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AutoCADブロック図形入門|効率化&ミス削減!作成・挿入・編集ガイド

1. はじめに:AutoCADブロック図形

AutoCADを使う上で「ブロック図形」は、作図効率を劇的に向上させる強力なツールです。簡単に言えば、ブロック図形は「一度作成したパーツを、好きな場所に何度でも使える便利なスタンプ」のようなものです。設計図面には、繰り返し使うパーツや記号が数多くあります。たとえば、建築図面ならドアや窓、機械設計ならボルトやベアリングがその例です。こうした図形をブロック化することで、再利用が簡単になり、同じ部品を何度も描く手間が省けます。

さらに、ブロック図形には「属性ブロック」や「動的ブロック」といった拡張機能も存在します。属性ブロックは、部品番号や注釈などの情報を持たせられ、図面内の情報管理が効率化されます。一方、動的ブロックは、サイズや形状を自由に変更できるため、同じブロックでも用途に応じたバリエーションを作成できます。

これらのブロック図形を効果的に活用すれば、次のようなメリットがあります:

  • 作図時間の大幅短縮:何度も同じ図形を描く手間がなくなる
  • データ整合性の確保:一括修正でミスを防止
  • 図面ファイルの軽量化:重複データを削除し、動作が軽快に

本記事では、この便利な「ブロック図形」の使い方をわかりやすく解説し、基本から応用までの操作方法を順を追って説明します。これを読めば、AutoCAD初心者でもブロック図形を使いこなし、作図効率を飛躍的に向上させることができるでしょう。

2. AutoCADブロック図形の基本

画像:筆者環境のスクリーンショット

AutoCADの「ブロック図形」は、複数の図形をひとまとめにし、再利用を容易にするための機能です。たとえば、建築図面で何度も使うドアや窓、機械設計で頻出するボルトやベアリングを、ブロック図形として保存しておけば、毎回ゼロから描き直す手間が省けます。

2.1. ブロック図形の特徴とメリット

ブロック図形の最大の特徴は、一度作成すれば何度でも再利用できる点です。これにより、設計図面で同じ要素を繰り返し使う場合、効率が大幅に向上します。また、ブロック図形は次のようなメリットをもたらします:

  • 効率的な作図:一度作ったブロックは、いつでも呼び出して使用可能。
  • 一括変更で修正ミスを防止:ブロック図形の元データを変更すると、図面内のすべての参照先が自動的に更新されます。たとえば、同じドアブロックを複数使っている場合、そのデザインを変更すれば、全てのドアが一斉に変更されます。
  • 図面ファイルの軽量化:ブロックは参照データとして扱われるため、同じ図形が重複してもファイルサイズが大きくなりません。特に大規模な図面では、この効率化が顕著に現れます。
  • 情報の一括管理:属性ブロックを使用すれば、図形に部品番号や注釈などの情報を持たせ、図面内のデータを一括管理できます。これにより、図面から部品表を自動生成することも可能です。

たとえば、大規模な工場の設計図で、多数の同じ機械部品を配置する場合、それらをすべてブロック図形で統一すれば、修正が必要な際も一箇所変更するだけで全てに反映されます。こうした利便性こそが、ブロック図形の本質です。

2.2. ブロック図形の種類

AutoCADのブロック図形には、大きく分けて3つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、用途に応じて使い分けることが重要です。

1. 静的ブロック

静的ブロックは、固定された形状のブロックです。図形をまとめてひとつのオブジェクトにし、再利用可能にします。例としては、建築図面の窓枠やドア枠、機械図面のベアリングなどがあります。静的ブロックは、形状や寸法を後から変更できませんが、その分扱いが簡単で、多くの場面で利用されています。

2. 属性ブロック

属性ブロックは、文字情報を持たせることができるブロックです。部品番号、製品名、材料情報などをブロックに紐づけることができ、図面上に情報を整理して表示できます。さらに、EATTEXT(属性データの抽出)を使えば、図面内のすべての属性情報を表形式で集計することも可能です。たとえば、部品表を自動生成したり、設計変更後もデータを一括更新できます。

3. 動的ブロック

動的ブロックは、パラメータに基づいて形状を自由に変更できるブロックです。たとえば、ドアの開閉角度を変更したり、家具の幅や高さを調整したりできます。ブロックエディタ内でパラメータ(長さ、角度、表示状態)を設定し、挿入時にそれらを動的に変更可能です。

