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ICTと連動する近未来都市 スマートシティが創り出す新たな社会と意義

スマートシティとは、ICTなどの革新技術を活用しつつ、マネジメントを最適化して都市や地域の抱えるさまざまな課題の解決を行う、持続可能な都市や地域のことです。
現在、政府は一丸となってスマートシティの取り組みを推進しています。

スマートシティのシステムとはどのようなものでしょうか。
また、スマートシティの実現によって私たちの社会はどのように変わるのでしょうか。

建築面にも注目しながら、スマートシティの構想とポテンシャルを探ります。

スマートシティとは

政府は「統合イノベーション戦略2023」などに基づき、スマートシティの取り組みを推進しています。*1
スマートシティの定義とはどのようなものでしょうか。

2023年8月、スマートシティに取り組む地方自治体や公民連携の協議会などを支援するため、内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省が合同で「スマートシティガイドブックver.2」を公表しました。*2

このガイドブックでは、スマートシティを以下のように定義しています。

[コンセプト] 3つの基本理念、5つの基本原則に基づき、
[手段] ICTなどの新技術や官民各種のデータを活用し、市民1人ひとりに寄り添ったサービスの提供や、各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営など)の高度化により
[動作] 都市や地域が抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける
[状態] 持続可能な都市や地域であり、Society5.0の先行的な実現の場

4の「Society5.0」とはどのようなものでしょうか。
内閣府は以下のように定義しています(図1)。*3

サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)


図1 Society5.0の概念図
出所)内閣府「Society5.0とは」p.1
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf

政府はSociety5.0を日本が目指すべき未来社会の姿として提唱していますが、スマートシティはそれを実現する要素の1つという位置づけなのです。

次に、1の [コンセプト] の3つの基本理念と5つの基本原則とは、以下のようなものです(図2)。*2

図2 3つの基本理念と5つの基本原則

出典)内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省「スマートシティガイドブック ver.2」p.16

https://sbircao02-my.sharepoint.com/personal/kagisoukatsu1_sbircao02_onmicrosoft_com/_layouts/15/onedrive.aspx?id

スマートシティの目的と効果

スマートシティの一義的な目的は、市民1人ひとりに寄り添ったサービスを提供し、Well-being(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること 4)の向上を図ることです。2

分野横断的にさまざまなデータを取得して活用するため、総合的なサービスの向上が期待できます。
また、多くの都市や分野にまたがって産官学と市民が関わることで、従来とは異なる方法で課題が解決されることも期待できます。

下の図3は、スマートシティで実現する社会の例です。

図3 スマートシティで実現する社会の例

出所)出典)内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省 スマートシティ官民連携プラットフォーム事務局「スマートシティガイドブック ver.2」p.12

https://sbircao02-my.sharepoint.com/personal/kagisoukatsu1_sbircao02_onmicrosoft_com/_layouts/15/onedrive.aspx?id

海外の取り組み事例

では、国内外では、どのような取り組みをしているのでしょうか。

ヘルシンキの取り組み

フィンランドはスマートシティ先進国です。
特に、首都ヘルシンキには革新的な企業があり、都市の課題に対する新たな解決策を試行するのに最適な環境です。*5

(1)「Agile piloting programme(アジャイルパイロットプログラム)」

ヘルシンキでは、「Agile piloting programme(アジャイルパイロットプログラム)」を実施しています。このプログラムは、短期間、初期段階、低コストの実験で、スタートアップや中小企業の公募によって行われます。資金は5,000~10,000ユーロで、企業にとって事務的な負担がありません。

プログラムの成果は、「ポケットブック」で共有され、次の実験や実際に使われる時に生かされます(図4)。

図4 ポケットブック

Helsinki「Pocket Book for Agile Piloting」

表紙https://fiksukalasatama.fi/en/pocketbook/ からダウンロード

(2)MaaSのプラットフォーム

MaaS Global社は2015年にヘルシンキで設立されたモビリティアプリケーションの開発企業です。世界で初めてMaaS(Mobility as a Service)のコンセプトを実現するプラットフォームを開発・実用化しました。*6

MaaSによるサービスは、スマートフォンのアプリを立ち上げれば、出発地から目的地までの複数の交通手段の検索から予約・支払いまでができ、さらに、観光案内や飲食店、ホテル、病院、行政の予約・支払いも一括して行うことが可能となります。*7

 MaaS Globalが展開するMaaSプラットフォーム「Whim(ウィム)」は、アプリ1つで、バス、タクシー、自転車シェア、カーシェアなど様々な交通手段を組み合わせて、最適な移動体験を提供する世界初の交通サブスクリプションモデル(定額制)です(図5)。*8

図5 日本版Whim

MaaS Global「移動を快適で自由に、今日はどの乗り物にのる?」

https://whimapp.com/jp/package/whim-japan/

国内の取り組み事例

次に国内の事例として、会津若松市の取り組みをみていきましょう。

大震災の復興から地方創生へ

会津若松市は2011年の東日本大震災で被災しました。その復興から地方創生を目指す「会津創生8策」を策定し、さまざまな課題をスマートシティの実現によって解決しようとしています(図6)。*9

