AutoCADを使った3Dモデリングの基本と応用
AutoCADはハイエンドな汎用CADとして普及しているだけでなく、専用のツールセットを活用することで、専用CADとしても高いパフォーマンスを発揮します。ただ、これらの機能を全て扱えるようになるにはそれなりのノウハウが求められるため、必ずしもすぐに使いこなせるようになるとは限りません。
そこでこの記事では、AutoCADにおける3Dモデリングの基本や、覚えておくとスキルアップにつながる応用操作について、詳しく紹介します。
目次:
- 3Dモデリングの目的
- 3Dモデリングの主な手順
- AutoCADの基本操作
- 覚えておきたいAutoCADの応用操作
3Dモデリングの目的
そもそも3Dモデリングとは、CGを使って立体的な構造物を描く作業を指します。2Dの平面図とは異なり、3Dモデルは構造物のディテールを視覚的に把握することができるため、情報共有を円滑に行ったり、完成イメージを正しく伝えたりするのに役立ちます。
近年はBIMモデルと呼ばれる、最新の3Dモデリング手法も普及しつつあります。これは、3Dモデルの中に細かい材質や価格、正確な寸法といった情報を内包することができるものです。BIMモデルさえあれば平面図は必要なく、初期の設計段階で作成してしまえば、施工から維持管理まで役に立てるなど、そのポテンシャルの高さが注目を集めます。
このように、3Dモデリングの有用性はますます高まっており、ARやVRといった関連技術の進歩も目覚ましいものがあります。そのため、3Dモデリングの有用性や活用の目的を正しく理解し、オペレーターが技術力を高めることは非常に重要です。
3Dモデリングの主な手順
3Dモデリングは、いずれのプロジェクトにせよ基本的な制作プロセスはほぼ同じです。一般的な制作手順は、
- 2Dスケッチの作成
- 平面図の立体化
- 加工
という3つのステップに分かれて行います。
まず2Dスケッチの作成ですが、これは従来のような平面の設計図の作成過程にあたります。3Dモデリングとはいえ、最初の段階ではまず平面で仕様を決定し、具体的な3Dに落とし込んでいくという手順を踏むことを覚えておきましょう。
2Dスケッチが完成したら、今度はそれを「押し出し」て立体に成形していきます。長方形を垂直に押し出すと直方体となるように、平面図からそのまま描いたものを立体で表現します。これが3Dモデリングを行う際の土台となっていきます。押し出しを行う際は、垂直に押し出すだけでなく、円を描くように押し出したり、角度をつけて押し出したりすることもできます。これによって、プロダクトデザインに求められる複雑な形状を実現するというわけです。
押し出しで平面図を立体化できたら、加工手続きに移ります。鋭利な角をなめらかにする「フィレット」や、立体物に穴を開ける作業など、必要に応じてさまざまなツールを使い分けながら目的の形状へと仕上げる工程です。この加工段階を経て、理想の3Dモデルを仕上げます。
AutoCADの基本操作
上記のような作業を、AutoCADは単体で実現することができます。まずはAutoCADを使う上で覚えておきたい、基本的な操作方法を解説します。
2DCADと3DCAD
AutoCADについてまず知っておくべきなのが、2Dと3Dの両方のCADに対応しているということです。3Dモデリングは平面図を最初に描く必要がありますが、この工程をAutoCADの2DCAD機能を使って実施することができます。
平面図については2DCADモードで対応し、完成したら3DCADモードに移行しましょう。3Dモデリングを実行するには、2DCADモードで使用している[製図と注釈]モードから、[3D基本]あるいは[3Dモデリング]にワークスペースを切り替えることで可能です。
3Dモデリングワークスペース
3Dモデリングのワークスペースを展開すると、2DCADの時とは異なる機能が複数利用可能です。プリミティブと呼ばれる立方体や円柱のような基本的な3Dテンプレートをそのまま加工して設計を仕上げていくのも良いですし、複数のプリミティブを組み合わせてより高度なモデルに仕上げることも可能です。
また、3Dモデリングは360度からオブジェクトの仕上がりを確認する必要があります。パンやズームといった機能を駆使して、細部までモデルを仕上げましょう。また、これらの機能は自分なりにカスタマイズして、普段使用する設定で登録の上、運用することもできます。
完成した3Dモデルは、マテリアルと呼ばれるテクスチャを表面に貼り付けることで、より写実的に仕上げることができます。木造の質感を適用したり、ガラスの透明感や反射の塩梅を表現したりすることで、プレゼンテーションなどの際の伝わりやすさを高めましょう。
2DCADの詳細設計への活用
完成した3Dモデルは、2DCADをより高いレベルで仕上げるためのサンプルとして活用するのも有効です。平面図だけではわかりにくい仕様については一度3Dモデルとして組み上げてみて、感覚を掴んでから2D図面を完成させるという手順です。
2Dと3Dをうまく行き来できるようになれば、より高度なモデリングへと発展させられるでしょう。
覚えておきたいAutoCADの応用操作
AutoCADでできることは無数にあり、ここで紹介できることはほんの一部です。上記に加え、身につけられると便利な応用操作について、解説します。
3種類の図形の使い分け
3Dモデリングではソリッドとメッシュ、そしてサーフェスという、3つの異なる図形を状況に応じて使い分けるのが一般的です。
例えばソリッドデータには体積の概念があり、重心や質量のような要素を重視したい場合に活用します。一方、メッシュデータはポリゴンの集合体で、形状を自在に変化させて試行錯誤を繰り返したい時に便利です。サーフェスデータは平面上での加工を加えたい時に有効で、自由に曲面を作りたい時などに活躍します*1。
これらの特性をうまく使い分けながら、3Dモデリングを行えるようになると、可能性はますます広がるでしょう。
レンダリング機能の活用
レンダリング機能とは、3Dモデリングにマテリアルを与え、まるで写真のようなCG画像に仕上げられるものを言います。レンダリング機能を活用すると、ただフォトリアルなCGを実現できるだけでなく、光や時間の概念を加え、現実と同様の環境下でシミュレーションを行うことが可能です。
最終的な見た目の様子を確認するのはもちろん、機能面での要件を満たしているかをチェックする上でも、非常に重要な機能と言えます。
まとめ
この記事では、AutoCADの基本機能から応用機能まで、3Dモデリングを行う上で覚えておきたいことを大まかに解説してきました。AutoCADはとにかくできることが豊富であるため、まずは使いながら機能への理解を深めることをおすすめします。
感覚的に3Dモデリングを行えるようになるためには、頭だけでなく手を使って覚える時間をしっかりと割くのが有効です。まずは何か作りたいものを決めて、自分なりのアプローチで完成にたどり着いてみましょう。
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参考:
*1 Autodesk「AutoCAD LT にない AutoCAD 機能:3D」