  • パラメータによる変更:ドアの開閉角度を変更、配管の長さを調整
  • 可変表示:同じブロックで異なる表示パターン(例:引き戸と開き戸)を切り替え
  • スケール対応:挿入時に大きさを指定し、サイズを自動調整

この動的ブロックは、設計図面での柔軟性を大幅に高め、同じ種類の部品を1つのブロックで管理できるため、図面がシンプルになります。

2.3 ブロック図形の種類を使い分けるポイント

  • 図面が固定の要素で構成されている場合は、静的ブロックが最適です。
  • 情報を付加して管理したい場合は、属性ブロックを使うことでデータの一元管理が可能になります。
  • サイズや形状を変更したい部品が多い場合は、動的ブロックを活用し、柔軟に図形を調整できます。

これらの3つのブロックを適切に使い分けることで、AutoCADでの図面作成が圧倒的に効率化され、品質も向上します。次の章では、これらのブロックを実際にどのように作成し、使うかを詳しく解説していきます。

3. ブロック図形の作成方法

ブロック図形を正しく作成できることは、AutoCADを使いこなす上で非常に重要です。ここでは、シンプルなブロックから、属性ブロック、動的ブロックの作り方を順を追って解説します。これをマスターすれば、図面の作図効率が大幅に向上し、データの管理も簡単になります。また、作成したブロックを保存し、再利用する方法もあわせて紹介します。

3.1. シンプルなブロックの作成

最も基本的なブロックは「静的ブロック」です。これは、複数の図形をまとめて一つのオブジェクトとして保存し、再利用できるブロックです。作成方法は次のとおりです:

  1. ブロック化したい図形を選択
    • AutoCADの画面で、まとめたい図形(線、円、テキストなど)を選択します。
  2. BLOCKコマンドを使用
    • コマンドラインに「BLOCK」と入力し、エンターキーを押します。
    • または、リボンメニューの「挿入」タブから「ブロックを作成」をクリックしてもOKです。
  3. ブロック名と基準点を設定
    • ブロックにわかりやすい名前をつけます(例:「ドア_標準」)。
      基準点(挿入時の起点)は、図形の左下や中央を指定すると使いやすいです。
  4. 図形の選択と設定
    • ブロック化する図形を選び、設定を確認(尺度や回転は挿入時に調整可能)。
  5. 保存して完了
    • OKをクリックし、ブロック図形が完成します。
    • 以降、このブロックはブロックパレットから簡単に挿入できます。

ワンポイント:画層0(ゼロ)で作成する利点
ブロック図形を画層0で作成すると、挿入先の画層の特性(色、線種)が自動的に反映されます。これにより、同じブロックを異なる画層に挿入しても、図面全体の統一感を保つことができます。

3.2. 属性ブロックの作成

次に、ブロックに文字情報を持たせる「属性ブロック」を作成しましょう。これは、部品番号や注釈を図形に組み込むことができ、図面内の情報管理が容易になります。

属性ブロックの作成手順

  1. 属性定義(ATTDEFコマンド)を使用
    • コマンドラインに「ATTDEF」と入力し、エンターキーを押します。
    • ダイアログボックスが表示され、以下の項目を設定します:
      • タグ:属性のラベル(例:「部品番号」)
      • デフォルト値:あらかじめ入力される値(例:「001」)
      • プロンプト:ブロック挿入時に表示されるメッセージ(例:「部品番号を入力」)
  2. 属性を図形内に配置
    • 属性の表示位置を指定し、配置します。
  3. 図形をブロック化
    • 先ほどの手順と同様にBLOCKコマンドを使い、図形と属性をまとめてブロック化します。
    • このとき、属性を含む図形を選択し、ブロック名を設定します。
  4. 属性ブロックの確認
    • ブロックを挿入すると、設定したプロンプトが表示され、情報を入力できます。
    • 例えば「部品番号」「材質」「製造日」など、情報を入力可能。

属性ブロックのメリット

  • 図面内で情報を一元管理:部品番号や注釈を一括で管理できます。
  • 情報の抽出が簡単:EATTEXTコマンドを使えば、図面内のすべての属性を集計可能です。
  • 図面修正が容易:属性情報を変更すれば、図面上の情報も自動更新されます。