図6 会津若松市による課題解決へのチャレンジ

出典)総務省「SmartCity Aizu-Area」p.2

https://www.soumu.go.jp/main_content/000452041.pd

「会津若松プラス」

「市民、移住者、事業者、観光者と地域との接点強化」と「デジタルデータに基づくマーケティング改善」を実現するためには、利用者の属性に応じて情報コンテンツやサービスを提供したり、利用者に関するデジタルデータを集積・分析することが大切です。*9

会津若松市では、地域ポータル・デジタルコミュニケーションプラットフォーム「会津若松プラス」を構築し、事業・政策の浸透を図っています(図7)。

図7 会津総務省「SmartCity Aizu-Area」p.10

https://www.soumu.go.jp/main_content/000452041.pdf

スマートビル

スマートシティにおいては建築分野にも大きな役割があります。

独立行政法人情報処理推進機構は、2023年5月に「スマートビル 総合ガイドライン」(以後、「ガイドライン」)を公表しました。同ガイドラインの目的は、スマートシティの重要な要素であるスマートビルの社会実装を促すことです。*10

スマートビルがどのようなものか、ガイドラインを基にみていきましょう。

既存ビルとの違い

既存ビルでも、既に多くの領域でDXが進み、さまざまなシステムがビルと連携しています。
しかし、既存のビルでは、それぞれのシステムで個別にデータを抱えていることが多く、システム連携のためには個別の調整が不可欠です。

一方、スマートビルはデータを起点としたサービス提供を行うために、ビルOSが整備されます。
ビルOSとは、共通のデータモデルやスキーマ、インターフェースを備えたデータプラットフォームのことです。

データ連携のためのインターフェースはモジュール(機能)単位で必要に応じて追加することが想定されています(図8)。

図8 既存のビル(左)とスマートビル(右)

独立行政法人情報処理推進機構 デジタルアーキテクチャ・デザインセンター スマートビルプロジェクト 「スマートビル 総合ガイドライン」p.17

https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/Individual-link/ps6vr70000016bsc-att/smartbuilding_comprehensive_guideline.pdf

スマートビルは、サービスの受益者、提供者など多様なステークホルダーやそこに発生する業務や活動までもを最適化します。

スマートビルの果たすべき役割

スマートビルは、スマートシティにフィジカルな空間や環境を形成し、人やモビリティ、システムなどスマートシティの諸要素が集まる場を提供します。

そこでは、物理空間と仮想空間が高度に融合し、IoT・AI・ロボットなどの多様なサービスの連動が可能になります。

ガイドラインでは、スマートビルの役割を以下のように定義しています。

ビルを取り巻く状況が変化する中で、空間や環境、またそれらのデータを介して都市全体と協調し、外界やニーズの変化に対して柔軟に対応する能力を保持しながら、人々に価値を提供し続けること

図9 ビルと取りまく状況とビルの果たすべき役割

独立行政法人情報処理推進機構 デジタルアーキテクチャ・デザインセンター スマートビルプロジェクト 「スマートビル 総合ガイドライン」p.9

https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/Individual-link/ps6vr70000016bsc-att/smartbuilding_comprehensive_guideline.pdf

このように、スマートビルは単なる建物ではなく、空間や環境に関わるデータを司り、人や交通、システムなどに作用するインターフェースなのです。

おわりに

スマートシティは、先進技術を活用することでマネジメントを最適化し、都市や地域が抱える課題に効果的なソリューションを提供します。スマートシティが実現すれば、社会が変革し、住民の生活はより効率的で快適なものになります。

人々のウェルビーイングに寄与するスマートシティにおいて、スマートビルなど建築も重要な役割を担います。

政府が強力に推進するスマートシティの導入は今後ますます加速するでしょう。
その動向に注目し、スマートシティの構築に参画する機会を探るのも、有益ではないでしょうか。

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資料一覧

*1

内閣府「閣議決定 統合イノベーション戦略」(2023年6月)pp.82-83

https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/togo2023_honbun.pdf

*2

内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省「スマートシティガイドブック ver.2」(2023年8月)p.10, p.16, p.11, p.12

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/guidebook.html の「スマートシティガイドブック」からページ移動

*3

内閣府「Society5.0とは」p.1

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf

*4

内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省 スマートシティ官民連携プラットフォーム事務局「スマートシティガイドブック ver.2【別冊③】用語集」p.4

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/extra-3.pdf

*5

Helsinki「Pocket Book for Agile Piloting」p.3, p.6, 表紙

https://fiksukalasatama.fi/en/pocketbook/ からダウンロード

*6

Jetro「外資系企業動向 フィンランドのMAAS開発企業、MaaS Global が日本法人を設立」

https://www.jetro.go.jp/invest/newsroom/2022/b250a0d83ba4319d.html

*7

政府広報オンライン「移動」の概念が変わる? 新たな移動サービス「MaaS(マース)」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201912/1.html

*8

MaaS Global「移動を快適で自由に、今日はどの乗り物にのる?」

https://whimapp.com/jp/package/whim-japan/

*9

総務省「SmartCity Aizu-Area」p.2, p.10

https://www.soumu.go.jp/main_content/0004520.pdf

*10

独立行政法人情報処理推進機構 デジタルアーキテクチャ・デザインセンター スマートビルプロジェクト 「スマートビル 総合ガイドライン」(2023年5月)p.10, p.17, pp.8-9

https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/Individual-link/ps6vr70000016bsc-att/smartbuilding_comprehensive_guideline.pdf

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