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【事例あり】BIMで建築確認ができる!メリットと成功事例をご紹介

この記事を読むと、以下の3つのことがわかります。

Building Information Modelingの頭文字を取ったBIM(ビム)は、建築モデルを3D化することで作業を効率化することを目指しています。3Dモデリングでは2Dデータを使わず、最初から3Dデータを使うのが特徴です。

しかし、さまざまな建物で必要な建築確認は2Dデータが必要でした。そのためにわざわざ2Dデータを作らねばならず、手間がかかってしまいます。

そこで大手住宅メーカーは、BIMデータのみで建築確認の申請に挑戦して成功しました。実現した理由と、海外での建築確認状況をご紹介します。

さまざまな建築物で必要となる建築確認

建築確認とは何か

多くの建築プロジェクトで必要となる建築確認は、計画している建築物が建築基準法で定めた条件を満たしているか確認するものです。建築確認でチェックする項目は建築物だけではなく、土地も含めて確認されます。

建築物の耐震性はもちろん、建ぺい率や採光の度合い、2020年からは省エネ基準を見てしているかまで確認されるようになりました。※1

建築物は人が暮らしたり利用したりするため、安全性はもちろん快適性に問題がないかチェックする工程が建築確認となります。

建築確認はたいへん重要な工程で、建築確認に合格して建築確認済証が交付されなければ工事を始められません。万が一間取りが変更になれば、再度やり直しとなります。

つまり建築確認を早く行わなければ着工できず、どんどん納期が厳しくなってしまうのです。

どんな建物で建築確認が必要となるのか

建築確認が必要となる建物はさまざまな種類があり、1号から4号まであります。建築基準法でも定められた建築確認ですが、建築確認が必要な建築物は各自治体が取り決めており、それぞれがHPで案内しています。

しかし、建築確認を必要とする建築物はあまり大きな違いがありません。例えば大阪府の場合だと、以下のような建築物が対象となります。※2

1号:劇場や映画館、病院やホテルといった特殊建築物。使用する床面積が100㎡を超えるもの
2号:木造建築物。ただし、3階建て以上や延面積が500㎡超、高さが13mを超える建物などが対象
3号:木造以外の建築物。ただし、2階建て以上や延面積が200㎡超の建築物が対象。
4号:1号~3号以外のすべての建築物

上記の条件で考えると、公共施設や家屋などほぼすべての建物が対象であることがわかります。

建築確認に必要となる図面

建築確認では申請書をはじめ、多数の書類が必要です。基本的に「どんな建築物を建てようとしているのか」をチェックされるものなので、建物に関する図面は多岐に渡って準備しなくてはいけません。

建築物によって必要な図面は異なりますが、例えば一般的な木造2階建てだと以下の図面が必要となります。※3

・配置図
・平面図
・立面図
・断面図
・求積図
など

この多岐に渡る図面の準備をするのが一苦労で、担当者は大変な手間をかけて図面を準備しています。

しかし、数年前から国内でもBIMによる建築確認の事例が出始めています。BIMデータで建築確認ができれば、図面の準備にかかっていた時間を短縮できるのです。

確認申請には2Dデータが必要だった

10年以上前から建築業界でBIMの取り組みが始まっています。BIMは建築に関わるすべての情報をデータ化するもので、建物のシミュレーションデータについては3Dデータのみを扱い、2Dデータは使いません。

しかし確認申請には、BIMで使用しない2Dデータが必要となります。そのため、せっかくBIMソフトを導入しても、確認申請のために2Dデータを用意するケースもありました。

せっかく3Dデータで作ったものを2Dデータにするのは2度手間で、効率化が目的で導入したBIMソフトが無駄になってしまいます。

この確認申請は、BIM導入のボトルネックの1つといえるでしょう。

BIMで建築確認を実現した大和ハウスの事例

構造部門でBIMによる確認申請に成功

図面作成が大変な建築確認ですが、国内ではBIMデータによる建築確認の事例が増えています。

住宅総合メーカー大和ハウス工業では、BIMデータでの建築確認を実現しました。2018年9月時点ではすでに2件の事例を持っていて、今後の建築確認でもBIMデータのみの申請が増える見通しです。※4

BIMデータだけで確認申請をしたということは、2Dデータを使わずに確認申請を行ったことを意味します。これは国主体でBIMの導入を進めている国内でもめずらしい例なのです。