3.3. 動的ブロックの作成

動的ブロックは、図形を自由に変更できるブロックです。例えば、ドアの開閉角度を調整したり、机の幅を変更したりできます。これは、パラメータとアクションを組み合わせて設定します。

動的ブロック作成の手順

  1. ブロックエディタを開く
    • 既に作成済みのブロックを選択し、「ブロックエディタ」をクリックします。
  2. パラメータの追加
    • 「パラメータ」パネルから、制御したい要素を選択:
      • 長さ(ストレッチパラメータ)
      • 回転(ローテートパラメータ)
      • 表示(Visibility Parameter)
  3. アクションの設定
    • パラメータに応じた動作を追加します:
      • ストレッチ:指定した範囲を動かす
      • 回転:指定した中心点を軸に回転
      • 表示:異なるパターンを切り替え
  4. 設定の確認
    • ブロックエディタを閉じる前にプレビューで動作を確認。
    • 問題なければ保存して完了。

動的ブロックの実用例

  • ドアの開閉角度:90度、180度で切り替え可能
  • 机のサイズ:長さと幅を自由に調整
  • 配管:長さを自由に変更し、設計変更に対応

3.4. ブロックの保存と再利用

作成したブロックは、いつでも再利用できるように保存しておきましょう。ブロックの保存には2つの方法があります。

1. WBLOCK(書き出し)で保存

  • 「WBLOCK」コマンドを使用し、ブロックを外部ファイル(DWG)として保存できます。
  • 保存先は共有フォルダやクラウドストレージを活用し、チーム全体での利用が可能です。

2. ブロックパレットへの登録

  • ブロックパレットを開き、作成したブロックを追加します。
  • 視覚的にアイコン表示され、ドラッグ&ドロップで簡単に挿入可能。

ライブラリ化のメリット

  • 作図スピードの向上:標準部品をすぐに呼び出し可能。
  • チーム間での統一:同じブロックを共有し、設計基準を一貫。
  • 効率的な管理:更新時も自動反映され、修正ミスを防止。

これで、基本的なブロック図形の作成と保存方法はマスターできました。次の章では、これらのブロックをどのように挿入し、編集するかを解説します。ブロックを正しく挿入・編集することで、作図の自由度と効率がさらに向上します。

4. ブロック図形の挿入・編集

引用:AutoCADヘルプ:https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-BC0FD3C1-3BFC-4C5D-AB9A-BF480D5084BE

ブロック図形は、作成するだけでなく、実際に図面に挿入して活用することが重要です。また、挿入後に必要に応じて編集できることもブロック図形の大きな強みです。ここでは、ブロック図形の挿入方法、編集方法、特に動的ブロックの編集に焦点を当てて解説します。

4.1. ブロック図形の挿入方法

ブロック図形を正しく挿入することは、効率的な図面作成の基本です。ブロック図形を挿入するには、以下の方法があります:

1. INSERTコマンドを使用

  • コマンドラインに「INSERT」と入力し、エンターキーを押します。
  • ダイアログボックスが表示され、ブロック名、挿入基準点、尺度(サイズ)、回転角度を指定できます。
  • ここで指定した基準点が、図面上でのブロック配置の起点になります。たとえば、建築図面ならドアの角、機械図面ならボルトの中心を基準点にするのが一般的です。

2. ブロックパレットから挿入

  • AutoCADの「ブロックパレット」を使用し、視覚的にブロックを選べます。
  • ドラッグ&ドロップで図面に挿入可能。
  • パレットはアイコンでブロックを確認でき、頻繁に使うブロックはここに登録しておくと便利です。

3. 属性ブロックの挿入

  • 属性ブロックを挿入する場合、配置後に属性入力ダイアログが表示されます。
  • 「部品番号」「材質」「注釈」など、設定された情報を入力し、図面上に反映させることができます。
  • 属性は後から編集も可能です。

4.2. ブロックの編集方法

図面に挿入したブロックを後から修正したい場合、以下の方法で編集できます。

1. ブロックを分解(EXPLODE)

  • ブロックを選択し、「EXPLODE(分解)」コマンドを実行すると、元の図形(線、円、テキスト)に分解されます。
  • この方法は一時的な修正に便利ですが、再利用するには再度ブロック化が必要です。

2. 参照編集(REFEDIT)

  • すでに図面に挿入されているブロックを選択し、右クリックして「参照編集」を選択します。
  • 編集モードで図形を修正し、変更を確定すると、図面内のすべての同名ブロックに一括反映されます。
  • 例えば、図面内の「ドア」ブロックを一斉に変更したい場合、この方法が便利です。

