性能も高いですが、可燃性を持つ製品が多いため、防火性能や施工方法に注意する必要があります。グラスウールはコスト面・性能面のバランスに優れているため、幅広い設計で採用されやすい素材と言えるでしょう。
図面上では、断熱材ごとに線の密度やハッチングパターンを変えることで区別することがあります。各素材の特徴を理解し、表現を工夫することで、誰が見ても誤解のない図面を作成できます。最終的な選定は建物の規模、設計方針、法規や予算などを総合的に考慮して行うのが理想です。
2.3. 図面表記の重要性
建築図面で断熱材を正しく表記することは、施工品質を守るために欠かせません。もし断熱材が明示されていなければ、現場の判断に委ねられて仕様が違う材料が使われてしまう恐れもあります。
また、曖昧な表記は建築学生や新人設計者に誤った理解を与えかねません。ハッチングや記号を正しく覚えることで、複雑な図面でも一目で内容を読み取れるようになり、設計者同士の意思疎通もスムーズになります。
施主やクライアントに対しても「どの部分にどの断熱材を入れているのか」を図面で可視化できれば、安心感を持ってもらえます。さらに、工期短縮や品質管理の面でも、断熱材の表記が明確であることは大きな効果を発揮します。こうした背景からも、採用率の高いグラスウールを図面で分かりやすく表現するスキルは、初心者のうちにぜひ習得しておきたいポイントです。
3. AutoCADでのグラスウール表現の基本
AutoCADでグラスウールを表すときは、標準的な線種やハッチングパターンを使い、誰が見ても理解しやすい記号にまとめるのが基本です。多くの図面では、ジグザグ線や密集した斜線を用いて、繊維が詰まった断熱材らしさを演出します。
建築図面にはJIS規格や社内基準など、一定のルールが設けられている場合が多くあります。特に初心者は、そうした規定を踏まえて「線の太さや種類を正しく使い分ける」ことを学ぶことが、最初のステップとしてとても重要です。
さらに、ハッチングやブロック化を取り入れることで、同じ断熱材を何度も描き直す手間を省き、効率的に作図ができます。以下の小見出しでは、基本的な表現ルールから具体的な機能の活用法までを分けて解説していきます。
最終的な目標は、図面を見た人が一目で「ここはグラスウールだ」と理解できる、統一感のある表現を実現することです。実務では「Insulation」や「断熱材」といった名前のレイヤーを作成し、情報を整理しておくケースも多くあります。そうした管理を習慣化することで、見通しのよい作図環境を作り、ミスを防止することにつながります。
3.1. 基本的な表記ルールと標準
まずは断熱材を示すハッチングや線種を決めましょう。初心者の方は、AutoCADに標準で用意されているハッチングパターンから使うのが分かりやすい方法です。ハッチングメニューを開き、細かい斜線やジグザグに近いパターンを選択してください。
ただし、同じ模様でも図面の縮尺によって見え方が変わる点には注意が必要です。例えば1/50と1/100ではスケール感が大きく異なるため、ハッチングの「スケール」を適切に調整し、模様がつぶれたり間延びしたりしないように工夫しましょう。
一般的な表現では、壁断面の空間部分を二重線で囲み、その内部をハッチングで塗りつぶします。グラスウールは不規則な繊維感を持つため、やや不均一な模様がよく使われますが、標準的な線種でも十分に情報を伝えることが可能です。
もし会社や学校で独自の基準がある場合は、そのパターンを優先的に使用してください。よく見慣れた表記方法を使うことで、図面作成者同士の統一感が高まり、読みやすさも向上します。
3.2. ハッチングと線種の活用
ハッチングは、指定した領域を繰り返し模様で埋める機能で、初心者にも比較的習得しやすいコマンドです。壁の断面をポリラインで描いたら、HATCHコマンドを使って内部を選択し、グラスウールにふさわしいパターンを適用します。模様の向きや角度、密度を調整することで、見栄えを整えられます。
線種を利用する方法では、ジグザグ線や波形線を使い、繊維のニュアンスを表現します。標準の線種ライブラリには数が限られているため、必要に応じて外部からカスタム線種を追加することも可能です。たとえば「ZIGZAG」という名称の線種を導入するケースもあります。
また、ハッチングと線種を組み合わせ、図面の注記や説明書きに「断熱材:グラスウール」と明示しつつ、断面部分にはジグザグ模様を入れるといった方法も効果的です。複数の手段を重ねることで、誰が見ても理解しやすい図面になります。