どうやって確認申請に成功したのか

大和ハウス工業がBIMデータによる確認申請を実現できた理由は、建築確認を行う外部機関をも巻き込んでBIMの体制を整えたことにあります。

建築物の安全性などを確認する確認申請は、公平性を保つために第三者機関が担当します。社外に確認を依頼するからこそ多くのデータが必要となりますし、相手が取り扱えるデータ様式で準備しなくてはいけません。

大和ハウス工業が確認申請を依頼したのは「日本ERI」という機関で、その日本ERIと共に「確認申請BIM」という体制を構築することでBIMデータのみの申請が実現しました。

複数の専門機関が連携する建築業界でBIMを導入させるなら、統一化が避けて通れません。

社外も巻き込むこのルールの統一化は大きな取り組みですが、実現すれば大和ハウスのように建築確認の効率化も実現するのです。

BIM体制を整えて本格的に導入をすすめた

大和ハウス工業が使用しているBIMソフトは、BIMソフト市場で世界的なシェアを持っているAutodesk社の「Revit」です。※5

Revitについてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご参照ください。
「RevitとExcelの連携で、BIMはもっと身近になる」

2006年からCG利用でRevitを導入している大和ハウスは、独自フォーマットを制定したり業務ごとに必要な構造計算ソフトや鉄骨BIMソフトを導入したりとBIMを積極的に取り入れています。

そして2017年には“一気通貫BIMの標準化”を行いました。CAD検討委員会のほかにBIM推進委員会、BIM実施委員会と設置を進めて、体制をしっかりと整えたのです。

社内での運用基準も一定にして、どの業務も漏れなくBIM化できるように本格的に導入を勧めました。

BIMによる確認申請で得たメリット

大和ハウスが実現したBIMによる確認申請は、複数のメリットがあります。

まずは作業の効率化が挙げられます。従来では構造計算書と構造図の整合性確認に手間がかかっていましたが、BIMによってデータでやり取りすることで圧倒的に手間を削減できています。

そしてデータによる申請によってもう1つ生まれるものが、“ペーパーレス化”というメリットです。

紙媒体での情報のやり取りは、セキュリティや印刷コスト、保管場所など見えないコストが大きいものです。特に建築確認では多数の図面を必要とするので、そのコストは多大なものとなります。

BIMによる建築確認ならペーパーレス化が実現するため、目に見えないコストまでカットできるのです。

海外ではBIMによる確認申請が進んでいる

アメリカの車づくりがきっかけといわれるBIMですが、実は他国でもBIMの導入は日本より進んでいます。

特にシンガポールはBIMの導入が進んでおり、国土全体をモデル化することで防災シミュレーションをしたり建物などの情報をリンクさせたりといった「バーチャル・シンガポール」構築が進んでいます。※6

BIMソフトの導入に国が補助金を出したこともあり、すでにシンガポールではBIMデータによる確認申請が原則となっています。

海外のBIM活用状況については、ぜひこちらの記事もご参照ください。
1級建築士が語る海外のBIM活用状況アメリカ・シンガポール・日本の違いを徹底比較

まだまだBIMの導入が遅れているといわれる日本ですが、今回ご紹介したように確認申請の事例が増えており、確実にBIMの導入が進んでいます。

大和ハウスのように、BIMを本格的に導入するなら外部機関との連携も考えなくてはいけません。建築業界全体がさらにBIMに積極的になり、IT化で働きやすい環境が実現することを願います。

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※1:suumo「建築確認って何をすればいいの? 建築確認済証と建築確認申請書の違いは?」
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_knowhow/kenchikukakunin/
※2:大阪市HP「確認申請を要する建築物(建築基準法第6条第1項))
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/cmsfiles/contents/0000012/12116/6-1hyou.pdf
※3:株式会社住宅性能評価センター資料より
https://www.seinouhyouka.co.jp/construction/file/nikaidate.pdf
※4:BUILT「構造部門で初の“BIMによる確認申請”、大和ハウス工業が実現できた2つのポイント
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1810/25/news044.html
※5:Revit公式サイト
https://www.autodesk.co.jp/products/revit/overview
※6:日経XTECH「2018年に完成!シンガポールが国土を丸ごと3Dモデル化」
https://tech.nikkeibp.co.jp/kn/atcl/knpcolumn/14/546679/022900019/

2022年8月17日 情報更新

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