3. ブロックエディタ(Block Editor)

  • ブロックをダブルクリック、または右クリックから「ブロックエディタ」を選択します。
  • ロックエディタでは、図形の形状やパラメータを自由に変更できます。
  • 編集内容はブロック定義に保存され、図面内の同一ブロックすべてが自動更新されます。

ポイント:一括編集でミスを削減
ブロックエディタや参照編集を活用すれば、大規模図面でも修正が漏れることがありません。例えば、100個の窓を配置している図面で、窓のデザインを変更する場合、1つを修正すれば全てに反映されます。

4.3. 動的ブロックの編集

動的ブロックは、挿入後も図面内で形状を変更できる特別なブロックです。たとえば、ドアの開閉角度を調整したり、テーブルの幅を変更したりといった柔軟な操作が可能です。

動的ブロックの編集方法

  1. グリップ操作で変更
    • 動的ブロックには、図形上にグリップ(青い四角形)が表示されます。
    • これをドラッグすることで、長さを変更したり、回転角度を調整できます。
    • たとえば、ドアブロックであれば、グリップを動かして開閉角度を自由に調整可能です。
  2. パラメータパネルで数値変更
    • ブロックを選択し、プロパティパレットを開きます。
    • パラメータ(長さ、角度、表示切替)を数値で直接入力し、正確に調整できます。
    • たとえば、テーブルの長さを「1500mm」に変更するなど、寸法を細かく指定可能です。
  3. ブロックエディタで再設定
    • 動的ブロックの動作を根本的に変更したい場合、ブロックエディタで編集します。
    • 例えば、新たに「回転パラメータ」を追加したり、「長さパラメータ」の範囲を拡大することが可能です。

実践例:動的ブロックの効果的な活用

  • ドアの開閉角度:建築図面で、ドアを90度、180度、270度で切り替え可能。
  • 調整可能なテーブル:テーブルの幅や高さを挿入後に変更可能。
    配管図面:パラメータで長さを自由に変更し、設計変更にも即対応。

5. ブロック図形の活用例

ブロック図形は、AutoCADで作図効率を大幅に向上させるツールですが、その真価は実務での活用にあります。ここでは、ブロック図形を具体的にどのように活用できるかを解説します。標準化されたテンプレート、製図記号の統一、設計図面の効率化に至るまで、実践的な例を挙げながら、ブロック図形の効果的な使い方を紹介します。

5.1. 図面テンプレートでの標準化

ブロック図形は、図面テンプレートに組み込むことで、プロジェクト全体を通じて標準化を実現できます。たとえば、建築図面であれば、ドアや窓の標準パーツをブロック図形としてテンプレート化しておけば、新規図面を作成するたびにそれらを簡単に挿入できます。また、企業ロゴやタイトル枠をブロック化し、テンプレートファイル(.dwt)に組み込んでおくことで、図面ごとに手動で追加する手間を省けます。

図面テンプレートにブロック図形を含めることは、単に作図を効率化するだけでなく、表記の統一性も確保します。たとえば、製品図面でよく使用する部品は、すべて標準ブロックとして登録し、どの図面でも同じ仕様で使用することができます。こうすることで、異なるメンバーが作成した図面でも、一貫性が保たれ、図面品質を向上させることが可能です。

さらに、属性ブロックを活用すれば、図面内の情報も統一できます。たとえば、図面枠に「図面番号」「作成者」「作成日」を属性として設定しておけば、新規図面を作成するたびにこれらの情報が自動で更新されます。これにより、図面の統一性だけでなく、記載情報のミスも防止できます。

5.2. 製図記号や注釈のブロック化

設計図面では、さまざまな製図記号や注釈が必要になります。これらをブロック図形として統一すれば、図面ごとにばらつきがなくなり、設計ミスを防ぐことができます。たとえば、機械図面で使用する「溶接記号」や「穴径の指示記号」、電気図面での「スイッチ」「コンセント」など、よく使う記号をブロック図形にしておけば、何度でも正確に使用できます。

また、注釈には属性ブロックが便利です。部品番号や材料情報を属性として設定し、図面上で表示させることができます。たとえば、部品リストを作成する場合、各部品に「部品番号」「材質」「製造日」を属性として設定しておけば、図面内の属性情報を自動で抽出し、表形式で一覧化することも可能です。