いずれの方法でも、ハッチングのスケール調整と境界の確認は必須です。細かな調整を丁寧に行うことで、美しく整った図面を仕上げることができます。
3.3. ブロックとレイヤーの管理
効率的に図面を描くには、AutoCADの「ブロック」と「レイヤー」を正しく使うことが重要です。ブロックとは、複数のオブジェクトをひとまとまりの部品として登録し、繰り返し使えるようにする機能です。断熱材の断面を何度も配置するような場合は、一度ブロック化しておくと、作業の手間やミスを大幅に減らせます。
たとえば壁断面にグラスウールを入れるとき、標準的な形状をブロックとして登録しておけば、コピーや配置がスムーズに行えます。挿入した後もスケールや位置を簡単に調整できるため、効率性が格段に向上します。
また、レイヤー管理も欠かせません。断熱材専用のレイヤーを作っておけば、表示や非表示の切り替え、印刷設定が容易になります。レイヤー名は「Insulation」や「GW」など、誰が見ても内容が分かる名前にしておくとチーム作業でも混乱しません。
こうした基本設定を押さえておくことで、後からの編集や修正もスムーズに進みます。初心者のうちからブロックとレイヤーを意識して活用することで、複雑な建築図面でも効率的に作業を進められるようになるでしょう。
4. 実際の描き方ステップ
ここからは、AutoCAD初心者がグラスウールを図面に表すための具体的な手順を紹介します。建築図面では、壁や床の断面に断熱材を挿入して示すことが一般的です。壁厚や断熱材の厚みが設計寸法と一致しているか、細部まできちんと確認しながら進めることが大切です。
図面にグラスウールを描くことで、「内部に断熱材が施工されている」という情報を明確に伝えられます。完成後にPDFで出力する際は、ハッチングが潰れていないか、またチーム作業でレイヤー設定が統一されているかといったチェックポイントが欠かせません。
以下に紹介するステップを踏めば、基本的な断熱材表記は十分対応できます。慣れてきたらブロック化やカスタムハッチングを取り入れて効率化を図るとよいでしょう。初心者の段階では、まず正しい順序で確実に描くことを意識してください。
一連の流れを習得することで、建築学生や若手設計者でも実務レベルの図面を仕上げられるようになります。実際に使いながら調整を繰り返し、自分に合ったベストな描き方を見つけていきましょう。
4.1. 断熱材用のレイヤーを準備
最初に行うべき作業は、断熱材専用のレイヤーを用意することです。AutoCADのレイヤー管理を開き、「Insulation」「GW」「断熱材」など分かりやすい名前を付けましょう。色は他の情報と混ざらないように、目立つ色を設定しておくと便利です。
レイヤーを使えば、断熱材だけをまとめて表示・非表示にしたり、線の太さを一括で調整できます。これにより図面全体の管理がしやすくなり、作業効率も向上します。
さらに余裕があれば、あらかじめ線種や線幅も設定しておくとよいでしょう。レイヤーごとに色や線種を区別しておくことで、後から図面を見返した際に内容を把握しやすくなります。小さな工夫ですが、レイヤー管理は設計図面の基本であり、欠かせないステップです。
4.2. 壁や床の断面を作成
次に、建物の壁や床の断面を作図します。壁断面では柱や梁、仕上げ材の厚みなどを含むのが一般的ですが、まずはシンプルに基本的な構造枠を整えるところから始めるとよいでしょう。
作図では、設計寸法や実際の施工厚みを考慮した正確な入力が求められます。例えば、壁厚300mmの中に100mmのグラスウールを入れる場合は、その寸法を正しく描き込みます。
この段階で断熱材の領域を明確に区切っておくと、後のハッチング適用がスムーズになります。壁断面を「ポリライン」や「境界作成」コマンドでしっかり囲んでおけば、AutoCADが内部領域を正しく認識してくれます。
床断面でも考え方は同様です。構造スラブ、断熱材層、仕上げ層といった層の順序を間違えないように描きましょう。実物をイメージしながら作図することで、重複や抜けを防げます。
4.3. ハッチングでグラスウール模様を適用
断面の領域が描けたら、HATCHコマンドでグラスウールを表現します。ハッチングパレットを開き、適切なパターンを選んだら境界を指定するだけで自動的に塗りつぶせます。