たとえば、設計図面でドアの部品番号を「D001」と設定し、材質を「スチール」と指定した場合、属性ブロックとしてこれらの情報を一括管理できます。後から属性を修正すれば、図面上のすべてのドアに反映されるため、手作業での修正ミスも防止できます。

こうした標準化された記号や注釈をブロック図形に統一することで、図面の視覚的な統一感も向上し、作図のスピードも大幅に向上します。

5.3. 設計図の効率化

ブロック図形は、単にパーツや記号を統一するだけでなく、設計図面全体の効率化にも寄与します。たとえば、機械設計では、ねじ、ボルト、ベアリングなど、繰り返し使用する部品をブロック図形に登録しておけば、必要なときにすぐに配置できます。これにより、毎回部品をゼロから描く手間を省き、作図スピードを大幅に向上させることができます。

さらに、AutoCADの「参照ブロック(Xref)」を活用すれば、大規模な図面も効率的に管理できます。たとえば、建物全体を各階ごとに別ファイルとして保存し、メイン図面にXrefとして挿入することで、ファイルサイズを抑えながら、各階の変更がメイン図面に自動的に反映されます。これにより、大規模プロジェクトでも軽快に作業を進められます。

また、動的ブロックを使うことで、図面内の部品を柔軟に変更できます。たとえば、ドアの開閉角度を自由に調整したり、机のサイズを変更したりできます。動的ブロックは、パラメータを使って形状を自由に変更できるため、同じブロックでも用途に応じたバリエーションを作成できます。これにより、同系統の部品を1つのブロックで管理し、図面の整理が容易になります。

たとえば、配管図面では、長さを自由に調整できる動的ブロックを使用すれば、設計変更にも迅速に対応できます。また、家具のレイアウトを変更する場合も、動的ブロックを使うことで、サイズを簡単に調整し、空間に合わせたレイアウトを瞬時に確認できます。

このように、ブロック図形は図面の標準化、注釈や記号の効率的な配置、さらには設計図全体の柔軟な管理を可能にし、AutoCADの作図効率を飛躍的に向上させます。次章では、ブロック図形を使用する際に遭遇しやすいトラブルと、その解決方法について解説します。

6. トラブルシューティング:よくある問題と解決方法

どんなに便利なブロック図形でも、実際の作業で問題が発生することがあります。図面に挿入されない、スケールが異常になる、属性が編集できないなど、よくあるトラブルをここで取り上げ、その原因と解決方法をわかりやすく解説します。ブロック図形を使いこなすためには、これらのトラブルを迅速に解決できるスキルが重要です。

6.1. ブロック図形が挿入されない/表示されない

ブロック図形を挿入しても、図面上に表示されないことがあります。この問題の原因はさまざまですが、最も一般的なのは「レイヤーの状態」です。ブロックを挿入しているレイヤーが「凍結」または「オフ」になっていると、図面上に表示されません。また、レイヤーが「ロック」されている場合も、ブロックは挿入されますが編集はできません。

もう一つの原因は、挿入時のスケールが極端に大きい、または小さいことです。たとえば、図面が「ミリメートル」で設定されているのに、ブロックが「メートル」単位で作られている場合、挿入時に見えないほど小さくなることがあります。これは、AutoCADの「INSUNITS(挿入単位)」設定が図面とブロックで異なるためです。

解決方法:

  • レイヤーの状態を確認し、「表示」「アンロック」に設定します。
  • コマンドラインで「INSUNITS」を確認し、図面とブロックの単位が一致しているか確認します。
  • 挿入時にスケールを手動で調整し、正しいサイズで配置されるよう設定しましょう。

6.2. ブロック属性が編集できない

属性ブロックを挿入した後、属性情報を変更したいのに編集できない場合があります。これは、AutoCADの設定が影響していることが多いです。特に、「ATTDIA(属性ダイアログ)」および「ATTREQ(属性要求)」というシステム変数が無効になっている場合、属性編集ダイアログが表示されません。

もう一つの原因は、ブロック自体が「ロック」されている場合です。ブロック作成時に「ブロックの編集を禁止」がチェックされていると、挿入後に属性を編集できません。また、属性定義が正しく設定されていない場合も、編集が反映されません。

解決方法:

  • コマンドラインで「ATTDIA」を「1(有効)」に設定し、ダイアログが表示されるようにします。
  • 「ATTREQ」を「1(有効)」に設定し、属性要求が常に表示されるようにします。
  • 属性ブロックを再度編集し、属性定義が正しく設定されているか確認します。
  • ブロックエディタを開き、「ロック解除」オプションを確認し、必要であれば解除します。

6.3. ブロックがスケール異常になる

ブロックを挿入したとき、予想外に大きくなったり、極端に小さく表示されたりする問題もよくあります。これは、ブロック図形の単位(挿入単位)と、図面の単位が一致していないことが原因です。たとえば、ブロックが「メートル」で作成され、図面は「ミリメートル」で設定されていると、1000倍の差が生じます。

また、動的ブロックの場合は、パラメータの初期値が不適切に設定されていることが原因で、サイズが異常になることもあります。たとえば、ストレッチパラメータで指定された範囲が、図面上のオブジェクトサイズに合っていない場合です。

解決方法:

  • コマンドラインで「INSUNITS」を確認し、図面とブロックの単位が一致しているか確認します。
  • 挿入時に「スケール」を手動で調整し、正しいサイズで挿入します。
  • 動的ブロックの場合は、ブロックエディタでパラメータ設定を確認し、範囲が正しく設定されているか確認しましょう。
  • ブロックを挿入する前に、正しいスケールを確認し、適切な倍率で配置します。

6.4. ブロック参照が壊れる場合

外部参照(Xref)として挿入したブロック図形が壊れて表示されない、またはエラーメッセージが出る場合は、参照パスが正しく設定されていないことが原因です。特に、他のメンバーと共有しているプロジェクトで、ファイルの場所が変更された場合や、参照先のファイルが削除された場合に発生しやすいです。

また、WBLOCK(書き出し)で保存したブロックが、他のバージョンのAutoCADで開けない場合もあります。これは、ブロックファイルの保存バージョンが高すぎるためで、古いバージョンのAutoCADでは認識できません。

解決方法:

  • 外部参照(Xref)マネージャーを開き、参照ファイルのパスを確認し、正しい場所に設定し直します。
  • 「パスの修正」オプションを使い、絶対パスから相対パスに変更することで、共有環境でのエラーを回避できます。
  • WBLOCKで保存する際、互換性のあるAutoCADバージョン(例:AutoCAD 2013以降)で保存するように設定しましょう。
  • 他のメンバーと共有する場合は、DWGファイルと参照ファイルを一緒に共有フォルダに保存し、パスの整合性を保つことが重要です。

7. まとめ:AutoCADブロック図形を使いこなそう

AutoCADのブロック図形は、設計業務を効率化し、品質を向上させる強力なツールです。この記事では、ブロック図形の基本から作成方法、実務での活用法、トラブルシューティングまでを解説しました。

ブロック図形には、静的ブロック、属性ブロック、動的ブロックの3つがあります。静的ブロックは繰り返し使用する部品を効率化し、属性ブロックは情報を追加して部品管理を容易にします。動的ブロックはパラメータで形状を変更可能で、柔軟な設計に役立ちます。

ブロック図形は、図面テンプレートに組み込むことで標準化が可能です。企業ロゴ、図面枠、標準パーツをテンプレートに設定し、毎回同じ品質の図面を作成できます。また、参照ブロック(Xref)を活用すれば、大規模図面も効率的に管理できます。

トラブルシューティングも重要です。挿入されない、スケールが異常になるなどの問題は、レイヤー設定や挿入単位(INSUNITS)で確認できます。属性が編集できない場合は、ATTDIAやATTREQの設定を確認しましょう。

ブロック図形は、ただの図形ではなく、設計効率を向上させる戦略的ツールです。この記事を参考に、ブロック図形を実務で活用し、AutoCADスキルをさらに高めてください。

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参考情報

・CAD Blocks | Resources, Libraries and Tips

https://www.autodesk.com/solutions/cad-blocks

・AutoCAD 2026 ヘルプ | ストレッチ可能なダイナミック ブロックを作成する

https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-4005A6BB-388A-4EC7-BF17-555F1E6C137C

・AutoCAD 2026 ヘルプ | 概要 – ブロック単位と挿入尺度

https://help.autodesk.com/view/ACD/2026/JPN/?guid=GUID-6C46049D-8636-442D-8BAC-CF4FD515FDC0

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