このとき重要なのは「スケール」と「角度」の調整です。スケールが大きすぎれば模様が粗くなり、小さすぎれば線が詰まりすぎて黒く見えてしまいます。実際の断熱材の質感を意識しながら、ちょうどよい間隔に調整してください。
また、角度も注意が必要です。例えば45度の斜線が他の部分で多用されている場合は、あえて異なる角度を設定することで見やすさを確保できます。
納得のいく仕上がりを目指して、微調整を繰り返すことが大切です。多少の手間はかかりますが、見やすい図面は施工者の理解度を高め、ミス防止にも直結します。
4.4. ブロック登録と再利用
断熱材を描く箇所が多い場合、同じ作業を何度も繰り返すのは効率的ではありません。そこで役立つのが「ブロック登録」です。壁断面の形状をブロック化し、グラスウールのハッチングを含めて保存しておけば、必要な場所に配置するだけで作図を完了できます。
ブロックは一度修正すると参照しているすべての箇所に反映されるため、後からの更新作業も簡単です。複数の種類の断熱材を扱う場合は、それぞれ専用のブロックを用意するとさらに効率的です。
また、挿入基点の設定も重要なポイントです。基点を壁の底辺や中心線に合わせておくと、配置の際に位置がずれにくく、作業がスムーズに進みます。
このようにブロックを積極的に活用することで、特に学生や新人設計者が大量の図面を作成する際に大きな効果を発揮します。効率化のスキルとして、早い段階から身につけておくと良いでしょう。
4.5. 印刷やPDF出力時の確認
最後のステップは、印刷やPDF出力前の確認作業です。ここでは、ハッチングが適切な密度で表示されているか、線幅が細すぎたり太すぎたりしていないか、レイヤー設定が意図通りになっているかを確認します。
1/50や1/100など縮尺が変わると見え方も変化するため、それぞれに合わせてハッチングスケールを微調整しましょう。小さな調整ですが、これを怠ると断熱材が消えてしまったり、逆に真っ黒に潰れてしまう恐れがあります。
また、PDF出力後のファイルを第三者に確認してもらうと、客観的な視点で見やすさを評価してもらえるため、ダブルチェックとして有効です。初心者だけでなくベテランであっても、この最終確認を省略すると図面の品質が落ちてしまうので注意してください。
以上が、AutoCADでグラスウールを図面に表現する際の基本的な作業ステップです。最初は覚えることが多いかもしれませんが、手を動かして練習を重ねれば自然に身につきます。
5. 図面でグラスウールを表現する際の注意点
断熱材を描き込んだ図面を実際の業務で利用しようとすると、意外にも修正や再構成に多くの時間を取られてしまうことがあります。その原因として多いのは、スケール設定が不十分だったり、レイヤー管理が曖昧であったり、さらに材料ごとの区別が明確でないといった点です。
ここでは、プロの現場でも意識されている重要な注意点を紹介します。初心者のうちからこうした視点を持っておけば、後から大きな修正をしなくても済むでしょう。特にチーム作業においては、レイヤー名やハッチングの使い方が統一されている図面の方が扱いやすく、情報共有の精度も高まります。
建築図面では、グラスウール以外にもコンクリートや木材、仕上げ材など多種多様な材料が登場します。それぞれの表現を分かりやすく整理しておけば、図面全体の見やすさが向上し、施工時のトラブルを最小限に抑えることができます。
以下では、特に押さえておきたい四つの注意点を取り上げ、具体的な対策を解説します。実務でもすぐに役立つノウハウですので、ぜひ参考にしてください。
5.1. 模様のスケール設定
スケールの調整が不十分だと、ハッチングが詰まりすぎて黒く見えたり、逆に粗くなりすぎて断熱材らしさが伝わらなかったりと、図面全体の印象を損ねる大きな要因になります。図面ごとに縮尺が異なる場合は、その縮尺に合わせたハッチングスケールを設定する必要があります。
調整のコツとしては、実寸でおよそ1m程度に見合う間隔をイメージしながら数値を変更する方法があります。数値を入力したら必ずプレビューで確認し、少しでも違和感を覚えたら再度調整してください。
また、一度設定したスケールでも、実際に印刷すると見え方が変わることは珍しくありません。紙やPDFで試し刷りを行い、図面全体の視認性を自分やチームメンバーで確認する習慣を持つことが大切です。
さらに、レイヤーごとに線種尺度やオブジェクト単位の尺度を整理しておくと、後の修正作業が格段に楽になり、作業効率も向上します。
5.2. 他の材料との区別
建築図面では、コンクリート・木材・仕上げ材・断熱材など、複数の材料が同時に描かれます。もし同じハッチングや同じ色を使ってしまうと、どの部分が何の材料なのかがわかりづらくなり、施工段階で誤解が生じかねません。
そのため、グラスウールには専用のハッチングや線種を割り当て、コンクリートや仕上げ材は別の模様を使うなど、あえて区別をつける工夫をしましょう。明確な違いがあれば、図面を見る人が「ここには断熱材が入っている」とすぐに理解できます。
さらに、複数の断熱材を併用する場合(例:グラスウールとロックウールの組み合わせなど)は、模様の密度やパターンを少し変えて表現するのも有効です。描き込み過ぎると逆に分かりづらくなるため、細部にこだわりすぎず「一目で違いがわかる」ことを優先すると良いでしょう。
図面は設計者だけでなく、施工者や学生、クライアントなど幅広い人々が目にします。材料表現を明確にしておくことは、コミュニケーションをスムーズにする大切なポイントです。
5.3. 図面の複雑さを避ける工夫
断熱材を忠実に描くことは重要ですが、細部まで描き込みすぎると図面が複雑化し、かえって情報が埋もれてしまいます。こうした場合には、部分詳細図を別途作成し、必要な箇所だけを拡大して補足する方法が効果的です。
また、断熱材の厚みや種類といった情報は、ハッチング表現だけに頼らず、文字注釈を活用して伝えることも大切です。例えば「グラスウール100mm厚」と注記を入れておけば、細かい模様を修正する必要がなくなり、図面の読みやすさも高まります。
さらに、レイヤーを整理して使い分ければ、必要な情報だけを表示・非表示で切り替えられます。図面が煩雑に見えたときは、まずレイヤーを見直す習慣をつけると効果的です。
複雑さと情報量のバランスを取ることは、ベテラン設計者でも日々悩むポイントです。適度な簡略化と工夫を取り入れながら、本当に伝えたい情報がしっかり届く図面を目指しましょう。
5.4. チーム作業でのレイヤー管理
大規模な建築や複数人での設計作業では、レイヤーやハッチングのルールが統一されていないと混乱を招きます。例えば、ある人が「GW」というレイヤー名を使い、別の人が「断熱材」というレイヤーを作ると、同じ意味なのに扱いが異なってしまい、誤解の原因になります。
これを防ぐには、プロジェクトごとにレイヤー名や色、線種などの標準ルールをあらかじめ決め、全員がそれに従って作図することが理想です。グラスウールは頻繁に使われる材料なので、「GWレイヤーはこの設定」と統一しておくだけでも作業効率が大きく向上します。
また、カスタムハッチングパターンを共有フォルダに保存し、チーム全員が同じデータを利用できるようにすると便利です。こうした仕組みは一見手間に見えますが、後々の修正や図面統合作業を大幅に減らしてくれます。
円滑なコミュニケーションと品質向上のためにも、レイヤー管理や標準化は欠かせません。チーム作業の基本としてルール作りを徹底することは、建築設計を学ぶ上でも非常に重要なステップです。
6. よくあるトラブルと対処法
AutoCADで断熱材を表現するとき、初心者が最もつまずきやすいのはハッチングや線種の表示不具合です。さらに、印刷時に模様が潰れてしまったり、レイヤー設定が混在して図面が混乱したりするケースも少なくありません。
ここでは、実務や学習の現場でよく起こるトラブルを取り上げ、それぞれの解決策を整理します。多くの場合は設定を見直すだけで解決できますが、原因を見誤ると時間を無駄にすることもあります。あらかじめ知識として理解しておけば、問題が起きたときに落ち着いて対処できるでしょう。
特に、印刷トラブルやスケールの不整合は経験豊富な設計者でも遭遇する課題です。手順を正しく踏んでいても、わずかな設定ミスがあるだけで図面全体の仕上がりが損なわれることがあります。初心者はまず冷静に、原因を一つずつ確認して解決していく姿勢を持つことが大切です。ここでは代表的な三つの症状とその対処法を紹介します。
6.1. ハッチング表示の問題と解決策
ハッチングを適用したのに表示されない、あるいは領域全体が真っ黒に塗りつぶされてしまうことがあります。原因の多くは「境界が閉じていない」または「スケール設定が不適切」のどちらかです。
まずはハッチング領域がきちんと閉じているか確認しましょう。ポリラインにわずかな隙間があっても、AutoCADは境界を認識できず正しく塗りつぶせません。また、領域が複雑すぎる場合もハッチングの計算に失敗することがあります。
スケールが原因の場合は、ハッチングのプロパティから「スケール値」を大きくしたり小さくしたりして調整します。プレビューを見ながら適正な間隔を探り、極端に拡大・縮小されている場合は一度基本値に戻してから少しずつ修正すると効果的です。
ハッチングが思うように表示されないときは、必ず「境界の確認」と「スケールの調整」をセットで行いましょう。この二点を見直すだけで、多くのトラブルは解決できます。
6.2. 印刷問題の対処
画面上では問題なく見えているのに、印刷するとハッチングが潰れてしまい、ただの灰色の塊に見えてしまうことがあります。主な原因は、線幅設定やプリンタドライバの仕様によるものです。
まずは線幅を見直しましょう。断熱材用のレイヤーの線幅を少し太めに設定することで、印刷時に模様がはっきり出やすくなります。逆に模様が重なりすぎて見づらい場合は、ハッチングスケールを大きめに変更するのも効果的です。
また、プリンタやプロッタの解像度によっては、細かい模様を完全に再現できないこともあります。その場合は、パターンをやや簡略化して表現するのも選択肢の一つです。図面は情報を伝えるツールであるため、細部よりも施工者が理解しやすいことを優先すべきです。
印刷前には必ずPDFで確認し、可能であれば紙に出力して仕上がりをチェックしましょう。画面上では気づけない問題も、印刷して初めて分かる場合が多いからです。
6.3. レイヤーや線種の混在問題
レイヤー設定が統一されていないと、グラスウール部分に他の線種や色が混ざり、図面が見づらくなることがあります。特に複数の人が関わるプロジェクトでは頻発するため注意が必要です。
よくある症状としては、「ハッチングを変更したのに一部が変わらない」「別レイヤーに移動したのに線色が反映されない」といったケースです。まずはオブジェクトのプロパティを確認し、設定が「ByLayer」になっているかをチェックしてください。個別に色や線種を直接指定していると、レイヤー変更が反映されません。
不具合が広がっている場合は、対象オブジェクトをまとめて選択し、「ByLayer」に一括で設定し直すのが有効です。そのうえで、レイヤー自体の線色や線種を適切に整えれば、多くの問題は解決します。
レイヤー混在の影響は表示だけでなく印刷にも及ぶため、定期的にレイヤー構造を確認する習慣を持つことが重要です。こうした管理を徹底することで、予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。
7. まとめ
ここまで、グラスウールという断熱材の基本的な特性から、AutoCADでの描き方、さらに注意点やトラブル対処法までを解説してきました。特に初心者が意識すべきポイントは、①レイヤー管理、②ハッチングのスケール調整、③ブロックの活用、この3つです。
AutoCADでグラスウールを描く際は、まず断熱材専用のレイヤーを設定し、壁や床の断面を正確に区切ることから始めます。その上で、ハッチングやジグザグ線を適切に用いれば、誰が見ても分かりやすい表現が実現できます。
初心者のうちは修正や試行錯誤を繰り返しながら慣れていくことになりますが、その過程で得た知識や工夫は今後のキャリアに大きく役立ちます。最初は覚えることが多いように感じても、実際に手を動かして経験を積むことが上達への近道です。
さらに、実務や学習においては、チーム内でルールを統一し、JIS規格や社内基準といった標準を意識することが重要です。グラスウールの表現をマスターすれば、断熱材への理解が深まるだけでなく、より高度な設計にも応用できるでしょう。
建築・土木業向け BIM/CIMの導入方法から活用までがトータルで理解できる ホワイトペーパー配布中!
❶BIM/CIMの概要と重要性
❷BIM/CIM導入までの流れ
❸BIM/CIM導入でよくある失敗と課題
❹BIM活用を進めるためのポイント
についてまとめたホワイトペーパーを配布中

<参考文献>
AutoCAD 2025 ヘルプ | お試しください: ハッチングとハッチング編集 | Autodesk
https://help.autodesk.com/view/ACD/2025/JPN/?guid=GUID-A3713CE1-0743-4CC9-9B37-B51563486C89